日本の最先端技術。健康・安心・安全に配慮した「植物工場」SCATIL

2015/08/31

SCATILの植物工場発「Scatil Veggies」

「香港でも、子どもをはじめ、家族のために安心・安全な食べ物を選びたい」「健康のために、毎食サラダを食べたい」。そう考えている方は多いのではないだろうか。
そこで、今回は、香港にて、日本の最先端技術を導入した「植物工場」で、健康・安心・安全に配慮したグリーン(葉物)野菜を栽培、その販売に取り組むSCATILの事業をご紹介しよう。プロジェクトマネージャーのカミーラさんにお話を伺った。

オーソドックスなレタスに、シーザーサラダにぴったりのロメインレタス。赤みを帯びたレッドレタスにサラダ菜、ルッコラ、みず菜、からし菜―。グリーン野菜といっても実に多彩。SCATILが植物工場で栽培しているのは、そんな瑞々しい野菜たちだ。でも「植物工場って何?」という方もいるのでは?その疑問を解決するところからインタビューはスタート!

野菜1栽培中

最初に「植物工場」について伺いたいのですが。
はい。植物工場は、施設内で環境を制御して葉物野菜等を育てるシステムです。日本の植物工場の技術は世界トップクラスで、新たに参入する企業も増えているんですよ。
植物工場にもいくつかの種類がありますが、私達が導入しているのは、閉鎖された室内空間で、人工光や空調などを使い、植物にとって理想的な環境を作り出し水耕栽培をするものです。世界から注目されている植物工場技術をもつ、千葉大学発ベンチャーの「みらい」から技術提供を受けています。
この植物工場では、外気を遮断した空間で、無菌に近い状態で野菜を栽培するので、農薬も使いません。野菜も生き物なので、ストレスを感じると苦みが出たり固くなったりします。でも、私達が作る野菜は、最適な環境で栽培されているので、とても柔らかくて甘みがあり、野菜本来の味がします。
また、植物工場では、天候に左右されずに安定的に野菜を生産できること、狭いスペースでも複数の棚を設けて効率的な栽培ができることなどのメリットがあります。日本で、廃校や廃工場などを活用した植物工場は、地域活性化策としても期待されているのですよ。また、「みらい」では、東日本大震災後の原発事故で被災した地域の復興策として、政府とともに植物工場事業にも取り組んでいます。

植物工場では無農薬で野菜を栽培できるのですね。
はい。そのため、施設内にウイルス・花粉・害虫などを持ち込まないように、厳しいルールを設けています。例えば、従業員はシャワーを浴びた後、滅菌された防塵服を着用し、エアシャワーを浴びてから施設内へ入ります。植物工場の設備のほか、こうした管理マニュアルや栽培マニュアルも、「みらい」から提供してもらっています。

露地野菜と比べて栄養価はいかがですか。
植物工場では肥料は水に溶かして与えています。日光に当たって育った植物のほうが栄養が多いように感じるかもしれませんが、日本で地元の大学が調査したところ、栄養素は植物工場で生産された野菜のほうが高いという結果が出ました。露地野菜に比べて、ビタミンCは約2倍、カロチンは10倍近くもあったのです。安心・安全で、しかも健康にいい野菜は、大きな付加価値になるでしょう。アピールしていきたいですね。私達のビジネスモデルは、この高品質な野菜を新鮮なうちに、自宅まで直接届けるというものです。

