PPWビジネス通信 × アナシス Vol 14

2019/02/20

人事労務のアナシスによる誌上相談会
「賃下げは違法ですか?」

 

問い:景気見通しが悪い中、評価が低い従業員の給与を下げたいと考えています。これは違法なのでしょうか?

黒崎:これはこうして記事にされると、誤解も多い事項なので非常に注意が必要です。まず、賃金は簡単に下げられるものではありません。が、賃下げそのものが違法だというわけではありません。これは香港でも中国でも言えることです。労使の合意があれば成り立ちはします。中国では「協議一致」ですね。しかしその合意はそんなに容易ではないでしょう。

中国でも香港でも、本人の同意無く、労働・雇用契約の内容を一方的に改悪変更はできません。では、賃下げがあり得ることを、労働契約書にどう書けばいいのか?というご質問もよくいただきますが、個別にご相談ください。ただ、契約書でどう約定しようと、書面上のテクニックを駆使して賃下げを実行しようとしても合意には至らないでしょう。労使の信頼関係があって、その賃下げが納得できるものであるなら、合意もあり得えます。

実際、私も中国で賃下げをした経験があります。しかし、その部下を信じ、賃下げした後もフォローし続け、やがて自信と業績を取り戻したその部下は、賃金額も取り戻しました。決めてあったルールに従っての賃下げでしたので、それを実行しなければマネジメントの軸がぶれてしまうところだったのでぎりぎりの選択でした。

香港においての賃下げをさらに取り上げてみます。賃下げ・降格など、「雇用条例により労働者に与えられた、あるいは与えられるべき権利・恩恵・保護を消滅または減少させる意図をもって使用者が労働者の雇用契約の条件を変更する場合」、つまり改悪変更する場合には、労働者は雇用保護の救済を請求することが可能です。そしてその労働者の救済が認められた場合には、使用者に労働者の復職あるいは再雇用、あるいは雇用終止金の支払いが命じられます。

賃下げは非常にセンシティブな問題なので、是非我々専門家とご相談下さい。直近では厳しい評価の仕組みを取り入れ、賃下げを含んだ人事制度の導入サポートもいたしました。賃金の下方硬直性を避ける仕組みです。しかしそれもフォーカスすべきは賃下げではなく、適切な原資の分配という目的のためです。

なぜ賃下げまでしなければならなくなるのか。使用者側のそれまでのマネジメントの責任も問われてくる問題です。できれば避けたい賃下げ。環境の変化への対応と、メリハリをつけるために一度は思考を通していただきたいテーマでもあります。

 


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【講師】黒崎幸良
【費用】HK$800(一般公開)アナシス香港ご契約企業様は無料です

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Photo③(revised)

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