ハンセン病回復村で支援活動をする「NPO法人 家JIA」広東省広州市

2013/12/18

NPO法人「家-JIA-」

 

今年10月に深センで開催された「第4回和僑ドリームプラン・プレゼンテーションin深セン」で、大きな反響を得た原田燎太郎氏のプレゼンテーション。今なお色濃く残るハンセン病への差別や誤ったイメージが残る中国において、ハンセン病の村を訪れワークキャンプを行い正しい理解を求めようとする活動に誰もが心を打たれた。その原田氏が行っているNPO法人『家-JIA-』の活動内容について紹介したい。

目的

・ハンセン病快復村と快復者を取り巻く環境(生活、経済、健康、社会、心理などの面)を改善する
・活動を通しての若者の成長と社会貢献に対する意識と行動を促進する
・快復村を取り巻く地域の様々なアクター(地元の人々、メディア、慈善団体、政府など)と協力して、
地域ぐるみで活動に取り組み、地域の社会貢献に対する意識と行動を促進する

【中国のハンセン病快復村の状況】

中国のハンセン病快復村の状況・生活環境、基礎設備:
多くの快復村は1960年代前後に建てられたもので、修理や建て直しが必要。一部の快復村には水道、電気、ガス、キッチンといった基本的設備も整っていない。

・経済:
村人(ハンセン病快復者)は基本的に政府から提供される生活費に頼って生活している。しかし、それは小額のもので、正常に日常生活を送ることが困難である。

 

・健康:
健康状態有効な治療法が開発される以前、らい菌は手、脚、顔といった部分に変形を引き起こした。これにより一部の回復者は自活能力を失っており、また、高齢化によって多くの村人(快復者)が成人病などを抱えているが、医療費の負担が大きいため、病院に行くことができない。

 

 

 

 

・社会:
多くの村人(快復者)は、差別と偏見のためにハンセン病が快復した後も家に戻ることができない。中には、何十年もの間家族、友人との連絡を取ることのできない村人もいる。

・心理:
差別と偏見のため、外部(家族、友人を含む)との接触が極めて少なく、一部の村人(快復者)から自信と希望を奪っている。多くの村人は日々、ただ死を待ちながら生活している。

これまでの成果

【ハンセン病快復村ワークキャンプ】
これまでの成果2001年から2012年までに、約11,410人のボランティアが、中国華南5省にあるハンセン病快復村61ヶ所、山間の小中学校19ヶ所にて522のワークキャンプを開催した。ワークキャンプでは、村の家屋建設、道路舗装、水道設置などのインフラ整備や、ハンセン病に対する差別をなくし、理解を深めるためのプロモーション活動など、計1,460のプロジェクトを実施した。

【若者の成長と社会貢献意識の向上】
JIAは、現地の生活及び社会環境を改善すると同時に、その体験を通して若者の成長を促し、社会に貢献する人材の育成を担っている。現地の大学生を中心としたボランティアが各地区で自主的に活動を運営するために「JIAワークキャンプ地区委員会」を8つ設立し、その責任範囲は、プロジェクト管理、財務、資金調達、その他情報管理や物資管理など、多岐に渡る。

【大学卒業後のボランティア】
大学卒業後には“Back up Team(”OG/OB会)を組織し、それに所属する約300名のメンバーが地域に根付いた活動を継続的にサポートするネットワークを構成している。企業、メディア、政府、病院など様々な分野で活動するOG/OBたちは身の回りの資源を利用してJIAを支援している。また多くのOG/OBが大学卒業後、NPOに就職し、中国の社会発展に努めている。就職先は、Oxfam北京、Save the Children China、広東省漢達康福協会、広東省千禾社区公益財団、広東省孤児奨学金促進会など。100名以上のソーシャルワーカーを抱えるNGOの代表になっているOBもいる。

