香港サッカー アジア外の選手たちの獲得トレンド
香港プレミアリーグ2015-16シーズンが開幕した。
昨シーズンに引き続き、9チームが参戦する事になったが、夏のプレシーズンは参戦チーム数を巡って混沌を極めた。2シーズン続けて、9チームという奇数でリーグを開催する事は、運営側が望んでいた訳もなく、致し方なく9チームでのリーグ開催を承認した、というのが事実だ。運営側は、当初から10チームでのリーグ開催を想定して、昨シーズンのリーグ最下位を降格させて、香港1部リーグの1位と2位を自動昇格させる算段だった。夏のプレシーズンでの混沌とした状況については、当コラムの第42節を読み返して頂ければと思う。
奇数チームによるリーグ戦の開催には、いくつかの不都合が生じる。毎節、順番で1チームに試合がない事で、リーグ戦の消化日程が不平等となる。試合のない1チームは、その週末を無駄にやり過ごすしかないのだ。リーグ戦の進行という意味では、参戦チームが毎節同時に試合を消化していく事が、最も公平である。特に最終節においては、優勝や残留を争うチームに試合がない場合に、争いの最中にいる別のチームが、試合内容をコントロールする事ができてしまう。
因みに、今シーズンの最終節に試合がないのは、最下位候補筆頭の黄大仙(ウォンタイシン)だ。もちろん、最終節までに最下位チームが確定していれば、大きな問題にはならないのだが。果たして。
今シーズンの参戦チームには、優勝争いをする3チームに、それぞれBチームが存在する構図ができあがった。傑志(キッチー)のBチームが冠忠南區(サウザン)、東方(イースタン)のBチームが夢想駿其(ドリーム)、そして南華(サウスチャイナ)のBチームが件の黄大仙だ。3つのAチームが、それぞれのBチームに直接資本投下している訳ではないが、余剰外国人選手や若手香港人選手を無償で貸し出したり、資本を迂回投下している。
説明するまでもなく、これらはリーグ開催においては好ましくない状況だ。AチームはBチームとの2度の対戦で、勝ち点6と大量得点を稼ぐ事が、容易に想像できる。
また、AチームはBチームに対して、ライバルチームとの対戦において、何らかのメリットを与えた上で、試合に臨む様コントロールできる。試合結果然り、ライバルチームへのダメージ然りだ。今シーズンのリーグ戦は、各チーム総当たり2回戦制の16試合。昨シーズンと変わらない試合数だが、リーグ戦の試合数としては本当に少ない。これに4つものカップ戦が行なわれ、更に最後にAFCカップの出場権を懸けたプレーオフ大会もある。従来のカップ戦の開催は2つ、多いシーズンでも3つだった。試合数を確保したいのであれば、リーグ戦を総当たり3回戦制の24試合にする事が妥当だと思われる。4つ目のカップ戦を創設したと聞いた時には愕然とした。リーグ残留を目標とする弱小チームは、リーグ戦の結果が最重要であり、正直なところカップ戦の結果など求めていない。早々に敗退してリーグ戦に備える方が得策なのだ。
10月2日で香港の移籍市場が閉まった。リーグに登録されている日本人選手は3人。そして遂に、東ティモール国籍を有するブラジル人選手が、南華のアジア枠選手として登録された。現在、アジア各国にて、東ティモール国籍を有するブラジル人選手が、アジア枠選手として登録されている。主にブラジル人の指導者や選手たちを有するチームが、積極的に獲得している。非常に貴重なアジア枠を、アジアのパスポートを得た非アジア人選手たちが占め始めているのだ。アジア各国でプレーする日本人選手と関係者は、この事実を重く受け止めている。
あくまでも噂だが、アジア枠の市場に着目したとある人物が、東ティモールの国籍と代表チームへの招集をセットにして、アジアでプレーする(したい)ブラジル人選手に、販売しているという話もある。
香港プレミアリーグにも、多くのブラジル人指導者と選手たちがいる。今後は、東ティモール国籍のブラジル人選手の獲得が、トレンドになるに違いない。
≪つづく≫
文/池田宣雄(香港サッカー協会会員)