大館特集 Part 2
上環(ションワン)駅から坂を上がっていくと、飲食店が軒を連ねるエリア、SOHOに着く。SOHOへ来たからには、歴史・芸術・文化に満ちたクリエイティブセンターPMQ元創方(以下、PMQ)を見逃すわけにはいかない。
上環(ションワン)駅から坂を上がっていくと、飲食店が軒を連ねるエリア、SOHOに着く。SOHOへ来たからには、歴史・芸術・文化に満ちたクリエイティブセンターPMQ元創方(以下、PMQ)を見逃すわけにはいかない。
2014年6月にオープンしたPMQは、警察官の既婚者向け宿舎だった建物内部を改装し、ショップ、カフェ、レストランなどの情報発信スポットへと生まれ変わった建物だ。工房を兼ねてのクリエイティブショップや独自のコンセプトに基づいた個性的なデザインショップが数多く出店している。
5階にはPMQ元創方の歴史について学ぶことができる展示室が併設されている。PMQには、1951年に学校から警察官宿舎へと改装された。その学校とは、香港でも有名な名門校Government Central School(現在のQueen’s College)だ。改装されてから2000年までは警察官の宿舎として使用されていた。
香港政府は2010年、歴史的建築物へ指定、その後改築されてクリエイティブ産業の新しいランドマークへと変貌を遂げたのである。
地元文化創作への支援
歴史的建築物としてのPMQ、そして100年前から存在したこの建物の歴史を人々に伝えるため、香港でも指折りのクリエイティブセンターへと改装されたPMQでは色々な芸術文化イベント、産業イベント、展示会が開催されている。
かつて警察官宿舎だった建物は、1つ1つの小部屋へと改装され、ローカルデザイナーがワークショップを開催したり、ショップをオープンするためのスペースを提供している。PMQには100名以上のデザイナーが集まり、デザインにこだわった雑貨を探す人々を惹きつけるスポットにもなっている。PMQはまさに歴史的建築物を人々の生活と繋げる貴重な場となっている。
新人デザイナーでも作品を展示するアートスペースを借りることができるように賃料は抑えめになっている。彼らを支援していくことで香港の芸術発展を推進していくことが狙いだ。
数年に渡って、PMQから斬新なブランドが世へ送り出されている。
PPW編集部はアクセサリーブランド「Obellery」を立ち上げたHugo Yeung(以下、Hugo)とBelinda Chang(以下、Belinda)の2人にインタビューを行った。
創設と設計理念
2014年、アクセサリーデザイナーのHugoとBelindaは、「Obellery」を立ち上げた。ブランド名は、ObjectとJewelleryを掛け合わせたものだ。
PPW:香港の宝飾業界は成熟していますが、なぜこのタイミングで香港で宝飾ブランドを立ち上げようと思ったのでしょうか?
Belinda:香港の宝飾市場は主に輸出向けだったため、商業要素や資本主義要素の強いデザインでした。一方で現代宝飾や銀製品のデザインに関しては、伝統的な宝飾を製作するのではなく、自分自身でデザインを製作することが必要だと感じたため、立ち上げようと決意しました。
PPW:Belindaさんが制作するアクセサリーのデザインについて教えてください。
Belinda:アクセサリーは私が自分自身でデザインしています。アクセサリーはすべてハンドメイドです。「Obellery」はアクセサリーを作る場所、そしてその意味をデザイナーに与えてくれました。
PPW:ハンドメイドアクセサリーにこだわる理由について教えてください。
Hugo:ハンドメイドのデザインが生み出すメリットは、機械で作られたデザインよりも生き生きとした作品になるからです。私たちはありふれた香港の宝飾デザインの手法とは異なり、デザイナーたちがデザインしたモデルを工場と打ち合わせて職人が製作する手法を採用しています。
今後について
PPW:PMQで1号店を出店した経緯について
Hugo:様々なジャンルのデザイナーがショップを次々とPMQにオープンしました。デザイナーがそれぞれ、違うエリアに出店すると人々を引き付けるのは難しいですが、異なるジャンルのデザイナーたちが同じエリアでショップをオープンすることで人々を惹きつけることができます。
PPW:PMQ以外への出店も検討はしましたか?
Hugo:賃料が高いため、検討することはできませんでした。
PPW:ネットショップ経営を考えたことがありますか?
Belinda:5年前にブランドを立ち上げた、ネットショップはまだ流行っていませんでした。
Hugo:お客様に実際にアクセサリーに触れてもらい、私たちのデザインに対する思いを知ってもらうことも必要です。また、トラディショナルなアクセサリー以外にも、香港にはダイバーシティにデザインされたアクセサリーもあることを伝えたいと考えています。
PPW:ブランドを立ち上げてから困難に直面したことはありますか?
Hugo:店舗を運営するのは大変でしたが、PMQのサポートもありオープン以来、大変な困難はあまりありませんでした。PMQは様々なタイプの客層を呼び込んでいます。さらに、最近オープンしたThe Mills南豐紗廠とかつて旧警察署と旧刑務所の大館では、インデペンデントショップが数多く出店しています。賃料は同地区のショップも安く、プロモーションにも役立ちます。
PPW:2号店を大館に出店することを検討したことはありますか?
Hugo:いろいろと調べたこともありますが、PMQとは異なる性質を持っていると思います。大館は芸術の発展に焦点を当てており、ビジネスは補完的なものにすぎませが、PMQは主にローカルデザイナー向けにスペースを提供しており、ビジネスの要素が比較的大きいです。
未来への展望
PPW:香港のクリエイティブ産業に対する期待について教えてください。
Hugo:クリエイティブ産業に必要なことはただ一つ、クリエイティブであることです。しかし香港では、クリエイティブは常に現実に負けている点が惜しいところです。
PPW:香港よりも台湾でブランドを発信していくほうがやり易いのではないでしょうか?
Belinda:台湾は香港に比べて賃料や物価も安いので経済的負担は少ないでしょう。そしてお客様も来店しやすくなり、私たちの求めているデザインも発信しやすくなると考えています。
Hugo:香港におけるクリエイティブ産業はまだ成熟していないため、地元のインデペンデント中小企業が盛り上がっていける、香港政府の更なるサポートに期待しています。
PPW:香港を拠点に他都市への進出も検討したことはありますか?
Belinda:実際、香港はすでに成熟した国際都市で、FacebookやInstagramを通じて海外でも私たちのアクセサリーを購入することも可能です。
香港は「文化の砂漠」などと自嘲する人も多いが、実は豊かな歴史と文化的価値がたくさんある街。PMQでは有名な建物の歴史を知るだけでなく、ビジネスや新しい文化の開発のためのプラットフォームを提供し続けている。
OBELLERY
住所:H403, Block B, PMQ, 35 Aberdeen St., Central
電話:(852)2155-4198
メール:info@Obellery.com
PMQ
住所: 35 Aberdeen St., Central
時間:7:00~23:00
ウェブ:www.pmq.org.hk