虫歯に命を奪われた将軍

2017/10/17

知名度が低いとされる江戸幕府第14代将軍徳川家茂。21歳の若さで他界したことも要因である。列強諸国による開国圧力が高まった時期でもあり、何かと気苦労が絶えなかった将軍である。

この家茂の死因として実しやかに語られているのが、「虫歯」である。この将軍は、相当な甘党だったらしく、カステラ、羊羹、氷砂糖、懐中モナカ、金平糖など砂糖を使ったお菓子が大好物。ストレス発散のためなのか、相当な量を食していたと言われる。

家茂の菩提寺は増上寺だが、発掘調査によると、頭蓋骨の31本中30本が虫歯だったという。虫歯の状況についてもかなり詳しく解明されているが、日常的にかなりの痛みを抱えていたことが推測される。

家茂の場合、甘いものの大量摂取によりビタミンB1が不足して脚気を患っていた。その脚気に起因する心不全により21歳という若さでこの世を去った。

江戸時代の歯の治療は、基本的には抜歯。虫歯になったら歯の寿命は尽きたという感覚を持っていた。しかも治療は上流階級に限られ、庶民は神仏に祈願、おまじない、鍼や灸、生薬・家伝薬、売薬または漢方薬で済ませていた。もっとも、当時は食物の種類に乏しく、庶民の虫歯は比較的少なかったといわれている。

林原祐一
筆者紹介 林原祐一
しろもと歯科本部統括管理部長。6月の広州院開院に向けて奔走中。メタボ解消のために46歳でランニング開始。25キロの減量に成功し、走歴4年強で表彰歴60回を数える。

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