特集:春だ!長洲に渡ろう!1

2017/04/03

Cheung Chau

春だ!長洲に渡ろう!

ふたつの小島がつながった?!

香港島から約10km、大嶼山(ランタオ島)の傍らに浮かぶ長洲(チョンヂャウ)は週末こそ香港からの観光、ハイキング客で賑わうとはいえ、英国植民地時代、いや清朝、明朝の時代からその基本的な姿をほとんど変えることなく静かな漁業の島として今日に至っている。長洲に渡る前に、ちょっとこの島の成り立ちについて知っておけば島の散策がもっと楽しくなるかもしれない。

長州

香港在住の日本人の間では「長洲島(ちょうしゅうとう)」と「島」までつけて呼ばれることが多いこの島。「長洲」だけでは吉田松陰、高杉晋作、伊藤博文らを輩出した長門の国「長州」を連想してしまうせいか、あるいは日本語での読みが同じ「潮州」(広東語ではチウヂャウ)と混同してしまうせいなのか、はたまた滑舌の悪いプロレスラーとゴッチャになってしまうせいか…(笑)。ともあれ広東語での正式名称は「島」抜きの「長洲(チョンヂャウ)」。「洲」という字がすでに島の意味を表しているからだ。英名でも「Cheung Chau」と、「島(Island)は付かない。そしてもう一つの別名は「Dumbbell Island」。地図でこの島の形を見れば納得がいくだろう。そう、確かに“ダンベル”に似ている。長洲は元々、南北二つの小島の間に潮流によって砂が堆積し、永い年月をかけて形成された砂州で両島が繋がったものなのだ。

砂州の西側は波が穏やかで天然の良港となっており、東側の長いビーチは夏、海水浴客で賑わう。

長州

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1898年の時点での長洲の人口は陸上生活者約3,000人、水上生活者約5,000人となっているが、20世紀前半まではそれほど大きな人口の変化はみられない。戦後になって難民の流入などで人口は増え続け、1990年代には約40,000人と長洲人口はピークを迎える。その後2000年代に入って30,000人、現在は約25,000人前後が暮すといわれる。
長洲の古い歴史資料は少ないが、1970年に約3000年前のものと推定される「石刻」が発見されたことから、太古よりここに人の生活があったことは確かなようだ。明の時代には既にこの島に漁業が栄えていたことが記録されており、清朝時代の18世紀半ばには「墟」(市場)が発展し、長洲は廣東省寶安縣の管轄であったことが記されている。前述の通り、この島の構造は岩だらけの二つの小島を砂浜で繋いだようなもの。真水も少なく農耕に適した土地がほとんどない長洲では、漁業、並びに「鹹魚(ハムユー)」や「蝦膏(ハーコウ)」などの海産物加工業が唯一の産業といってもいい。

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 しかし、漁業だけに頼っていた島の経済は1970年代から変化を見せる。大きく経済成長を続ける香港の喧騒から逃れ、週末を静かに過ごせる手軽な「リゾート」として人気となり、観光産業が成長しはじめたのだ。東湾ビーチに臨むあたりを中心に「渡暇屋」と呼ばれる簡易宿泊施設が軒を連ね、週末は若者のグループやカップルで賑わいをみせる。結婚して独立するまでは親との同居が当たり前の香港住宅事情の下では、恋人同士が二人きりで居られる空間は少ないのだ。女の子に「一緒に長洲に行かない?」と言えば、赤くなるか平手打ちを喰らうかのどちらかだ、とも聞いた(笑)。しかし、1990年代末から渡暇屋で練炭を使った自殺、心中事件が相次ぎ(最近では昨年秋にも…)、渡暇屋は大きくイメージダウン。最近ではヨーロッパ風のB&B(bed and breakfast)サービスを謳う宿が流行っている。このこともあって、長洲の観光産業は単なるお手軽リゾートだけでなく、島の伝統的文化を大きく打ち出し観光客を誘致する方向に力を入れている。

長洲には車もバイクも、陸上をガソリンエンジン、ディーゼルエンジンで走る乗り物はない。救急、消防、警察の緊急車両はあるが、これらもすべて電動車だ。観光で島を訪れる人向けのレンタル自転車や三輪車の他に、島の住人も自転車を使う人が多く、細い裏路地でよく自転車に出くわす。エンジン音とは無縁の長洲は観光客で賑わう週末以外、のんびりとした時間が支配する静かな島に戻る。

スピードだけじゃない!長洲への「船旅」を楽しむ

長州

長洲へは中環(セントラル)の埠頭から新渡輪(First Ferry)が運行するフェリーが出ている。香港島側からなら「中環碼頭」のバスターミナルから、あるいはIFCモールから天橋(歩道橋)で行くのが便利。九龍側からなら尖沙咀(チムサーチョイ)からスターフェリーでヴィクトリア港を渡り、船を乗り継ぐのがいいだろう。とにかくMTR中環駅からの歩きはとても遠く感じられてしまうのだ。離島往きの埠頭には、大嶼山(ランタオ島)の梅窩(ムイオー)往き、坪洲(ペンヂャウ)往き、南丫(ラマ)島の榕樹湾(ヨンシュウワン)、索罟湾(ソッグーワン)往きなどの各離島便の埠頭がずらりと並んでおり、週末にはハイキンググループや観光客など各離島へ向かう人たちが大勢集まっている。埠頭には番号と目的地がハッキリと大書きされているので遠くからでも分かりやすい。長洲往きは5番埠頭。だいたい30分おきに運行している。「高速船(所要時間約40分)」と「普通フェリー(同約60分)」とがあり、月~土曜料金は高速船がHKD25.8、普通フェリーHKD13.2(日曜・祝日料金は4割強高くなる)。詳細はウェブなどで確認しておこう。

