「デザインとマーケティングと香港の話をします」第四回:誰がデザインをダメにしてしまうのか?

2018/01/29

今回は「ダメなデザイン」というものについて考えてみたいと思います。デザインが必要になった際の参考になれば幸いです。

■誰がデザインをダメにしてしまうのか?
ダメなデザインができてしまう理由を考えてみました。僕は「依頼する側と、される側で、何をゴールとすべきなのかをきちんと承知しないままに作業を進めて、何となく世の中に出してしまう」からだと考えています。

香港の街では様々なデザインが、こっちを見てくれ!と自己主張をしています。プリンシパルは感じられません。目立つことがゴールなのか。面白いことだけがゴールなのか?そうではなくユーザーの気持ちにささる的確なデザインがあるのではないのか?

■依頼する側がデザインをバカにする
出来によってはコミュニケーションの質に影響するのに、何故デザインを軽視してしまいがちなのでしょう?

先ず、依頼する側のデザインに対する意識として、いくつかのパターンがあります。

一つは、自らの課題を把握することが無いままに、解決を丸投げしてしまうパターン。この場合は、最後まで、なんとなくカッコ良くない、この色は嫌い、この商品はこうあるべきだ、という主観が支配することになりそうです。

また、絵と写真と文章と組み合わせるだけなら自分達でもできる、と考えるパターン。或いは、デザイナーは万能であるべきで、どんなジャンルであっても解決してくれると思うパターンもあるかもしれません。こうした場合にも、出来上がってきたものと、期待していたイメージが噛み合わ無いことに悩むことになりそうです。

■依頼される側もデザインをバカにする
一方で、デザインをする側の意識にも問題があります。デザイナーとノン・デザイナーの間には深い溝があります。多くのデザイナーは、自分が好きだという観点からデザインをしがちです。それぞれのデザイナーは自分の形を、悪く言えば癖を持っています。それ自体は個性と呼ぶべきですが、往々にしてブランドのメッセージが優先だ、という事実が後回しにされるケースがあります。

そして、言わずもがなの事ですがデザインとアートは異なります。アートはアーティストが心の赴くままに自由に作品を作る。一方、デザインは必ずロジックを伴ったものではなければいけません。デザイナーの中には、コピーやテキストの内容を理解せずに、ただの固まりとして扱うために、メッセージが目立たなくなってしまうというケースがかなり見受けられます。

大事なメッセージに気を遣わないのでは、デザインが重きをおいてもらえないのも道理です。作る側の我々としても、わかってもらうための努力をしないといけないところだと思っています。

■やはりデザインを軽視したまま“ブランド”は作れない
再び、ダメなデザインとはどういうものでしょう?

-何が言いたいかが良くわからないクイズのようなもの。
-本来の商品の良さを伝えることに失敗しているもの。
-ブランドが目指すべきトーン&マナーに統一感を損なっているもの。

ユーザーの多くが便利なモノ・美しいモノ・素敵な体験は、手に入って当たり前だ、と考えるようになっている時代です。ダメなデザインはより良いコミュニケーションを作る事に失敗し、見つけてもらうことも、好きになってもらうことも難しくしてしまいます。

デジタル時代。結果がデータで判断できるようになった事は素晴らしい事です。だからこそ、何となく作ったデザインだけでA/Bテストを続けているだけだとしたら、大きな機会の損失ではないでしょうか?

確かなブランド体験を届けるには、オンラインでもオフラインでも、どんなタッチポイントにあっても、整合性を持ったデザインを出し続けていく事が重要です。良いデザインを作るために、依頼する側と作る側が共通の認識を持って<ロジック+マジック>を実現させることを目的とすべきです(続く)
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植木 伸彦氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

植木 伸彦氏
1995年、黎明期の上海で日系企業のマーケティング立ち上げを手伝う。1998年にTYA(HK)LTD設立。戦略クリエイティブを核に大手家電、化粧品、食品会社などのブランディング、プロモーション、コミュニケーションプランに携わる。

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