中国のコワーキングスペース

2017/09/12

5年ほど前、働くためのスペースを探し求める中国のフリーランサーや起業家達は電源コードを使えるカフェを追い出され、同じような志を持つ仲間と安く小さなアパートを借りたりしていた。 各々散らばった彼らに、コミュニティの感覚はほとんど無かった。

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しかし深圳や北京、上海成都、広州などで新興企業達のスタートアップの動きは加速し、中国国内でコワーキングスペースは急速に広がった。そしてそれは欧米とは若干異なった様相を呈している。

コワーキングスペース事業を展開する大手、WeWorkの時価総額はいまや約180億米ドル。15カ国140カ所以上にスペースを持ち、中国には上海に2箇所を開業した後、5月に北京でも2箇所を開設した。早ければ2018年頃には深圳にも進出するという。

そしてWeWork最大の中国のライバル、UrWorkは最近新規のスペースに投資するために5,800万米ドルを調達したと発表した。現在20都市に数十のスペースを有し、深圳および他の地域でも展開を図っている。

これら2社ともに共通して、広報は口が堅い。これは中国でコワーキングスペースの業界が競争力の高い市場であることを物語っている。そして同業界の各企業は、コワーキングスペースよりも、“コミュニティ”と呼ばれることを好む。

「コミュニティはキーワードです。」西欧企業に中国の電子商取引について教える深圳の新興企業、GlobalFromAsiaの創設者であるMichael Michelini氏は語る。「成功者はまず、場所を作るよりも先にコミュニティを構築するのです。」彼は2012年に共同作業スペースを提供するビジネスを興したが半年で立ち行かなくなった。だが今や同ビジネス業界は順調に拡大し、適切な時期に事業が展開されていることを物語っている。

大手が国際的な顧客と個人のイノベーターにスペースを供給する一方、深圳ではSimplyWorkやUrWork、WeDo、CoWorkといった各企業は個人の起業家はもちろん、よりローカルな新興企業やハードウェアテックのベンチャーなどにアプローチし、着実に業務を拡大させている。

SimplyWorkの担当者は「コーワークスペースビジネスは始まったばかりのビジネスなので、競争の激化についてはあまり心配がないように思う。一企業だけでマーケット全体の需要を満たすことはできないし、若い世代が労働力に加わるにつれて、中国にはさらに多くのフリーランサーが出現するだろう。中国の他の世代と比較して、彼らは楽しい環境で好きなことをしたい、面白い人と出会い、コラボレーションしたい、と喜んで働きたいと思う傾向が強い。」 と語る。

多くのスペースは、コミュニティの意識を高める週1回のグループ活動や来訪者の講演を開催し、施設内にあるジムや瞑想室、サウナ、スペースに流れるお洒落な音楽などのいわゆる魅力的な“オマケ”の設備は、安定した仕事に執着しない若者達を引きつける。

コワーキングスペースの成長の一部はイノベーション主導の経済を求める習近平国家主席率いる政府が意図したものであり、地方政府もその奨励のために財源を割いている。

Michelini氏は、「政府はブルーカラーのイノベーションへの移行を懸念していると思います。政府は間接的、または直接的に資金を調達しており、市場はすでにコーワーキングスペースに対応する準備ができていると言えます。」と語る。

政府による絶え間ないイノベーションの呼び鈴は、若者が親達に新興市場に携わっている旨を伝えることを容易にし、中国でのコーワーキングスペースの可能性を高めている。

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