甘味特集 PartⅢ 包装フィルム製造メーカー「月餅マシン」について聞いてみた

2020/09/02

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2020年10月1日(木)は国慶節…というのはもちろん、「中秋節」でもある。中秋節といえば、香港の皆さんが、春節と同じくらい大切にしているイベントの一つ。そして、その中秋節に欠かせないのは、やっぱり「月餅」。月餅の丸い形が、「家族の輪」「家族団欒」を意味しているのだそう。夜遅くまで団欒を楽しむために、当日ではなく、翌日が祝日となっているほど!近年では、1ヵ月以上前から、お世話になっている方々に月餅を配るようになったためか、中秋節付近になると、激しい月餅商戦が見られる。ここ数年は、ややフライング気味で、月餅の販売がどんどん前倒しになってきているようにさえ感じる。
さて、こんな大量の月餅をどのように作っているのだろうか。手作り? …いや、そんなわけはない。調べていると、包装フィルム販売会社『香港包装器材中心有限公司(Hong Kong Packing Equipment CentreLtd./以下、HKPEC)』が提供している、「月餅マシン」なるものに行き着いた!早速、『HKPEC』のExecutive Directorである、下村圭さんにお話を伺った。

 

 

PPW:御社の歴史と事業紹介をお願いします。

下村さん:『HKPEC』は、日本の福岡県に所在する、丸東産業株式会社(以下、丸東産業)の100%子会社です。弊社は、包装フィルムや包装機、食品加工機械の販売で、30年以上の実績があります。また、「食品に関わる、食品以外のもの」のほとんどを取り扱っており、加工 → 包装を行なった後に検査するための機械(金属探知機など)や、レストランや厨房で使うツール(食品用トレー・包丁・まな板など)の販売も行なっております。

 元々は、1977年に香港人が立ち上げたローカルの会社でした。そこで、丸東産業の包装フィルムの輸入販売を行なっていたんです。当時は、何でも新聞紙で包む習慣があった中で、その新聞紙に代わるアイテムとして、包装フィルムを紹介し、販売を拡大していきました。1980年代に入ってから、当時の社長が豪州に移住するタイミングで、丸東産業が100%出資して子会社化し、現在の体制となりました。

 

PPW:月餅マシンの販売をされていると伺いました。販売を始めた経緯をお聞かせください。

下村さん:包餡機「火星人」(レオン自動機株式会社)という名前のマシンで、1995年に販売をスタートしました。元々、饅頭を作る機械だったところ、改良を重ね、クッキーや餅アイス、スコッチエッグやチーズ入りハンバーグ、老婆餅、月餅など、様々なメニューを作れるようになりました。月餅に関しては、当初、卵が1個しか入れられなかったのに対し、現在は2個入れられるなど、バリエーションも豊かになってきています。

 販売を始めた経緯は、(月餅に限らず)職人さんたちの高齢化、販売量自体の増加により、手作業では追いつかなくなったためです。月餅に関して言うと、多いお店では、一日10万個製造販売します。香港のトップ5~6社を合わせると、1シーズンで2,000万個もの売り上げがあるんです!今では、人の手で作ることは滅多にありませんね。

 

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PPW:「火星人」とは、どのような機械なのでしょうか?性能、価格、ニーズ、卸先、稼働時期などの詳細を教えてください。

下村さん:卵2個入りの月餅の場合、機械1台で1時間あたり約1,200個(1分間約20個)製造することができます。価格は、1台HKD65~70万。卵を2個入れられる装置などを付ける場合は、追加料金が必要です。

 外側の生地で中身を包むという仕組みなので、月餅ですと、伝統的な蓮の実あん&あひるの卵月餅、ナッツ月餅、カスタード月餅など、どのような組み合わせも可能です。最新の機械では、中身を二層にできるようになったため、あんこの中に更にジャムを入れるなどといったことも可能になりました。

