広東の特産品・銘菓 第1回 広州・佛山編
「広東省の特産は?」と尋ねられることがある。なんとなく知っていても、改めて尋ねられると具体的な産地やエピソードまでは答えられないことも……。そこで、広東省各地の代表的な特産品や銘菓を数回に分けてご紹介。これを知っておけば、おみやげ選びにも役立ちそうだ!
広州
鶏仔餅
「鶏仔餅」は広州発祥の伝統的な”餅“(焼き菓子)で、広東四大名餅の一つでもある。元々の名称は「小鳳餅」。清朝・咸豊年間の1855年ごろ、広州・西関の富豪・伍さんの家でメイドをしていた小鳳(鳳ちゃん)が、月餅作りで余った生地を焼いてみたことが始まりと言われる。ひよこの絵が商標であった「成珠茶楼」で出されていたことから「鶏仔餅」と呼ばれるようになり、今に伝えられている。柔らかめの生地の中に、ピーナッツやゴマ、クルミ、カスタードなどが入って歯ごたえがあり、甘じょっぱい味がする。普洱茶との組み合わせがおすすめ。上下九の「蓮香樓」や「陶陶居」のものが有名。
泮塘馬蹄糕
表面が輝く半透明状のお菓子。馬蹄糕は広州銘菓として知られている。「泮塘馬蹄糕」の特徴は、「馬蹄」(mǎtí 、荸薺bíqiとか水栗とも呼ばれる)が使われること。日本語ではオオクログワイとかシナクログワイと呼ばれる食材で、根茎(芋)をペースト状にしたもの、もしくは乾燥させ粉状にしたものが使われる。馬蹄は広州の特産品で、広東料理ではよく使われる。川や池や湖が多い広州は水生植物である馬蹄の栽培に適している。特に有名なのは「泮塘」で採れる馬蹄。広州の旧市街「西関」に当たるエリア。荔湾湖の湖畔にある「泮溪酒家」が発祥の地とされている。作り方は、砂糖をキャラメル状になるまで火にかけ、ペースト状の馬蹄を加え、型に入れて強火で蒸す。ムチッとした独特な食感があり、それでいて歯切れがよく、ほのかに甘い。馬蹄が香る上品な味わい。両面を軽く焼いてあるので、カリカリの表面と中の食感が絶妙な食感を見だしている。馬蹄と砂糖と水が主な材料というシンプルなお菓子ながら、広州特産の馬蹄を味わうには最高の点心と言える。
佛山
倫教糕
「倫教糕」(別名「白糖糕」)は嶺南伝統のお菓子。佛山市順徳の倫教という場所が発祥なのでそう呼ばれている。見た目の涼しさと、さっぱりした甘さから、広州の暑い夏には特に好んで食される。倫教糕の歴史は古く、一説によれば、1855年、倫教でお粥・菓子の店を構えていた梁さんが発明して広東各地に広まったという。主な材料は上質の米と砂糖で、これが白く輝く理由ともなっている。材料がシンプルなだけに、出来栄えは料理人の腕次第。味も見た目も満足な倫教糕を作るにはセンスと熟練が求められる。作り方は、お米の汁に砂糖を加えて時間をかけて発酵させてから蒸す。発酵具合や蒸し加減が味、食感、表面の輝きを大きく左右する。上等の倫教糕の表面は、「鏡」とか「美人の白い肌」に例えられるほど真っ白できれいに輝く。軽く弾ける独特の弾力と控えめな甘さが絶妙だ。
蹦砂(虫崩虫少)
「李禧記」の「蹦砂」は、広東省では有名な、かりんとうに似たお菓子。小麦粉をこね、油で揚げて作られる。蝶に似た形、香ばしくサクサクした食感、砂糖や腐乳を使った独特の甘辛い味が特徴。由来は佛山市順徳区大良鎮の地方菓子で、”バンサー“は地元の方言で蝶を意味する。漢字では虫編に「崩」と虫編に「少」の二文字で書かれるが、正式に登録されていない方言字である。そのため「蹦砂」「蹦沙」「崩砂」などの字が当て字として使われている。幼いころのおやつの味を懐かしく覚えている人も少なくない。幼少期の記憶の中の楽しい記憶にとどまらず、一生を共にするような味とも言える。「李禧記」の「蹦砂」は歯ざわりがく、しょっぱさの中に甘味を感じられ、甘味の中でサクサク感を味わえる。口の中に豊かな香りと塩気とサクサクな食感が一気に押し寄せてくる。硬くて噛めないことはないので、大人から子どもまでおいしくいただけるお菓子だ。発祥は、清朝・乾隆年間の1788年ごろ、大良の東門外で梁成章という人が開いた「成記」という店でかりんとうのような薄く硬い揚げ菓子が考案され、その後、「李禧記」という店が蝶の形に改良したといわれ、さらに1920年代になって発酵した小麦粉の種を入れて、さっくりした食感のものに改良した。作り方は、小麦粉(薄力粉)水、砂糖、塩、調味料と膨張剤を加えてこね、板状にした後で、長方形に切り、まん中でねじって、低めの温度のラードか植物油でじっくりと揚げる。水分が少ないため、半年程度保存がきく。