2分で読める武士道 第27回「生きてくことが辛いなら」

2022/09/21

2分で読める武士道

世界中で注目されている日本人特有の性格や行動の数々。
それらの由来は武士道精神にあった。
しかし、肝心の日本人にその武士道精神が浸透していないのが日本の現状である。

筆者が外国生活を通して感じた日本人の違和感を「武士道」や「葉隠」などの武士道関連文献をもとに紐解いていく。

 

 

 第27回 生きてくことが辛いなら… 

人生というものは、死に身をすり寄せないと、そのほんとうの力も人間の生の粘り強さも、示すことができないという仕組みになっている。ちょうど、ダイヤモンドのかたさをためすには、合成された硬いルビーかサファイアとすり合わさなければ、ダイヤモンドであることが証明されないように、生のかたさをためすには、死のかたさにぶつからなければ証明されないのかもしれない。死によって、たちまち傷ついて割れてしまうような生はただのガラスにすぎないのかもしれない。
(三島由紀夫「若きサムライのために」文春文庫)

危機や不幸というものは、私たちの誰にでもある日突然降りかかってくるものである。究極なもので言えばそれは死であり、日常茶飯事的なものに目を向けてみればそれは家のこと、仕事のこと、人間関係などすぐに解決できるものから自分の力だけではどうしようもないものまで絶え間なく次から次へとやってくる。

そして、それらの苦難を一つ一つ乗り越えた時に初めて、私たちは成長し、精神的に強くなる。しかし、残念ながらそれらの苦難は必ずしも乗り越えられるものばかりではない。安倍元首相が銃撃を受けてそのまま帰らぬ人となった例もあるように、時に人生は私たちに対して大変残酷で辛い結末を強いることがある。

 

また面白いことに(実際のシチュエーションでは微塵も面白くないのだが)、物事がうまくいかないときは本当に何をやってもうまくいかない。そんな時は本当に泣きたくなるし、食事も喉を通らないし、夜寝る時の孤独さと朝起きた時の倦怠感は全ての物事に対するやる気をごっそりと失わせる。

では、このように不幸、不運が重なったとき、そしてその負のスパイラルから抜け出せないとき、私たちはどのようなマインドセット(考え方)を持てばいいのかとふと考えてみた。

 

Greatness will come to you soon(素晴らしいことはそのうちに起こる)
これは私の個人的な意見だが、明るい未来が来ることをひたすら祈るしかないように思う。

たとえば仕事の場合、プロジェクトの規模や目標が大きければ大きいほど達成するには時間も労力もかかる。達成するには月単位ではなく、年単位かかるかもしれない。いや、もしかしたら成功しないかもしれない。しかし、時間は待ってくれはしない、毎日一歩ずつ前に進むしかないのである。当然、途中で妥協したくもなるし、諦めたくもなるし、会社自体を辞めたくもなる。このことは子育てにも当てはまるだろう。

それでも、日々、辛い思いをしながら私たちが仕事や子育てに励んだり、トレーニングを重ねたりするのはやはり心のどこかで明るい未来を期待しているからに違いない。ただ、いつその明るい未来とやらがやってくるのかは誰にも分からないし、一個人の短い人生の中ではもしかしたらやってこないかもしれない。

 

1% better everyday(毎日1%改善していく)
負の連鎖にはまり「もうどうすればいいか分からない…」と思ったときは、昨日より1つだけ良いことをしようと心掛けることが必要かもしれない。それを毎日繰り返せば一年で大きな改善を見込める計算になる。一見、先の見えない負の連鎖に対しては小さな成功の積み重ねで太刀打ちするしかないのだ。

 

Think globally, Act locally(大きく考えて、小さく動く)
まずはGreatness(素晴らしいこと)は必ずやってくると信じてやまないこと。そして目標は大きく、でも行動は足元を見ながら慎重に、決して欲張らないこと。成果が何もない日だって必ずある。今日の10個の失敗よりも今日の1個の成功により目を向けられるようになれば、運もだんだんと自分の味方をし始めるのではないだろうか。

 

私も今年に入ってから仕事のことと家庭のことで踏ん張りどころが続いている。当初の予定では夏過ぎにはそれぞれが良い方向へ向かうはずだったのだが、そうは問屋がおろしてくれなかった。依然として白紙状態、足踏み状態が続くが、やるべきことはただ一つ。踏ん張った分だけより大きな成果があると、Greatnessは必ずやって来ると信じて今日も前を向くこと、これに尽きる。


profile筆者プロフィール

宮坂 龍一(みやさか りゅういち)
東京都出身。暁星高校、筑波大学体育学群卒業。
香港の会社、人事、芸能、恋愛事情にうるさい。

 

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