 お客様は、やはりお菓子屋さんをはじめとする食品工場が多いですね。日本のお饅頭屋さんのほとんどはこの機械を使っています。一年中、何でも作れる機械です。

 「火星人」が最も売れるのは、3~4月です。フィルム製造のピークも3~4月ですね。各社が月餅の製造に取り掛かる前に用意する必要があるので、毎年、春先が一番忙しいです。中秋節が終わる10月頃には、来年に向けて、機械の改良などの打ち合わせが入ってきます。何か新しいことができないか、どこを改良したらいいのかを知るために、我々も毎年11月と12月に、香港内で機械に関するセミナーを開催しています。7~8年前によくやっていたのは、「流心奶黄月餅」という、クラシックなカスタード月餅の中央に、更にとろけるカスタードクリームが入ったもののご紹介です。見事に売れ筋になり、今では定番化してきましたね。老舗の月餅屋さんでも取り扱いされるようになりました。「流心奶黄月餅」は、外側から「月餅の生地 → 通常のカスタード生地 → とろけるカスタード生地」と、中身が二重になっているのですが、これは、「火星人」が改良され、ダブルフィリングの機能が搭載されたことにより可能になったことです。

 

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PPW:「火星人」の個人利用も可能なのでしょうか?

下村さん:もちろん個人のお客様にご購入いただくことも可能ですが、大量生産の機械なので、家庭向けではないですね。何と言っても、1時間に1,200個も出来上がりますから(笑) ちなみに、個人商店さんなどにお求めいただくことはあります。

 大きさは縦98cm、横175.7cm、高さ138.3cm、重さ580kgと、そこまで大きくないのですが、大きな月餅メーカーさんですと、一気に10~12台を稼働させています。いろんな種類を作られるので、1台につき1種類という使い方をされているようです。

 

PPW:御社の取り扱う包装フィルムには、どのような特長があるのでしょうか?

下村さん:バリア性があり、酸素を通しにくい材質のフィルムであること、高機能の脱酸素剤を入れていることが特長ですね。それぞれの会社からあがってきたデザインを弊社でフィルムに印刷して、各社に届け、(『HKPEC』で)購入いただいた包装機で月餅などの商品を包装するという流れです。

 

PPW:今後の展開について教えてください。

下村さん:やはり我々の親会社はフィルム製造メーカーですので、バリア性、保存性、強靭性、取扱性などの機能性のあるフィルムをご紹介し、香港のお客様にも、食品の品質の向上にお役立ていただきたいですね。

 おすすめは、「掴めるくん」と「吸湿くん」。「掴めるくん」は、チャック袋の開封時に、合わさったフィルムに高低差を作ることによって、掴み部分ができ、開けやすさを実現しました。高齢化社会において、ユニバーサルデザインを意識したもので、これにより、「袋が開けにくい」という消費者の不満を解消しました。「吸湿くん」は、フィルムと乾燥剤を一体化したもので、乾燥剤フリーが可能になりました。これまで乾燥剤を入れることができなかった商品にも使用可能で、かつ、製造工程での手間や、誤飲などのトラブルを防ぐことができます。日本では、菓子や健康食品など様々な用途で、丸東産業の包装フィルムをお使いいただいています。

 今後は、「掴めるくん」と「吸湿くん」を合わせたフィルムなどの展開もしていく予定です。香港でも、新型肺炎コロナウイルスの影響で、衛生面がかなり重要視され始めたので、速乾性のあるふきんなどのキッチンツールも需要が高まってきました。高機能な包装フィルムも食品の衛生にとって、とても重要ですので、今後も積極的に広めていきたいと思っています。

 

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下村 圭(しもむら けい)さん
香港包装器材中心有限公司 Executive Director
福岡県小郡市生まれ。2011年から丸東産業の子会社である香港包装器材中心に赴任。香港日本料理店協会理事。休日はテニス、山歩きをしながら過ごしている。

 

香港包装器材中心有限公司
(Hong Kong Packing Equipment Centre Ltd.)

住所:Flat 02-03, 21/F., Citic Telecom Tower, 93 Kwai Fuk Rd., Kwai Chung
電話:(852)2610-2277
ウェブ:www.hongkongpacking.com.hk
メール:info@hkpecmsg.com

 

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