【アジアへの拡がり】

JIAの直接のプロジェクトではないが、JIAの活動に継続的に参加した日本のボランティアが大学卒業後、インドネシア、ベトナム、インドのハンセン病施設でのワークキャンプを現地の学生と共に開催するようになっている。現在ミャンマーでもプロジェクト調査計画が進行中。2013年8月のJIA会員代表総会には、日本からだけでなく、インドネシアとベトナムの学生ボランティアが参加する予定だ。
東日本大震災の被災地のひとつ気仙沼市唐桑町では、被災直後に町に住み込み、現在に至るまで復興支援を続けているメンバーもいる。
JIAの活動には日本から毎年約100名が参加している。そのメンバーの中から、2006年から現在に至るまで毎年絶えることなく中国に留学するメンバーがいる。

今後の計画

【ハンセン病快復村・快復者の記録】
現在、ハンセン病快復者の高齢化と人口減少が進み、政府主導で快復村の統廃合計画も持ち上がっている。このままではハンセン病快復者と快復村の存在が歴史上なかったことにされてしまう可能性がある。また、力強く、そして楽観的に生きる快復者たちの生き様が忘れ去られてしまう可能性がある。そこで、JIAでは今後、快復村と快復者についての記録に力を入れていく。写真や映像、イラスト、文章などの方法で、ワークキャンプ中にボランティアが記録していく。

【快復村周辺地域でのワークキャンプ開催】
快復村周辺地域でのワークキャンプ開催ハンセン病快復村の状況はこれまでの10年の取り組みにより、改善されてきた。しかし、周辺地域の状況はなんら変わることなく、一部の地域ではハンセン病快復村への妬みを引き起こしている。快復村が周辺地域に溶け込めるよう、今後は周辺地域の発展をも考慮に入れなければならない。
そこでJIAでは、快復村周辺地域の小学校にてワークキャンプを開催し、快復村ワークキャンプを同時開催し、まずは快復者と小学生たちをつなぐ。小学生にとって、力強く生きる快復者と幼いうちにかかわることは、今後の人生を生きる上で大きな影響となる。高齢の快復者にとって、小学生は曾孫のような存在となる。そして、小学生の両親を通して周辺地域のニーズを把握し、周辺地域でもワークキャンプを開催する。
こうして、快復村、小学校、周辺地域にてワークキャンプを同時期に開催し、それぞれの間に共同で行えるパーティーなどのプロジェクトを設けることで、快復村が地域に溶け込み、地域の人々は快復者から学ぶという関係を築く。こうして、地域全体が発展できるようにする。そのとき、快復者の存在は地域にとって「社会問題」ではなく、「地域の財産」となることを目指す。
【企業研修】

JIAはこれまで主に海外の財団からの支援によって活動してきた。その10年で組織は安定的に発展し、2012年には政府にNPO法人登録を完成させることがでた。
一方、事務局職員は30歳前後となり、子供の教育や結婚を考える時期に来ている。しかし、財団からの長期的な運営費(特に人件費)への支援は見込めない。JIAが経験を着実に蓄積してきた有能な人材を職員として留めるためには、独自の収入源を得て、職員の待遇を改善することが不可欠となっている。
そこでJIAでは、企業向けに有料の研修を開催することを考えている。対象は中国に進出している日系企業だ。日系企業の多くは、日中のスタッフの間に差別や偏見が存在し、それがストレスを高めたり、業績不振につながっている。その日中のスタッフ数名が数日間隔離村に隔離され、JIA事務局職員とボランティアが開催するワークキャンプに参加するという形で研修を行う。プロジェクトを共に行い、生活を共にする過程で、「ハンセン病快復者」と「ボランティア」という関係や「日本人」と「中国人」という関係は次第に、「私」と「あなた」となり、そこに差別や偏見はなくなっていく。

 

NPO法人「家-JIA-」「家-JIA-」(Joy in Action)事務局
住所:広東省広州市番禺区大学城中七路66号大学時光自編3棟204室
郵便番号: 510006
電話: +86-20-3472-1415
プロジェクト部駐在所
住所:広西省南寧市龍騰路68号福満花園11棟1401室
郵便番号:530003
電話:+86-77-1390-9017
メール:tynoon@gmail.com
ウェブサイト:
http://jiaworkcamp.org

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