総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:免疫の暴走 アレルギー

2023/03/22

スクリーンショット (2398)花粉症
このところ夏を思わせるほどの日もある香港ですが、日本では桜前線が北上中で、特に北国では本格的な春の到来を心待ちにしている人も多いことでしょう。日本の春は花粉症の季節です。絶え間なく流れ落ちてくる鼻水に対処するのに、毎日ティッシュペーパーの大きな箱をひとりで使い切ってしまう人もあると聞きます。周囲に誰もいなければ、ティッシュを鼻に詰めっぱなしにする人もいるそうです。あまりの辛さに、せっかくの春の到来を待つこともなく、「春よ去れ、早く去れ」と、桜が咲く前から心の底から願っている人も多いはず。花粉症の原因として有名なスギ花粉はまだ寒い2月頃から飛び始め、その飛散は5月初旬まで続きます。これに加えてヒノキ花粉が桜の花の季節に合わせるかのように飛散します。これら花粉症の人にとって、春は特に辛い季節になります。外出すると衣類にも花粉が付着するので、家の中に花粉を持ち込まないように神経を使わなければいけません。寒い冬が去り暖かくなって気持ちが開放的になる季節であるにもかかわらず、花粉症の人には地獄の季節。幸い香港では花粉に対するアレルギーはほとんど発症しませんが、「免疫の暴走現象」といえるアレルギーの原因は花粉に限られるわけではなく、どこにいても現代人の生活とは切り離すことができません。

食物アレルギー
花粉症と並んで現代人を悩ませるアレルギーの代表が食物アレルギーです。花粉症は季節限定とはいえ避けることが困難であるのに対して、食物アレルギーは原因となる食品が特定できさえすればそれを避けることは比較的容易です。ただし、食物アレルギーは死に直結する場合もあります。ある飲み会の席で「俺を殺すにゃ刃物はいらねえ、エビの1匹食わせりゃイチコロ!」と甲殻類アレルギーの男性が酔った勢いで叫んでいました。食物アレルギーでは常に食事に神経質にならなければいけません。また当該食品が必ずしも目に見えているものとは限らず、ほんのわずかな混入であっても重篤な症状に至ってしまうこともあるなど、厄介でとても怖いアレルギーです。呼吸困難などの症状が現れた場合に備えてエピペン(アナフィラキシー補助治療薬)を常に持ち歩いている人もいます。

花粉症と果物・野菜アレルギー
花粉症と果物や野菜のアレルギーには密接な関係があることが最近わかってきました。これはアレルギーの原因となる物質・アレルゲンのタンパク質構造が似ているから起きるものであって、「花粉食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼ばれており、花粉症の人の10~20%に認められるそうです。花粉症の方で特定の果物や野菜を食べた時に口の中や喉がイガイガしたり唇が腫れたりするなどの不快な経験をすることはありませんか。一般的にその症状は軽く、口腔や喉頭などに限局されることが多いものの、時としてアナフィラキシーショックを起こす場合もあるので注意が必要です。PFASには、例えばスギ花粉症とトマト、カバノキ科花粉とバラ科の果物(リンゴ、サクランボ、桃など)の関係が知られています。ちなみにこれらのアレルゲンは熱に弱く、ジャムなど加工食品ではアレルギー症状は起きにくいようです。

衛生仮説
幼少期に様々な微生物に暴露した経験者はアレルギー疾患になり難いという説が1900年代終わり頃から唱えられ始めました。今では多くのエビデンスもあってこの仮説を支持する専門家も少なくありませんが、一方で批判的な見方をする研究者も多く、現代においてアレルギー疾患が増えている原因が特定できたわけではありません。衛生的な生活にするのが良くないといって手洗いをやめてしまうなどはあまりにも短絡的過ぎます。しかし、「除菌」という発想、つまり微生物はすべて排除してしまうという考え方は決して好ましいとは思えません。抗菌グッズが現れたのが30数年前であることを考えると、極端な衛生志向はアレルギー疾患の増加と関係があるのではないかと個人的には考えています。

アレルギー対策
アレルギー疾患はたとえ軽いものであってもその当事者にしてみれば極めて不快なもの。さらに、ただ不快であるだけではなく、激しいアナフィラキシーショックに見舞われて命に関わるような場合もあり、この問題は深刻です。細心の注意を払っていても、知らずに原因物質(抗原)を取り込んでしまっただけで生命の危険にさらされることもあるわけです。このような体質の人が常に携帯するエピペンはアドレナリン自己注射薬で、万が一の時に自分か、あるいは周囲の人が注射して、医療機関に到着するまでの時間稼ぎをします。
本人が気付かないレベルのアレルギー体質まで含めると、ほとんどの人が該当してしまうのではないかと思えるほど、その体質は現代人に染みわたっているかのようです。自分はアレルギーとは関係ないと思っていても、決して他人ごとではありません。発症は突然です。免疫システムが変化してきた根本的な原因はまだはっきりと証明されたわけではなく、体質を改善する確実な方法はもちろん、画期的な治療法もありませんから、残念ながら現代人はこれからもアレルギーと上手く付き合っていかなければなりません。今回は、花の季節に厄介で憂鬱なお話でした。


堀様1藤田医科大学卒業。臨床検査技師。
日本医科大学付属病院勤務の後、青年海外協力隊に参加し、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島に2年間派遣される。世界保健機関WHOのプログラムの下でマラリア対策プロジェクトに従事。帰国後に就職した巡回健診事業を行う会社にて香港に赴任。健康に対する自身の理念を実現するため、1999年3月メディポートを設立し現在に至る。


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