PPWビジネス通信 × アナシス Vol.49

2022/01/26

M1

人事労務のアナシスによる誌上相談会

 

 「オミクロン株への対応で、在宅勤務やシフト勤務をさせるべきなのでしょうか?」

 

問い:市中感染が発生し、在宅勤務やシフト勤務が始まっています。業務上、出勤して欲しいという本音がありますが、在宅勤務等をさせるべきなのでしょうか。
黒崎:この記事が出る頃には、状況の変化が起こっている可能性も大きいとは思いますが、どんなときにも適応出来る原理原則となる考え方はあるのではと考えます。
さて、ご質問に関しては企業によって制約条件が違いますので、一概に在宅勤務させるべき・させなくていい、とは言えません。そしてこの問題は従前と変わらず人によって「温度差」のあるものです。ある人は「大げさだ」と楽天的に構え、ある人は悲観的に準備を進めます。経営側と従業員側の意識の差などもあるでしょう。原則は「恐れすぎず、侮らず」です。温度差がある中でどう判断し、どうマネジメントするかが問われています。
コロナ対応には三つのキーワードがあります。「安全性」「ビジネスの継続性」そして「社会的責任」。なかでも従業員・関係者の安全性の担保という観点がまず第一に問われるでしょう。そのリスクマネジメントにおいては「プロアクティブの原則」というものがあります。
原則1:疑わしいときは行動せよ
原則2:最悪の事態を想定して行動せよ
原則3:空振りは許されるが見逃しは許されない
極論でまとめると、分からないうちは大げさにしておけということです。危機に対する温度差が違う人達の中でのそうした行動は、異様とまでに感じられるかもしれません。オミクロンは重症化しにくいとの報道もあります。しかしリーダーは「早すぎる判断」という批判を恐れずに行動出来るかどうかが問われるものです。その時にはこの「プロアクティブの原則」を持ち出すことになるでしょう。
実際、1月10日頃からは公務員が在宅勤務をまだしていない状況下で、早めに在宅勤務やシフト勤務を始めた企業もあります。そのころ政府は一般企業にはそれを奨励しておりましたが、多くの日系企業は様子見から始まりました。一部の香港の金融機関などは、従業員を二つや三つのチームに分けて接触させないシフト勤務制をスタートさせました。私は当時、緊急時のリハーサルを兼ねて、在宅勤務やシフト勤務を試験的・一時的に再び実行することは有効だと問いかけました。
ただし在宅勤務そのものは、企業ごとに異なる意見があります。それは、業務特性の問題と、「ビジネスの継続性」に関係する生産性の問題です。業務上どうしても出勤が前提の業務の場合、従業員の安全性に大いに気を遣いながらも出勤を要請することになります。安全かどうかは主観の影響を大きく受けます。従業員の心理状態をよく見て一人一人をケアし、尊重する姿勢を見せることが重要です。不安が高まっている慎重派は在宅勤務を希望してくるでしょう。これを機に休みたい、楽をしたいといった不埒な怠慢派とでもいう人が在宅を希望するかもしれません。一方、自分だけは大丈夫だろうという正常性バイアスを持つケアレスな人や、家が狭いなど在宅勤務で仕事にならない人などは出勤を希望するかもしれません。
様々なタイプはいるものの、大事なのは第一に人を尊重するということ。その上でビジネスの継続性のために、生産性の高さを基準として各種制度などを決めていくというのは合理的であると考えます。経営は継続しなければなりません。
オフィスワークでは、過去の在宅勤務が成功裏におわっているかどうかが、ここに影響します。緊急避難的に実施した在宅勤務では、なかなか生産性の高い業務遂行はできなかったでしょう。制度化した企業も複数社ありますが、より高い生産性を出せるまでに至ってない企業もあるのでは。これまでのやり方を進化させるか、あるいはやはり出勤させるか。これを機に再度在宅勤務の制度化・発展に取り組むことも重要です。
どんなタイミングで在宅勤務やシフト勤務に切り替えるかの判断基準は、外的基準と内的基準とに分かれますが最後は経営者の決断。悔いの無いご決断を。業績を落とさないことを前提にすれば、「大げさ」な決断は攻撃されないでしょう。
最後に社会的責任について。経営者は従業員達を被害者にも加害者にもしてはいけません。そして傍観者にもさせてはいけないのだと思います。一緒にこの状況を克服する。この危機を機会と捉え、チーム力の向上をはかりたいものです。

 

 


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