目から鱗の中国法律事情 「中国の労働分野における「集団契約」②」

2023/11/01

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

Vol.85 中国の労働分野における「集団契約」 その2

中国では労働分野で、当局からの通知でときどき「集団契約(中国語原文は「集体合同」)」という言葉を見ることがあります。この「集団契約」とは、何なのかを本シリーズでは見ていきます。

前回は、中国の労働分野における「集団契約(中国語原文は「集体合同」)」の定義などにについて見ました。今回はその続きを見ていきましょう。

集団契約で規定すべき内容
集団契約には、絶対に記載しなければならない内容というものは中国全域で適用される法律には規定されていません。集団契約で規定できる内容は、自由に決めることができるということです。ただし、地方性法規(地方ごとに適用される、いわゆる日本でいう「条例」)には、集団契約に最低限規定しなければならない内容と解釈できる規定があったりします。
もっとも、集団契約に規定すべき例として挙げられている内容としては以下のものが挙げられます。
・労働報酬
・労働時間
・休息休憩
・労働安全および衛生
・法定外保険および福祉
・女性労働者および未成年労働者の特殊保護
・職業技能訓練
・労働契約の管理
・賞罰
・人員削減
・集団契約の期限
・集団契約の変更および解除手続き
・集団契約の履行につき紛争が発生した場合の協議による処理方法
・集団契約に違反した場合の責任
・双方が協議すべきと判断したその他の内容27830484_l

しかし、集団契約の内容についても地方性法規(条例)で地方ごとに別の例が挙げられている場合もあります。中国は、事実上連邦制なのではないかと思われるほど地方性法規(条例)が発達している部分があります。労働法分野はその中でも特に地方性法規が発達しており、地方ごとに規制が異なる分野となっております。
連邦制とは、法律も異なる複数の地方が寄り集まって一つの国家となっているような体制のことです(例:アメリカ合衆国など)。(続く)


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi

P30 Lawyer_731

Pocket
LINEで送る