どうして香港で事業を始められたのですか。
今、香港では、食べ物の安心・安全を脅かす事件が起きています。野菜に基準を超える金属や農薬が含まれていたことも…。また、日本では、食品の安全性を確保するために、生産地や生産者などの情報を表示する「トレーサビリティ」の取り組みが確立されていますが、香港では整備にもう少し時間がかかるでしょう。一方で、消費者の食品の安全性に対する関心は高まっており、安心・安全な野菜に対するニーズがあると思いました。
また植物工場は、露地栽培に比べて水の使用量を99%も削減できるので、環境にもとても優しい栽培方法なのです。消費地に近い場所で野菜を生産すれば、物流コストや輸送時のCO2排出量も抑えることができます。高層ビルの中で、植物工場で野菜を生産し、消費者に届ける「垂直式栽培」方法は、都市型農業としても期待されています。このビジネスモデルを香港で手掛けてみようと考えました。
香港は土地が狭く、人口密度が高いので、コンパクトなスペースを活用して効率よく野菜を栽培するのに適した場所です。物流も発達しているので、朝収穫した新鮮な野菜をその日のうちに消費者に届けることができます。香港は法律面などでビジネスをしやすい環境が整っていることも魅力でした。

野菜植え付け

事業の立ち上げで苦労されたことはありますか。
「みらい」とのライセンス契約は、安心・安全な野菜を安定供給したいなど、共通の理念を持っていましたので、スムーズに進みました。お互いWIN-WINの関係で頑張っていきたいと考えています。
香港での事業の立ち上げは、植物工場への理解がなかったので、まさにゼロからのスタートとなりました。私達のポリシーやビジネスモデルをわかってもらうのが大変でした。一方、植物工場の建設は香港の事業者に依頼しましたが、建設能力は非常に高いと思いました。
事業は始まったばかりで、植物工場での野菜生産が軌道にのったところです。でも、工場へ見学に訪れ、野菜を試食したシェフなどの笑顔をみたときや、「おいしいです」という言葉をいただいたとき、この事業を始めてよかったと思いました。これからも、野菜の無限の可能性を追求していきたいですね。

どれくらいの収穫量があるのですか。
私達は現在670㎡の敷地面積で十数種類の野菜を栽培しています。収穫量は1日250kgです。種をまいてから33日で収穫可能で、毎日収穫できます。これは一般の農家と比較した場合10~20倍の収穫量になります。

どのようなところへの販売を考えているのですか。
大手のレストランチェーンやプラベートレストランなどへの販売はすでにスタートしています。今後、力を入れていきたいと考えているのが、一般家庭への販売です。これはオンラインで注文を受けて、植物工場で生産した新鮮な野菜を、ご家庭の方に直接届けるというもの。1年以内に一般のお客様を1,000~2,000人に増やしていきたいと考えています。香港に住んでいる日本人の方々にも届けていきたいですね。
私達の野菜は無農薬なので、洗わずに、お皿に盛ってドレッシングをかければ、そのまま食べられます。数種類の葉物野菜がミックスされたパック商品をお皿に盛って、チーズやハム、トマトを添えれば、素敵なサラダができ上がります。ぜひお試しください。

今後の展開について教えてください。
今、植物工場に併設した教育施設を作っています。ここでは子どもや家族向けに、植物工場で野菜が作られる様子をガラス越しに見学したり、実際に作られた野菜を食べたりするプログラムを実施していく予定です。野菜嫌いの子どもも増えていると聞いています。子どもに野菜の大切さを伝え、美味しい野菜を食べてもらうことで、野菜を好きになってもらうきっかけになればと考えています。
また、香港での事業は第一ステップと捉えています。香港でブランドを確立してから、中国、東南アジアで、事業を展開していく予定です。

カミーラさんSCATIL プロジェクトマネージャー
カミーラさん
自社の植物工場で生産された野菜を初めて食べたとき、その美味しさに感激したそう。「自信を持って提供している商品です。ぜひ実際に食べていただき、美味しさ、新鮮さを体感してください。お客様のニーズに合う商品を作っていきたいと思っているので、厳しいご意見も含めてお待ちしております」とカミーラさん。

SCATILSCATIL
住所:230B,Sheung Pak Nai Tsuen,Yuen Long,N.T.
電話:(852)3543-0688
Fax:(852)3543-0686
ウェブ:http://www.scatil.com.hk

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