Happy Lab International Limitedの當真直美さんにインタビュー

2015/05/11

専業主婦から経営者へ突然の転身
豪州発の菓子ショップを香港で展開

當真直美さんは、オーストラリア発のお菓子(コンフェクショナリー)ショップ「Happy Lab」をアジアで展開するため2013年に起業。2014年にアジア初のショップを香港・ビクトリアピークにオープンした。様々なビジネス経験を積んで起業された方…という予想は大外れ。起業するまで約17年間専業主婦だったという。「専業主婦も働く女性も、それぞれの立場で頑張っている人は素敵だと思う。香港は誰もが新しいことにチャレンジできる環境が整っている」と語る。

當真直美Happy Lab International Limited ディレクター
當真直美さん
インタビュー

大家族でユニークな教育方針のもと育ったと伺いました。
はい、6人兄弟で賑やかな環境で育ちました。父は石油会社に勤めていたころもありますが、起業家タイプで、自分で事業をしていたこともあります。父の仕事の都合で小・中学校では5回転校しました。母は大変だったのではないでしょうか。
小学校2年生のとき、「アメリカの小学校を体験しておいで」と父に言われて、アメリカに住む叔母のもとで2学期間生活したことがあります。長女の私がホームシックになったからかもしれませんが、その体験をしたのは兄弟では私だけでした。
父をはじめ、私達はクリスチャンです。父はアメリカの大学を出ていましたので、子ども達はアメリカの大学へ行かせると決めていました。私もアメリカの大学で学び、父の勧めで中国語を第二外国語に選びました。

就職、ご結婚もアメリカで?
はい。コンピューター会社に就職し、日本向けのビジネスディベロップメントチームで販売店などの開拓に当たっていました。日本人は私一人という部署でした。就職して、すぐ大学時代の友人と結婚しました。主人は香港生まれ・アメリカ育ちの香港人です。出産後退職し専業主婦になりました。

お子さんは6人。年齢を伺ってもいいですか。
長男は18歳で、末っ子の次女は5歳です。私は6人兄弟でしたので、「子ども6人」は特別なことではありませんでした。3人兄弟の主人からは「3人でいいんじゃない?」とも言われましたが、「3人、寂しいんじゃないの?」と(笑)。
結婚後アメリカで1年ほど暮らして日本へ。それから主人がMBAの資格を取るため、家族でカリフォルニアへ。その後2002年9月に香港にきました。アメリカ、日本、香港で出産を体験しましたが、日本がいちばん手厚かったですね。

當真直美のプライベート香港に来られたきっかけは?
夫と一緒に、子ども達に、これからの時代に必要となる中国語を学ばせたいと考えて、香港へ来ることは最初から予定していました。香港には、英語も中国語も日本語も学べる環境が整っていますので。

6人の子育てはいかがですか。
自分が大家族で育っていますし、細かいことを気にしない性格なので、それほどストレスは感じていません。アメリカで3番目を出産したときが一番忙しかったですね。それ以降は、大きくなった上の子ども達が助けてくれました。
香港へ来たのは3番目の子どもを出産してまもない頃でした。香港では、学校の三者面談や父母会などの行事がすべて夜。最初は「みなさん、子どもをどうしているのかな?」と不思議でした。やがて香港のお手伝いさん制度、アマさんを利用するようになり、子育てもラクになりました。アマさんがいなければ仕事も始めていなかったと思います。

主婦業に専念されていた理由は?
私は基本的には、子どもが小さいときはお母さんが家にいたほうがいいと思っています。私の母も家にいてくれました。母親が家にいれば、子どもが学校で何かあっても、帰ってきたとき「今日こんなことがあってね」と話すことができます。でもタイミングを逃すと子どもは忘れてしまったり、しゃべらなかったりするので、微妙な気持ちを汲み取れなくなってしまう…と思ったためです。

では、どんなきっかけで仕事を始められたのですか。
きっかけは3.11の東日本大震災でした。震災後は友人と「香港から日本を励ます会」を立ち上げて、被災地を支援する活動を行ってきました。Tシャツを作って販売したり、バザーをしたり、日本人中学校で被災地の方を招いてお話を聞く会をしたり…。たくさんの方が活動に賛同し寄付をしてくださいました。本当に感謝しています。でも寄付を募るだけでは、長く支援を行っていくことはできないのではないか…と感じるようになりました。自分に経済的なバックグランドがあれば、もっとキャパシティの大きな支援もできるのではないか、と。
そんなことを考え始めていたときに、主人の友人から、オーストラリア発のお菓子屋さん「Happy Lab」のアジア展開事業を担当してみないかという話がありました。勤めがある主人は、私に「やってみたら?」と。そこで家族会議です(笑)。
小さい子どもたちは、お菓子の店ということもあって賛成、大きい子どもたちは「ママの分は自分たちで補うからやってみたらいいんじゃない?」と言ってくれました。子どもたちが後押しをしてくれたので、仕事を始める決心をしました。

