中国法律コラム2「深セン地区の工場移転」広東盛唐法律事務所
深セン地区の工場移転について
一、工場移転の背景
昨今、深セン市では日系企業の工場移転が増えています。その背景としては、①人件費の高騰(深セン市最低賃金RMB1,808)、②ワーカー不足、③賃料の高騰、④都市開発計画による立退き、などがあると思います。
移転先としましては、東南アジアなどの海外よりも、深セン市内、又は恵州市、東莞市などが第一候補となっているようです。その理由としましては、①東南アジアと比べ、中国の方がインフラが格段に整っていること②コスト的な問題から近場を選びたいこと③既存の従業員を継続雇用しやすいこと④既存の顧客・サプライヤーが広東地区に集中していること、等が挙げられます。
二、工場移転時の問題点
深セン市の工場が、深セン市内又は東莞市、恵州市などに移転する場合に、以下の問題に直面する恐れがあります。
ア 従業員への補償に関する問題
工場の移転に際して、移転先で継続雇用するしないに係わらず、従業員より経済補償金の支払を求められる蓋然性がとても高いです。
深セン市内での移転であれば、送迎バスの手配など通勤のための配慮が必要となるケースが多いものの、法律上は経済補償金の支払は不要です。然し、法的権利の有無に係わらず、従業員は往々にして経済補償金の支払を求めてきます。
東莞市、恵州市など深セン市以外の場所に移転する場合、継続雇用しない従業員に対して経済補償金の支払義務が生じます。継続雇用する社員についても、従業員が現在までの勤続年数を新会社が継承し経済補償金を暫時支払わないことに同意した場合を除いて、経済補償金を支払う義務があります。この場合は、新会社を退職するときに、旧会社での勤続年数を合算して経済補償金を算出する必要があります。
イ 法人格に関する問題
深セン市内の移転である場合は、所在地の変更という形式をとり、法人格そのものは変更せず、現在の会社を存続させるケースが多いです。この場合は、現在までに取得した許可証等は引き続き有効であり、従業員との雇用関係、顧客・サプライヤーとの契約上の地位、設備などの所有権に影響を与えることはありません。
然し、深セン市外への移転となると、とくに税務局、税関の審査が厳しく、新工場へのスムーズな生産の移行は大変難しい現状があります。したがいまして、もっぱら深セン市の現在の会社を清算し、新天地で新たに会社を設立するケースが多いです。この場合は、従業員との雇用関係、顧客・サプライヤーとの契約上の地位、設備の所有権、などは、当然には新会社に移転せず、個別に譲渡手続きをする必要性があります。
ウ 土地・建物に関する問題
賃貸物件である場合は、賃貸人(村であることが多い)から強引な立退き要求を受けることが多々あります。此れに対しては、あらかじめ賃貸契約書で賃借人としての権利を保護できるような準備をしておくことが肝要かと思います。いざ、賃貸人から立退きの要求を受けた際には、契約書を再度確認し、立退きに係る費用、立退きのタイムリミット、原状回復義務の有無、移転補償を受けられるかなどを詳細に検討した上で、交渉にあたる必要があります。
購買物件である場合は、購買時より地価が上昇していると思われますので、収益を最大化するために、優良なデベロッパーを選定し、デベロッパーと協力して開発計画を立案し、土地譲渡益の速やかな回収を図ることが大切です。
ほかにも、多数の問題が存在すると思いますが、文字数の関係上、今回はここまでにしておきます。工場移転に関して、疑問点などがございましたら、なんなりと小生までお問合せください。
広東盛唐法律事務所 SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問 大嶽 徳洋 Roy Odake
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