不動産市場に異変?売り手に広がる不安感
目立つ下落要素が無いにも関わらず、香港の不動産市場では住宅やオフィスの所有者が価格を下げて物件を売却し、不動産市場を離れる事例が増え、景気減速の兆候が見られる。
九龍湾(カウルーンベイ)にある得寶花園では、282sqftの部屋が433万香港ドル(USD552,496)、1sqft当たり15,355香港ドルで売られた。これは今年9月末に売れた同等の物件価格より8.8%、同年に売却された同等物件より16%も安い。
あるオーナーは、渣甸山にあるThe Legendの広さ1,725sqftの部屋を2007年に4860万香港ドルで購入し、今年10月9日に4600万香港ドルで売却した。売値は希望価格より12%も低く、実に260万香港ドルも価格が下落したことになる。
香港理工大学のエディー・フイ教授は「これはまだ序章であり、貿易戦争と金利の引き締め政策が続けば、今後の市場価格はより下落する可能性がある」と推測する。また不動産会社「利嘉閣」によると、2018年第3四半期の営利取引は98.8%、2017年第3四半期以来の最低値だった。同社曰く、同期の78件の住宅取引については、利益も損失もない取引、または損失が出た取引であった。
調査責任者のデレック・チャン氏は「市場の減速を危惧する不動産オーナーは、売却を急いで価格を下げ続けている。市場に蔓延した不安感は、2017年第4四半期の取引にも悪影響だ。」と述べた。2017年第4四半期、同社は97.8%の営利取引を期待しているが、2017年12月までの住宅価格は前四半期比で3%~5%下落する見通しだ。この状況で、シティバンクやUBS、野村などの大手銀行は、住宅価格の長期的上昇が止まり、下がってきた可能性があると警告した。現段階では多くの売り手、買い手が静観している状態だというが、「もし売り手達が弱気になって価格を下げれば、多くの売り手が従来よりもかなり低い価格で財産を手放す前代未聞の事態になる」とチャン氏は延べた。
この流れに伴った動きもある。香港証券取引所は、中国企業のホプソン・ディベロップメントが中環(セントラル)のオフィスタワー「The Center」の49階の購入に合意したことを明らかにした。同取引は当初の要求価格よりも20%以上低い、11.18億香港ドル(1sqftあたり43,510香港ドル)で締結された。また今年5月には、シマオプロパティホールディングス、富豪の许荣茂、朱李月華らが率いるコンソーシアムが、中環にある李嘉誠所有のビルを世界最高値の不動産取引価格402億香港ドルで買収した。
一方、住宅価格動向を追う格付け、評価指数は今年9月に393.9へ低下、前年8月より0.3ポイント低下した。中原地産によれば、民営住宅の価格はここ1、2週間で香港島は2%、新界東部で0.56%下がったが、新界西部は平均2.55%と値が大きく、1999年竣工の集合住宅、嘉湖山莊は約15%下落したという。
そんな中、ディベロッパーは住宅販売の開始を急いでいる。華懋集團は元朗の物件144戸の価格を今年10月16日に発表。同様に、九龍建業も同年10月19日に油塘(ヤウトン)の162戸の売り出しを開始した。同物件の割引後の最低価格は390万香港ドルとなっている。
(テキスト:Hilary Kwan、翻訳:Shoko Masuda)