お菓子ショップ HAPPY LAB起業後フェアなどへの出店を経て1号店をオープン。スタートは順調でしたか。
はい、オーストリアのパートナーもいい人で様々な支援してくれました。「幸福をもたらす」という「Happy Lab」のコンセプトもよかったので、これならいけるという感触もありました。また香港にある起業家を支援するネットワーク「和僑会」を通して、たくさんのアドバイスもいただきました。起業家の先輩方からは「この事業はいけると思うよ」「やらないで後悔するよりやってみたら?」と背中を押してくださいました。主人も自分が勧めた事業なので、全面的にサポートしてくれもちろん課題もたくさんあります。でも「失敗は成功のもと」とポジティブに考えて、つねに軌道修正するようにしています。

特にどんな点が大変ですか。
文化の違いと品質管理ですね。日本人と外国人の仕事のペースは違いますよね。欲しいときに商品が届かないとか、5時になったらどんなに仕事があってもあがるとか…(笑)。これは文化の違いなので無理強いもできません。3ヵ月前ではなく6ヵ月前に注文すれば間に合うなど、自分なりの解決方法を見つけています。品質では香港とオーストラリアの気候が逆なので、輸入時にチョコが溶けてしまったり…。また香港は湿気が多いので、本来の賞味期限よりもナッツの触感が早めに落ちてしまう気がするので、商品を見ながら判断するようにしています。
香港で仕事をする上では、広東語をきちんとしゃべれるといいなと思うことも多いですね。それはスタッフの方に支えていただいています。

生活に変化はありましたか。
時間の使い方が変わりましたね。仕事はやることが延々とあるので、優先順位を決めて、どこで区切りをつけるかを判断するようにしています。ミーティングなどを入れない限り、子どものイベントにも参加できるのは恵まれていると思います。帰りが遅くなると、子どもから「いつ帰ってくるの?」と電話が頻繁にかかってきます。そういうときは胸が痛みますね。
ビジネスは常に順調というわけではないので、いかに売り上げを伸ばしていくかは常日頃の課題です。頭の中でいつも考えているようになりました。

気分転換はどんなふうに?
料理をするのが好きなので、台所に立つと気分転換になります。冷蔵庫の中身と料理本を見比べて「今日はこれにしよう!」と新しい料理にチャレンジするのが好きです。料理本を見ていると飽きません(笑)。

これからの事業展開は?
まだ「Happy Lab」の存在は知られていないので、一人でも多くの方にお店に来ていただいて、幸せな気分を味わっていただけたらと思っています。アジア展開の役割も担っているので、パートナーを探して、他の国での事業展開も考えていきたいですね。
新しいアジアのマーケットニーズに合わせた商品展開も必要になってきています。日本から仕入れたお豆腐チョコや、チョコがしみこんだおかきなど、アジア人向けのフレーバーの販売も香港で始めていく予定です。
仕事を始めるきっかけとなった復興支援は今も細々ですが続けています。今後、香港に住んでいる方に日本の文化を伝え、それが支援につながるイ
ベントを行っていけたらと考えています。被災地の方が望んでいらっしゃるのは「自活すること」。いろいろ思い描くこともありますが、まずは会社を安定さ
せることが第一の目標です。

當真直美(とうま なおみ)さんプロフィール
実家は東京都練馬区。アメリカの大学を卒業。約17年間の専業主婦期間を経て2013年11月に起業、オーストラリア発の菓子ショップ「Happy Lab」を香港で展開する。専業主婦時代に友人と「香港から日本を励ます会」を立ち上げ、東日本大震災の復興支援に取り組む。香港人の夫との間に4男2女。趣味は料理、ヨガ。

Happy Lab International Limited
「Happy Lab」はオーストラリアで何店舗も展開する菓子(コンフェクショナリー)ショップ。
コンセプトは「幸福をもたらす実験室」。試験管やフラスコをイメージしたユニークなパッケージを使用したカラフルなお菓子を販売し、店に入るだけで、さらにお菓子を買うとき・食べるとき、幸せな気持ちになれる店・商品づくりを行っている。香港でビクトリアピークに1号店をオープン。5月末までモンコック(旺角)のショッピングセンター「Gala Place」で、またトンチョン(東涌)にあるショッピングセンター「Citygate Outlets」で6月末(8月まで延長予定もあり)までポップアップ店(空き店舗などを利用した期間限定ショップ)を開設中。
ウェブサイト:http://www.happylab.com.au

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