中国の独占禁止法について1。広東盛唐法律事務所
1昨今の日系企業に対する中国独占禁止法による処罰
今年9月、国家発展改革委員会のウェブサイトに、[2014]2号~13号の行政処罰決定書が掲載されました。これらの行政処罰決定書によると、日立汽車系統、デンソー、愛三工業、三菱電機、ミツバ、矢崎総業、古河電気工業、住友電気工業、不二越、日本精工、NTN、ジェイテクトの計12社が、中国の独占禁止法に違反したとされています。
そのうち、自動車部品メーカーに対しては、計8億RMB、ベアリングメーカーに対しては、計4億RMB、合計では、12億強RMBの課徴金が科されました。尚、日立汽車系統及び不二越は、調査機関(価格監督検査及び独占禁止局)の調査に積極的に協力したとして、処罰を免除されています(リニエンシー)。今回の課徴金総額は、中国の独占禁止法の歴史において、最大規模のものとなっています。
2処罰を受けた原因
国家発展改革委員会の公表した行政処罰決定書によると、当該12社が独占禁止法違反により処罰を受けた原因は、競争関係を有する事業者間で、自動車部品価格を固定又は変更する旨の独占合意を締結することにより、自動車部品の市場価格を操作し、間接的に完成車の価格を引き上げ、ひいては完成車メーカー及び最終消費者の適法な権利及び利益を侵害したため、とされています。
それでは、法的に、独占合意とは、どのように定義されているのでしょうか?事業者間でどのような合意を締結すると、独占合意とみなされるリスクがあるのでしょうか?
中国の独占禁止法が禁止する独占行為には、①独占合意、②市場における支配的地位の濫用、③企業結合、の3つがありますが、今回のコラムでは、前述の日系自動車部品メーカーが処罰された原因である、①独占合意について、解説させていただこうと思います(次回、②市場における支配的地位の濫用について解説します)。
3独占合意の定義
中国の独占禁止法の規定によると、独占合意とは、事業者間又は事業者団体が締結する、競争を排除、制限する合意、決定、その他の協力行為である、とされています。ここにいう合意、決定には、書面形式の物に限られず、口頭形式の物も含まれます。
その他の協力行為とは、事業者が書面又は口頭形式の合意又は決定を明確には締結していないが、実質的には協調一致が存在する行為を指します(独占合意行為の禁止に関する規定3条)。尚、当該合意、決定には、罰則を伴うものではない、紳士協定的な物も含まれます。
4まとめ
上述のことより、独占禁止法違反により処罰されるリスクを低減するため、企業は、競争関係にある事業者との間で、製品の価格、生産量、購買市場及び販売市場の分割などの事項について合意をしてはならないこと、等に留意すべきです。この点について、コンプライアンス部門、法務部門は熟知しているとしても、営業部門、事業部門は十分に把握していない可能性もあるため、独占禁止法に係わる可能性のある業務に従事する社員について、十分な教育を実施することが必要であると考えます。
次回は、中国の独占禁止法について(二)として、市場における支配的地位の濫用について解説させていただきます。
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