プロが解説【人材業界動向】

2024/01/17

2017年の創業以来、日系企業や日本人求職者のために人材紹介サービスを行ってきた「e-Job」。親身になって顧客に寄り添い、最善の条件を探してくれる総経理・高橋氏の評価は高く、顧客数も右肩上がりだ。今回は香港居住歴の長い高橋氏に24年の各業界動向を踏まえ、日系企業採用担当者が気をつけたい注意点などを伺った。

・優秀な人材を取り合うスピード勝負！
・給料よりも福利厚生を大事にする傾向
・不景気だからこそ優秀な人材を採用できるチャンス

生活・消費スタイルの変化

―まずはじめに近年の香港はどう変わりましたか？
デモやコロナを受けた人口の流動がまず大きな変化でしたね。イギリスへの移民は2023年の夏まで続きました。外食自粛の波の中でフードデリバリー産業が台頭し、現在でも依然として高い外食代を払うならと自宅で食べる香港人が多いと聞きます。弊社オフィスがある尖沙咀の週末は、多くの人で賑わっていた数年前に対し、現在では比較的閑散としています。コロナで高級志向の外食ブームはありましたが、今ではコスパのいいサイゼリアやスシローなどのファストフード店が人気です。中国人観光客の行動パターンも変化し、ブランドショップに列をなしていた昔に比べ、クロワッサンやエッグタルトを買い求めてbakehauseへ赴いたり、ネイザンロード背景に撮った写真をSNSにアップしたりと、体験することに価値を置いているようです。

人材不足の中ではスピード命

―採用側が気をつけることは？
昨年10月に新卒の初任給が中央値1万7,500ドルに上昇したと発表されました（コロナ前は1万6,000ドル）。これにより採用側は新卒者、中途採用者、そして既存スタッフの給与バランスをどうするかが課題となります。またエンジニアなどの専門職人材が不足していることで、企業側も必死に優秀な人材を探しています。このように競争が激化している中ではスピード採用が鍵です。一次面接から1週間後に役員面接というような日本スタイルでは、あっという間に他社に先を越されてしまいます。面接は多くとも2回まで、採用する意向があればエージェントを通し、候補者が他社に決めてしまう前に素早く連絡することをおすすめします。
また、近年のトレンドとして給料よりも休暇やフレックス制度、会社の雰囲気など働きやすさを重視する求職者が増えてきています。政府が定める有給休暇、初年度0日、2年目以降7日では少ないとの声も多く、カンパニーホリデーやバースデーホリデーなど会社側が独自性をアピールし、多様な選択肢を与える必要があります。

優秀な人材を探すなら今がチャンス

―日系企業としての強みとは？
全世界的に不景気が叫ばれていますが、実はこのような時こそ優秀な人材に出会えるチャンスです。業績不調によりレイオフされた人材を、給料ダウンして採用できるからです。また、給料が少し下がってしまっても、企業文化、職場の雰囲気、福利厚生、業績の安定の面で、日系企業は選ばれる可能性がおおいにあります。
反対に日系企業は人材の高齢化が問題視されており、若返りが課題です。また、デジタル化が遅れていたり、方針や指針が昔ながらの体質のままといういわゆる「昭和企業」のところも見受けられます。今までのやり方を見直す改革期とするといいでしょう。旧正月前後に人材が動く今が、採用のグッドタイミングです。

IT・小売・旅行・大手飲食は好調

―求人数が増えている業界について教えてください。
香港の若者を中心にEコマースは引き続き拡大中です。「欲しいものは全てネットで買える」時代に、彼らはわざわざスーパーへは行きません。HKTVモールでまとめ買いし時短を図っているのです。
また、日系大手ファストフードや小売、内装、旅行関連のクライアント案件も増えています。業界ではいわゆる「勝ち組」がさらに人気を博し爆進している状態です。このように、今の時代に合った「コスパ」「新しいアイデア」「体験型」という目線が大事だとされるでしょう。
昨年に開催された「日本秋祭り」では多くの香港人のご来場者がありました。香港の方は日本好きの方が多く、私たち日系企業が持つポテンシャルをまだまだ色々な分野で発揮できると思います。新しい一年、さまざまな工夫とともにピンチをチャンスにできたらいいですね。

e-Job Agency Limited
2017年設立当初より「人と人のベストマッチング」をモットーに企業へ多くの優秀人材を紹介してきた同社。仲介手数料の高い香港の相場の中で、手数料1ヶ月分のみを頂戴する良心的な価格設定なのも、総経理の人柄がにじみ出ている。