僕の香妻交際日記 第74回 ヘルパーが新しい携帯を自慢し始めたら気をつけよう
私がこれまで雇ってきた歴代のヘルパーの半分がローン会社からお金を借りていたように、フィリピン人、インドネシア人に関わらずそれはそれは多くのヘルパーが香港内で借金を抱えている。そもそも香港はシンガポールや台湾に比べてヘルパーの給与が高いというのに、なぜそれに満足せずお金を借りようとするのか?
最初はヘルパーの金銭感覚に対して理解に苦しんだが、最近少しずつ彼女たちの借金の経緯や理由が分かってきた。
超簡単に現金が手に入る
ヘルパーがお金を借りるのに必要な資料はHKID、パスポート、ビザ、香港雇用主との雇用契約書、香港の住所証明、母国のIDカードのみ。これらの中で入手が困難なものはただ一つ、香港での住所証明だけである。これは雇用主宛の郵便物をこっそり拝借しなければならないのだが、雇用主が働いていて不在の平日の日中の時間を使えば比較的簡単に手に入る。そして、これらの資料を揃えてローン会社に出向くだけで、その場で現金(給与の2〜3ヶ月分)が手に入るのだ。
ヘルパー仲間と仲良く借金できる
ヘルパーが借金をするときはヘルパー仲間と一緒にお金を借りることが多い。各ローン会社は魅力的なお友達紹介特典を用意することで、1人のヘルパーから数珠つなぎのように他のヘルパーが連れてこられるような仕組みを作っている。しかし、仲間で一緒にお金を借りる場合、借用人となるのはそのうちの1人なので、口のうまいヘルパーは借用書に仲間のヘルパーにサインをさせ、現金を手に入れ次第音信不通になるというケースはめちゃめちゃ多い。口のうまいヘルパーにまんまと騙された残りのヘルパーは仲間の分も借金を返済しなければならないのだが、大抵返すことができずに破産への道を歩むことになる。
新しい携帯電話がもらえる
ヘルパーたちが最終的にお金を借りようと決断する決め手となる要因としてローン会社の特典がすごい魅力的だという点が挙げられる。携帯、バッグ、財布、電化製品、時には現金までもらえるのだからそういった現物を目の前に見せられたら、最初は躊躇していても気分がハイになってしまうのは言うまでもない。しかもその新しい携帯には新しいSIMカードまで入っていて、雇用主の知らない新しい電話番号を手に入れられるのだから、隠し事の多いヘルパーには何ともありがたい。ただ、ローン会社がSIMカードまであげてしまう本当の理由はヘルパーとの連絡手段を確保するためだということにヘルパーはその時点では気がついていない。
借金をしたヘルパーの行く末
お金を借りた次の月からヘルパーの借金返済生活が始まるのだが、まず彼女たちは返さないと考えていい。もちろんちゃんと返済したヘルパーもいるとは思うのだが、私がこれまでに経験した中では返済に成功したヘルパーは一人もいない。ヘルパーたちが借りた金はどこにいったのかは知る由もないのだが彼女たちは口をそろえて「返済するお金がない」と言う。最悪のケースはこの後他のローン会社からまた借金をするケース。そうなったヘルパーたちは救いの施しようがない。
借金が返済できないとどうなるのか
月々の返済に失敗すると、ローン会社はまず雇用主の住所宛に催促状を郵送してくる。この時初めて雇用主は自分のヘルパーが借金をしていることに気がつく。返済に2ヶ月連続で失敗すると、ローン会社はヘルパーの実家に借金コレクター(たぶんその手の方々)を派遣する。ローン会社が借金返済をしないヘルパーの雇用主に対して何かすることはないとのことだが、自分のヘルパーが返済滞納していると判明した時点で契約解除することをお勧めする。
ヘルパーに借金をさせない方法
察しの通りヘルパーに「借金するなよ」と言ったところで効果はない。だから雇用主としては借金をする上での必要書類をヘルパーに揃えさせないことで防止をするしかない。まず第一に郵便物はしっかりと管理すること。郵便受けには鍵をかけ、家に持って帰ってきた郵便物はヘルパーの手の届かないところに保管する。本音はヘルパーのパスポートや雇用契約書も保管しておきたいところだが、それを強制するとヘルパーが労働局へ訴える場合もあるので大きな声でお勧めはできない。あとはヘルパーがある日突然新しい携帯やバッグなどをもって家に帰ってきたときは要要要注意である。
ルーシー龍(りゅう)
東京都出身。香港歴10年。世の中のオヤジの威厳を取り戻すため愛娘に甘い妻と日々衝突を繰り返しながら子育てに奮闘中。