目から鱗の中国法律事情 Vol.64
中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。
中国の通信販売に対する規制 その2
前号で、中国における通信販売に対する法規制を見ました。しかし、まだすべての条文を見れていないことから、今号でもまずは中国における通信販売の法規制について見ていきましょう。
中国では、通信販売などの規制については消費者契約保護法がしています。前回は消費者保護法第25条第2項まで確認しているので、今号ではこの続きである消費者程法第25条第3項と、第28条を見ましょう。
第25条第3項
消費者から返品される商品は無傷でなければならない。業者は、返品された商品の受領日から7日以内に、消費者が商品に対して支払った額を返金するものとする。返品の商品の運賃は消費者が負担するものとする。業者と消費者の間で、これとは異なる合意をした場合は、その合意に従うものとする。
第28条
インターネット、テレビ、電話、郵便などの方法により商品もしくはサービスを提供する業者、および証券、保険、銀行などの金融サービスを提供する業者は、消費者に業者の住所、連絡方法、商品もしくはサービスの数量および質量、価格もしくは費用、履行期限とその方法、安全注意事項およびリスクの表示、購入後のサービス、民事責任などの情報について提供しなければならない。
これらの条文を見て分かる通り、中国における通信販売の規制の内容は、広告規制と購入した際の契約解除の話題くらいのもので、日本のそれとほぼ同じといっていいです。日本では同じような場合、商品を受け取ってから、8日が経過するまで返品することもできます。
これまでも何度か説明してきたように、中国では民法の制定が非常に遅かったという歴史があります。その結果、やっと成立した中国の民法典は、世界中のいろいろな国の制度を、条文化したとも言われています。
つまり、世界各国の類似の制度が中国の民法典にも規定されていることが多いということです。通信販売の規制についても民法典と同様に、特に重大な中国独自の条文があるわけでもなく、日本と同じような規制がかかっているだけということになっています。
中国法だからといって、全ての法律に特徴的な規定があるわけではなく、日本とほとんど変わらない規定となっている分野もあるのです。このような多くの国で、基本的に同じ内容となっていることは、民事法の分野では割とあることです。
〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!