ビジネスの翼 第9回

2022/06/28

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小野光一氏(金精軒製菓株式会社 代表取締役)
「創業120年の伝統の和菓子屋に革命を起こした水信玄餅」
「山梨から“慈愛”に満ちた和菓子で世界を幸せにする」
山梨県で1902年に創業し、今年で120年目を迎える和菓子の老舗「金精軒」。地元山梨産の素材にこだわり、丁寧な手作業で作られる和菓子は海外の客にも評判である。中でも賞味期限わずか30分の「水信玄餅」はSNSでも話題となる。伝統を守りながら、新しい和菓子を生み出しお客様を魅了する秘密を、Wing Fat代表取締役 中込直樹が小野社長に伺う。

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中込直樹:金精軒は創業120年の老舗で、山梨を代表する和菓子の信玄餅などを販売されています。それに加えて山梨の酒蔵「七賢」の酒粕を使った「大吟醸粕てら」、地元の農家の支援のため知り合いのパン屋と手を組み、明野町のさつまいもを使ったスイートポテト「ほくときらり」など、地元のお店とのコラボで新しい商品開発をされていますね。

小野氏:「大吟醸粕てら」の材料となる酒粕は「七賢」さん等の大吟醸酒の酒粕を使用しています。この大吟醸酒を醸造する過程で生み出される酒粕は、桃やブドウのような豊潤な香りがするんです。しかし酒蔵さんに、この酒粕はどうするかと聞いたら、使い道がないから廃棄するしかないと伺ったんです。それは非常にもったないと考え、何とかこの酒粕を使った和菓子を商品化できないかと2年の研究を重ねて、弊社の看板商品の1つである「大吟醸粕てら」を生み出したんです。

中込直樹:なるほど、今まで廃棄されていた物から新しい商品を生み出す。今のSDGSの考えにもマッチしていますね。もう一つ地元をサポートするために金精軒は山梨のサッカークラブ「ヴァンフォーレ甲府」の公式スポンサーになっていますね。

小野氏:「ヴァンフォーレ甲府」は山梨に根差したチームで、J2参加の頃から応援しています。やっぱり地元のスポーツチームが強くないと、地域が盛り上がらないじゃないですか。ですから金精軒も資金的なサポートはもちろん、チームとコラボした「ヴァンフォーレ信玄餅」を発売したり、チームのイベントで弊社のお菓子を提供するなど、私たちができる形で積極的に支援をしています。

中込直樹:金精軒の看板商品としてSNSでも評判となった賞味期限わずか30分という「水信玄餅」があります。この商品はどのようにして誕生したのでしょうか。

小野氏:最初、「水信玄餅」はイベントの企画商品として販売したんです。水が形を保てるギリギリの寒天量を調整して、「水を食べる」様にしてみたら!? との考えから誕生した商品です。「水信玄餅」という商品名はお客様のアンケートから、金精軒の商標である「信玄餅」と南アルプスの天然水から発想を得て名付けました。
わずか30分の賞味期限と白州の名水から生み出される透明な水信玄餅のビジュアルはSNSでも大変な評判となり、「行列のできるグルメ」でも取り上げられ日本一を獲得しました。コロナ禍前は朝5時から並ぶお客様もいらっしゃいましたが、現在は混雑を避けるため、ご予約による持ち帰りで販売をしています。

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中込直樹:なるほど、コロナ対策を取りながら、お客様に美味しい和菓子を届ける工夫をされているのですね。金精軒さんはいち早く世界最先端の冷凍システムCASを導入するなど、手作りの美味しさを保つ技術にも力を入れています。今後の新商品のアイデアがありましたら教えてください。

小野氏:現在、約3,000坪の新工場建設の計画を進めています。ここが完成後は、さらに新商品の開発に力を入れていこうと考えています。何といっても山梨はフルーツ王国なので、豊富な果物を生かした商品開発をしていきたいですね。

中込直樹:香港を始め、中華圏では日本の和菓子が大変に人気があり、日本の和菓子メーカーも現地に出店をしています。金精軒も今後、海外への進出をお考えですか。

小野氏:現在、海外への直接の出店計画はありませんが、外国の方々には日本に来ていだだき、ここだけのスイーツをここで召し上がって頂く。日本の文化は日本でこそ味わえる、と考えています。
今年、金精軒は富士吉田市の新倉山浅間公園・忠霊塔に新しい店舗を開店する予定です。ここは富士山と桜と五重塔が眺められ、アジアの観光客の方にも大変に人気のあるスポットです。これからインバウンドも復活した時には、ぜひとも海外の方にも足を運んでいただき、ゆったりとした空間で、富士山を眺めながら水信玄餅を味わっていただきたいですね。


スクリーンショット (1442)小野光一氏
(金精軒製菓株式会社 代表取締役)
1953年生まれ、山梨県出身。駒沢大学卒。1976年に山梨県北杜市に本店を構える金精軒製菓株式会社入社。1983年に代表取締役に就任する。SNSでも話題の「水信玄餅」、地元の酒蔵とコラボした「大吟醸粕てら」などの新商品を生み出す。同社は山梨のJ2チーム「ヴァンフォーレ甲府」の公式スポンサーでもある。

 

スクリーンショット (1444)中込直樹(なかごみなおき)
Wing Fat International Creative Ltd(ウィングファットインターナショナル)代表取締役。製造拠点(中国、ベトナム)を中心にキャラクターライセンスを使用したマーケティング、企画製造を手掛ける傍ら、中国向け商品ブランディング、プロモーションを支援するDream Creation(ドリームクリエイション)を創業。多方面で活躍中。コーポレートメッセージは「日中を夢中に!」山梨県南アルプス市出身。

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