湿疹のタイプで変わる漢方薬処方 周漢方医のアドバイス

2015/08/03

(原著:漢方医 周正峰)

香港の夏は気温が上がり湿度も高くなる。炎天下の屋外と空調の効いた屋内との出入りを繰り返すことが多くなる。外で汗を大量にかいたかと思えば、次の瞬間には急に汗がひいてゆく。この季節、多くの人が湿疹、手足や全身に出るあせもに悩まされる。強いかゆみを伴うため、爪などで発疹をか壊して出血、かさぶたができてしまう。湿疹の症状についてはなんとなく知っていても、その原因はあいまいな場合が多い。多くの人はこれが皮膚科の疾患だと誤解しているが、実はこうした湿疹は内科の疾患、つまり免疫機能低下によって引き起こされる疾患である場合が多い。「乾癬」や「風疹」と症状は異なるが、免疫力の低下がまねく疾患という点では似ている。湿疹には3つのタイプがある。
湿疹どうする?1)急性湿疹:
「湿盛熱重」、つまり体内にたまり過ぎた不要な「水」と「熱」が不調を起こしている状態。発疹の形状は様々で対称的に現れる。赤み、丘疹、水疱が同時に現れることが多い。治療は「清熱利湿」、つまり余分な「水」と「熱」を排出すること。漢方の内服薬なら、土茯苓(ドブクリョウ)、扁豆衣(インゲン豆の皮)、茵陳(インチン)、蒼朮(ソウジュツ)、沢瀉(オモダカ)を使用。
2)亜急性湿疹:
「脾虚湿蘊」、つまり取り入れた飲食物を上手にエネルギーに変換できない状態。急性の状態では水疱と滲出液が減少もしくは消え失せ、赤みの色が暗くなる。残った丘疹や丘疱疹やただれには鱗屑やかさぶたが見られる。治療は「健脾化湿」、つまり消化器系の機能を健全な状態に戻し、余分な「水」を除去する。漢方薬は、党参(トウジン)、茯苓(ブクリョウ)、白朮(ビャクジュツ)、厚朴(コウボク)、猪苓(チョレイ)、准山(ワイサン)を使用。
3)慢性湿疹:
「血虚風燥」、つまり血の働きが不足している状態。肌が荒れて、角質が厚くなる。ふやけやすくなり、色素沈着がおこる。角質の厚い部分ではかき跡が残り、かさぶた、時には小さな丘疹や丘疱疹が現われ所々で滲出液がにじみ、かゆみが強くなる。特に夜間に症状が出やすい。治療は「祛風養血」、つまり皮膚のかゆみを取り除き、血の働きを健全にする。漢方薬は、当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、白芍(ビャクシャク)、熟地黄(ジュクジオウ)、亀板(キバン)、丹参(タンジン)などを使用。
治療期間中は、エビ・カニ、鶏、冷凍品、揚げ物、辛い物、漢方で「湿熱」に属する食品などを控える必要がある。薄味の食事にしてしっかりと栄養を取り入れよう。

香港大学 周
周正峰教授
香港大学専業進修学院中医学系卒業、北京中医薬大学学士号と米国経営管理修士号を有する。現在は香港中医薬管理委員会登録漢方医、香港中医研究院教授、香港気功協会会長を務める。

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