尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.46

2021/06/16

不正競争防止法における営業秘密の保護

 中国のライバル会社の技術秘密情報が記載されたファイルを買わないかと持ちかけられ、ファイルを持ち込んだのは当該ライバル会社の管理職のため会社の守秘義務に違反していることが明らかである場合、このファイルを買い取ることは違法なのでしょうか。

 営業秘密侵害行為があることを知っていた、又は知ることができた状況で、技術秘密情報が記載されたファイルを入手すれば、営業秘密侵害行為になります。

 不正競争防止法上の営業秘密とは、公知ではなく、商業価値を有し、かつ権利者が相応の秘密保持措置を講じた技術情報、経営情報等の営業(商業)情報をいいます。

 また、以下の行為は営業秘密侵害行為として禁止されています。

①窃盗、賄賂、詐欺、脅迫、電子侵入又はその他の不正手段により、権利者の営業秘密を取得すること
②前項の手段により入手した権利者の営業秘密を開示し、使用し、又は他人に使用させること
③秘密保持義務に違反し、又は権利者の営業秘密保持の要求に違反して、その保有(把握)している営業秘密を開示し、使用し、又は他人に使用させること
④秘密保持義務に違反するように他人を教唆、誘引、幇助し、又は権利者の営業秘密保持に関する要求に違反し、権利者の商業秘密を取得、開示、使用し又は他人に使用させること

 経営者以外の他の自然人、法人及び非法人組織が上記の違法行為を行った場合、営業秘密侵害行為とみなされます。また、第三者が、営業秘密権利者の従業員、元従業員又はその他の単位、個人が上記の違法行為を行っていることを明らかに知っており、又は知るべきであったにもかかわらず、依然として当該営業秘密を取得、開示、使用し、又は他人に使用させる場合も営業秘密侵害行為とみなされます。

 なお、営業秘密侵害行為によって権利者が損害を受けた場合、損害賠償請求の対象となります。損害賠償金額は、権利侵害によって受けた実際損失に基づいて確定します。実際損失を計算することが難しい場合、権利侵害者が権利侵害によって得た利益に基づいて確定します。権利侵害者が悪意的に営業秘密の侵害行為を実施し、情状が重大である場合、上記の方法により確定した金額の1倍以上5倍以下の範囲で損害賠償金額を確定することができます。損害賠償金額には、権利者が権利侵害行為を制止するために支払った合理的な費用(例えば調査費用や弁護士費用など)が含まれます。

 権利者が権利侵害行為によって受けた実際損失、権利侵害者が権利侵害行為によって得た利益を確定することが難しい場合、人民法院は権利侵害行為の情状に基づいて権利者に対して500万元以下の賠償をするよう判決することができます。

 また、行政責任として、監督監査部門(工商行政管理部門)が違法行為の停止を命じ、違法所得を没収し、情状によっては10万元以上500万元以下の過料に処することができます。

 


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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