尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.70

2022/08/31

深圳市従業員賃金支払条例の改正

「深圳市従業員賃金支払条例」は改正を経て2022年8月4日から公布・施行された。この改正において使用者に関わる一部条項をまとめたので、ご参考になれば幸いである。
第11条【第2項を新設】 賃金の支給周期が1ヶ月である場合、使用開始日から約定した賃金支給日まで1ヶ月未満の賃金は、使用者が最初の賃金支給日に日割賃金を支給するか、または次の賃金支給日に一括で支給することができ、具体的には、使用者が従業員と協議して確定する。
【説明】使用者と従業員との間で1ヶ月未満の賃金支給方法を明記した。使用者は協議を経ずに賃金支給方法を一方的に決定できない点に留意すべきである。
第14条【第2項を改正】 労働関係が解除または終了した場合、支給周期が満了していない従業員の月次賞、四半期賞、年末賞(ボーナス)は、労働契約の約定に従い支給する。労働契約に約定がない場合、集団契約の約定に従い支給する。労働契約と集団契約に約定がない場合は、法によって制定された使用者の規則制度の規定に従い支給する。約定または規定がない場合は、従業員の実際の労働時間に応じて支給する。
【説明】賃金の支給周期が満了していない従業員に対する賞与の支給に関し、労働契約の約定、集団契約の約定、規則制度の規定、従業員の実際の労働(勤務)時間の順に従い従業員の賞与を支給することを明記することで、「労働契約の約定の適用を最優先する」ことにより使用者側に有利な改正ともいえる。
第15条【第3項を改正】 賃金の支給記録は少なくとも3年間保存しなければならない。
【説明】賃金支給記録の保存期間並びに使用者側の賃金支給記録の提供に関する立証責任が2年から3年に延長された。
第15条【第4項を改正】 使用者は従業員の賃金を支払う時、紙または電子形式で従業員に本人の賃金明細書を提供しなければならない。賃金明細書の内容は賃金の支給記録と一致しなければならず、従業員が賃金明細書について異議を表明した場合、使用者は回答しなければならない。
【説明】電子形式による賃金明細書の送付を新設し、従業員の受領署名の規定を削除。使用者は労働契約で賃金明細書の送付方法を明記し、紙の交付の場合は従業員の署名を要求し、電子送付の場合は社内OAシステムやメールにより送付することが望ましい。
第34条【第1項第2号を削除】 使用者が法律に基づいて制定した規則制度に従い従業員に対して行う規則違反による経済処罰
【説明】同条項の削除により、「広東省賃金支給条例」第15条及び「広東省労働保障監察条例」第50条の規定と一致するようになったものの、「深セン経済特区和諧労働関係促進条例」第16条の「使用者は規則制度に従い従業員に対して経済処分を実施することができる」といった規定は有効である。深圳市に所在する使用者は今後の法改正に十分留意すべきであり、従業員に対し経済処分を行う際は、事前に弁護士のアドバイスを求めるなど慎重に行うことが望ましい。
第34条【第2項を改正】 使用者は毎月前項第1号の費用(従業員が本人の原因で使用者に経済的損失をもたらし、これを賠償する費用)を控除する前に書面で従業員に知らせなければならず、毎月控除後の従業員の賃金は深圳市の最低賃金基準(現行基準は2360元/月)を下回ってはならない。
【説明】使用者が従業員の賃金を控除する際、書面告知義務を規定。使用者は賃金控除の理由と具体的な金額を書面で通知し、従業員の署名を受領することが望ましい。
第55条【第2項を新設】 使用者は次に掲げる事由が一つでも該当する場合、人力資源主管部門は所定期限内の是正を命じ、期限が過ぎても是正しない場合、情状によって3万元以上5万元以下の過料に処することができる。(1)従業員の賃金が最低賃金基準を下回る場合、(2)従業員の賃金を控除、または無断で従業員の賃金を支給しない場合、(3)従業員の賃金を現物など非貨幣で支払う場合。前項第(1)号、第(2)号に規定する事由がある場合、人力資源主管部門は法律により従業員に対し賠償金も支払うよう、使用者に命じなければならない
【説明】使用者に対し過料に処するほか、従業員に対する賠償金の支払に関する規定を新設。


zhuojian

深圳本部:深圳市福田区福中三路2003号 国銀金融中心大厦11-13階
分所:広州、西安、重慶、杭州、馬鞍山、大連、福州、中山、東莞、鄭州など

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メール:yinxz@lawzj.cn

 

尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶應義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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 「中国現地法人の労務管理Q&A」発売中 

著者:尹秀鍾
日本語(287頁)
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深圳三田会


 

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