中国法律コラム12「深センゴルフ倶楽部の強制清算について」広東盛唐法律事務所

2016/11/21

一、強制清算の公告
2019年9月、深センゴルフ倶楽部有限公司(以下「SGC」といいます)は、強制清算をすると発表しました。その理由は、SGCの経営期間が既に満了したためとしています。公告の主な内容は以下2点です。
①会員とSGCとの契約関係は終了となる。
②会員はSGCの会則などに基づき「保証金など」の返還を受けることができる。

この内容では、入会金などゴルフ会員権購入時に支払った金員の払い戻しを受けることができるのか不明確であるため、深センゴルフ倶楽部の会員部に赴き、担当のマネージャーにヒアリングをしました。

二、SGC会員部マネージャーの回答
SGC会員部に赴き、入会金の返金についてマネージャーにヒアリングをしたところ、マネージャーの回答は次のとおりでした。
・「会員資格証書」には、入会金と保証金の2種類の金員が記載されている。そのうち、保証金は返金するが、入会金は返金しない。それは、会員資格証書及び会則に明記されている。
・現在、SGCは強制清算手続きに入ったが、現在は他の会社名義で経営を継続しており、会員は引き続き、政府が土地を徴収されるまでゴルフ場を利用することができる。

三、会員資格証書及び会則の定め
SGCの会員資格証書には、次の記載があります。

SGC「上記記載の金額は深センゴルフ倶楽部の入会金及び保証金である。会員が10年経過以降に退会する場合、保証金は無利息で返金する。」

会則の第12条には次の記載があります。

「保証金は無利息で本会に差し入れる。保証金の差し入れから10年が経過した後、本会は会員の求めに応じて保証金を返金する。但し、保証金の返金を受けた会員は自動的に会員資格を喪失するものとする。なお、入会金は返還しない。」

四、会員は入会金の返金を求めることができるか?
「経営期間満了のため会社を清算するが、入会金は返金しない」という対応は適法なものでしょうか?

SGCの会員資格証書及び会則には、「会員が十年後に退会する場合、保証金を無利息で返金するよう求めることができる。」という約定が存在しますが、これを反対解釈すると、SGCは会員に対して最低十年間はゴルフ場を利用させる義務があるということです。したがって、もし、会員権が過去十年以内に購入された物である場合は、SGCは強制清算によりその義務を果たすことができなくなるため、残りの年数について入会金の返金をしなければならないと解釈することもできます。しかし、殆どの会員が会員権購入から10年以上経過していると思われますが、其の場合はどうでしょうか。会員資格証書及び会則には、入会金の定義が約定されていませんが、入会金の定義は「優遇価格でゴルフ場を優先的に利用できる権利に対する対価」であるものと考えます。そうすると、会員はその権利を10年以上享受したことになるため、入会金を支払うことに対する反対給付は既に受けているものともいえます。SGCはこの観点から抗弁をしてくる蓋然性が高いと思われます。

しかし、ゴルフ場の終身会員は、長期間ゴルフ場を利用することができるという期待を有しています。そして、その期待は法的に保護されるべきです。ゴルフ場が一方的に「経営期間が満了したから契約は終了となる。入会金は返金しない。」と主張することは、この法的に保護されるべき終身会員の期待を裏切ることになります。しかも、SGCが入会金返金を拒む根拠としている会則はSGCが一方的に作成した約款です。契約法によりますと、会則がゴルフ場の責任を免除し、会員の責任を加重し、会員の主要な権利を排除する場合、該当条項は無効となります(契約法40条)。そして、争いが生じ無効とされた条項は会員に有利に解釈するとされています(契約法41条)。この点を争点として、入会金を返還しないとする会則の条項は、ゴルフ場の責任を恣意的に免除し、会員の権利を排除するものであるため無効であると主張すれば、法的には、一定金額の返金を受けるチャンスはあると考えます。

大嶽 徳洋さん広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
中国深圳市福田区福華一路一号
大中華国際交易広場15階西区
電話:(86)755-8328-3652
メール : odake@yamatolaw.com

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