深圳で伝説の女性活動家の生涯を辿る「何香凝美術館」
何香凝美術館は中国において、北京の国立現代美術館に続いて建てられた2番目の現代美術館であるのと同時に、国立美術館として初めて個人名を冠した美術館である。この美術館を訪れることは来場者にとって印象的な経験になると共に、中国を劇的に変えた1人の女性の人生について知る機会になるだろう。
何香凝(He Xiangning/1878-1972)は香港の裕福な家庭に生まれ育ち、孫文と親しい革命家、政治家である廖仲愷と結婚。廖は革命と中国の現代化に生涯を捧げた人物であり、夫の日本留学に同行した何は、私立女子美術学校(現在の女子美術大学)で田中頼章のもと絵画を学びつつ、革命旗や紋章のデザインなど、同盟會のプロパガンタ活動をサポートした。
1916年に夫と上海へ渡った後、何は広州で宋慶齡と共に、戦士らに服や薬を供給するためのファンドである女性協会を設立。また戦いの資金調達のため、自らの描いた絵の多くを売った。
1923年、孫文の下で中国国民党婦人部長に選出された彼女は「法的、社会的、経済的、教育的権利に関する女性の完全な平等」を提唱し、1924年3月8日には中国の国際女性デーの集会を主催するなどして活躍。1925年に孫文が亡くなってからも政治活動を続けていた何だったが、党内勢力の変遷により力を失い、香港とシンガポールに移住。ロンドン、パリ、ベルギー、ドイツ、スイスなどのヨーロッパを旅しながら、絵の展示会を行った。
1949年に中華人民共和国が設立されると彼女は北京に戻り、国際事案委員会の委員長や、中華全国婦女聯合会名誉主席など、共産党政府の要職を歴任。80歳になるまで仕事を続けた後、1972年、肺炎により94歳で逝去したのだった。
何香凝美術館はそんな稀代の女性政治家であり、アーティストでもあった彼女にスポットを当てた美術館。中国の伝統画法を現代的画風に落とし込み、正義と革命の精神を宿した彼女の作品は、観るものに深い感銘を与えてくれることだろう。なお生誕140年にあたる今年は、同館にて10月7日まで特別展を開催している。会期中は写真や書物等、何にまつわる歴史的な品々のほか、政治的意味合いや社会的価値観といったバックグラウンドを探求できる作品達が展示されるという。
また同館では、国内外の有名アーティストによる現代美術のコレクションも多数展示されているので、そちらもぜひお見逃しなく。
何香凝美術館(He Xiangning Art Museum)
住所:深圳南山区华侨城深南大道9013号
最寄りはメトロライン1、华侨城站(OCT駅) C出口
時間:火~日 10:00~17:30、月休
Annabelle
美しいものに囲まれている時間が一番幸せだと感じる、美学に酔いしれる20代の香港女子。