中世ヨーロッパのキリスト教アート展が「香港大学美術博物館(UMAG)」で開催
香港大学美術博物館(UMAG)では2月28日まで、中世後期のヨーロッパに描かれた41のマニュスクリプト(装飾写本)と、7つの彫刻を展示している。香港でマニュスクリプトの展示会が開かれるのは今回が初めて。
印刷技術がまだ発展しておらず、大部分の人が読み書きができなかった時代において、写本と装飾を組み合わせた「聖書」や「時祷書」などのマニュスクリプトは、当時の貴族や富豪にしか手に入らないものであり、定時の祈りの手引きをする「時祷書」は、中世の信心深いキリスト教信者にとって重要な貴重品だった。15世紀に印刷機が発明され、印刷技術の発展とともに一般市民にも普及していくことになるが、それ以前、特にペストが猛威を振るった14世紀半ば、ヨーロッパでは「時祷書」などのマニュスクリプトに取りすがる人も多かったという。
美しく彩られたマニュスクリプトは、小さな絵画作品でもある。ヨーロッパのマニュスクリプトの大部分はキリストに関連するもので、挿絵があることでテキストに臨場感が生まれ、その内容に深みを与えている。高級羊皮紙の上にテンペラ、インキ、金粉で描かれた絵画は当時の読者を物語に引き込んでいったことだろう。イエス・キリストの語録を視覚的に紹介する書として、永く大事にされてきたこれらのマニュスクリプトからは、当時の画家の才腕と、挿絵文化の水準の高さを知ることができる。テキストのタイポグラフィーも芸術性が高く、頭文字に装飾が施されているなど、一文字一文字を見るだけでも興味深い。もちろん大いに装飾された表紙の芸術性の高さも言うにおよばない。
テレビやインターネットから視覚情報が溢れる現代を生きる私たちにとって、こうした「挿絵」が当時の人々にもたらした影響を想像するのはやや難しいかもしれない。しかし、マニュスクリプトは見る人をその世界観に引き込む力を持っている。この機会に一枚一枚じっくりと鑑賞し、当時の歴史や文化を肌で感じてみてはどうだろうか。
“Illustrious Illuminations:Christian Manuscripts from the High Gothic to the High Renaissance (1250-1500)”
期間:2月28日まで
場所:1/F., Fung Ping Shan Bldg., UMAG, 90 Bonham Rd., Pokfulam
時間:9:30~18:00(月~土) 13:00~18:00(日)
料金:無料
電話:(852)3929-9500、(852)2377-0469
ウェブ:http://www.hkumag.hku.hk