元朗(ユンロン)ベーカリー「大同老餅家」こだわりの月餅

2015/06/09

大同老餅家古き良き味わいが光るベーカリー老舗店、大同老餅家

ここ100年で起こった元朗区の変化を挙げていけば「交通網の充実」、「道路整備」、「ショッピングモールの台頭」など、きりがない。だが変化の中にあってずっと変わらないものもある。それは香港食文化の発信地としての元朗の確固たる地位だ。特にベーカリー分野における評判は傾くことなく、香港各地に散らばるベーカリーショップの多くは元朗をルーツにしている。

大同老餅家が目指すもの
その元朗で長年に亘り支持されている「大同老餅家」は、約70年の激動の歴史を経て今もなお香港人に愛されているベーカリーショップだ。その歴史は1944年、日本が香港を占領していた時代まで遡る。当時上流階級者にとっての高級な食べ物として扱われていたパンをより多くの人に届けたいという想いから創始者である謝陸堯(Tse Lu Yiu)氏は大同老餅家を立ち上げた。アーモンドビスケット、結婚式に用いられる喜餅、伝統的な月餅などを扱い、それらを食す生活を通して儒家思想の一端である平和を呼びかけようとした。
大同老餅家は多くの人の心を惹き付け、その後3世代に亘って創始者の想いを実現してきた。その間にパンは上流階級のものだけではなくなり、謝陸堯氏が目指したとおり、広く多くの人に愛される食べ物となったのだ。

50年前の広告

50年前の広告

20年前の月餅メンバーシップカード

20年前の月餅メンバーシップカード

歴史的な文章

歴史的な文章

伝統を守るべきか、変化を受け入れるべきか
大同老餅家は広告を大々的に出さない戦略を貫いている。大同老餅家のマネージャーTangさんは夫婦ともに大同老餅家に長年勤務しており、3世代に亘る同店の歴史を見つめてきたが、数年前ある1人の男性が店舗を訪れたことをきっかけに、この広告を出さないという画期的な路線を検討し始めたという。当時は中秋月の祭りの季節で、巷ではお祝いに供える月餅が飛ぶように売れていたという。この男性は大同老餅家の評判を聞きつけ、遠路はるばる店舗へ足を運んだものの、事前予約がなかったこともあり希望するだけの数量を買うことができなかったという。「多数の客に提供できるだけの商品数がないのであれば、広告なんて出さないでもらいたい」と男性は無念そうに語ったそうだが、このストレートな言葉はTangさんの心に突き刺さり、プロモーションよりもクオリティを大切にする戦略に舵を取るきっかけとなった。「大量生産や、それらを売りさばくのは難しいことではありません。ですが、それで質が落ちてしまっては元も子もないのです」とTangさんは語る。

様々な種類の月餅

様々な種類の月餅

創業以来多くの人に愛され続けている元朗本店

創業以来多くの人に愛され続けている元朗本店

自然の恵み豊かな元朗
激しく移り変わる香港で伝統を維持するのは容易なことではない。だが、その点元朗は豊かな土壌に恵まれており、さらに世代から世代に受け継がれる味を守り抜こうとする職人達の気概もあって、70年の長きもの間、変化に迎合せず味を維持し続けることができた。
大同老餅家の歴史は波乱に満ちたものだったが、常に香港を拠点として多くの人に味わい深いベーカリーを届けることを第一の目標としてきた。変わらぬ伝統の味を守り抜いてきた姿勢こそ、大同老餅家を唯一無二の香港ベーカリーショップとたらしめている所以なのだろう。

大同老餅家で長年働いている大同老餅家
住所:G/F., 57 Fo Choi St., Yuen Long
電話:(852)2476-2630

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