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 急ぐ旅でないのなら普通フェリーの「豪華位」がおすすめだ。料金HKD20.7で船の3階デッキが利用できる。その名前ほど「豪華」とは言えないのだが、何と言っても船尾の外デッキに出られるのが魅力。ベンチは早い者勝ちなので船に乗り込んだら真っ先に船尾を目指そう。とはいえ香港人は基本的に冷房の効いた(ガンガンに)室内を好むので、船尾デッキのベンチ争いのライバルは主に欧米系の人たちが相手となる。ベンチが確保できなくても潮風に吹かれ、港や行き交うコンテナ船、追い抜いて行くマカオ往き高速船、間近を過ぎる島々を眺めながらの船旅は楽しく、1時間などあっという間に過ぎてしまう。

長州 長州
帰りの便でこの「豪華位」に乗るのもいい。夕方に長洲を出港する便の船尾に立てば右手に沈む夕日を眺められる。日が暮れれば暗い海と白い航跡のあと、無数の光に彩られ、夜景きらめくヴィクトリア港に包み込まれるようにゆっくりと到着するのもロマンチックだ…。

長洲へのフェリーには実はもう一つの路線がある。香港島の南、香港仔(アバディーン)から翠華船務(Tsui Wah Ferry Service)が運行している便で、所要時間は約1時間。冷房はない。否応無しに“全席潮風席”だ(笑)。もっとのんびり、「ローカル渡し船」気分を味わいたい、という方はお試しあれ。

新世界第一渡輪服務有限公司
(新渡輪/First Ferry )

ウェブ:www.nwff.com.hk

翠華船務(香港)有限公司

ウェブ:www.traway.com.hk

 

長州島に巨大饅頭タワーが出現!?年に一度の大イベント「饅頭祭り」

長洲太平清醮

饅頭祭りとは?

長州
毎年旧暦4月8日付近に長州島で行われる祭りのこと。正式名称は「長洲太平清醮」。100年以上の歴史をもつ香港の伝統行事であり、その昔、長洲島で大流行した疫病を鎮めるために人々が神に扮して祈りながら島を歩いたことが起源だと言われている。現在では、島の無病息災や漁業の安全を祈る祭りとなっている。2017年の開催は、4月30日から5月4日までの5日間。例年約4万人もの見物客が香港内外から訪れ、最近ではテレビ中継が入るほどの人気ぶり。いつもはのんびりした島が活気に満ち溢れる、年に一度の大イベントである。

メインイベント「饅頭争奪レース」

-068 長州
饅頭祭りで一番のメインイベントといえる、搶包山比賽こと「饅頭争奪レース」。200名のエントリーの中から、事前に行われる予選を通過した12名が決勝へと進出。この決勝戦が饅頭祭りの最終日、深夜23時30分から行われるのだ。会場となる北帝廟には、「平安」と書かれた饅頭が積み重ねられた高さ14m、直径3mの巨大な 饅頭タワー(搶包山)が出現。饅頭レースのルールは非常に簡単。3分以内に多くの饅頭を取り高得点を狙うレースだ。頂上付近の饅頭は9点、地上に近い饅頭は1点。選手たちはできるだけ頂上の饅頭を狙いに、一気に駆け上がっていく。饅頭タワーに使われている饅頭の数は9000個、以前は本物の饅頭が使用されていたが現在は作り物が使用されている。1976年の事故をきっかけに一時禁止とされていたが、2005年に再開となった。今では饅頭を奪い合う競技として、島外からのエントリー者が増えているが、もともとは疫病が治まったことに対する神への感謝を込めた奉納のための伝統行事であったことを忘れてはならない。決勝戦を観戦するにはチケットが必要。整理券配布は22時開始だ。

日中には華やかなパレードも長州
祭りのもう一つの目玉が日中に行われる「飄色(ピウセッ)パレード」。神様や獅子舞、歴史上の人物に仮装した子供たちなど、様々な趣向を凝らしたグループが参加し、街中を練り歩く。中でも注目したいは、5、6歳の子供たちを乗せた山車。下にいる子供が棒1本で上の子供を支える、何とも不思議な構造だが、しっかりと金属で固定されているので長時間同じ姿勢をキープできるようになっている。沿道は子供たちを応援する多くの人で賑わい、祭りに華を添えている。
島内では、多くの饅頭グッズを販売。饅頭争奪レースの主役である、本物の「平安饅頭」は、ぜひ食べていただきたい。他にもキーホルダーやTシャツなど、祭り気分でついつい欲しくなってしまうかも!?
今年の饅頭祭りは、会場で家族や友達と一緒に盛り上がろう。

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