香港在住日本人主婦が綴るリレーミニエッセイ Vol.153

2020/05/06

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スパイが暗躍する香港アナザーサイド小説

 こんにちは、KOKURIです。読書が趣味と言っても、好きなジャンルは人ぞれぞれですよね。私にとって、つい食べてしまうポテチのような存在は推理小説。中学生で本格推理にハマって以来、ハードボイルドに寄り道し、最近は推理ものの従兄的存在であるスパイ小説に挑戦中。でもスパイ小説は世界史や海外情勢に疎いと読みこなせないので、読破できないこともあるのですが…。というわけで、今回は香港が舞台のスパイ小説をご紹介します。

 

香港返還の裏に隠された幻の機密文書を追え!
服部真澄『龍の契り』
 なぜイギリスは当初の姿勢を変え、香港を無条件で中国に返還したのか?英中交渉のジョーカーともいうべき機密文書の存在をめぐり、返還前夜の香港を舞台に、米・英・中・日が争奪戦を繰り広げる本作。「国際知略エンターテインメント」と銘打たれているだけあって、蘊蓄満載ながらアクションシーンもあり、ぐいぐい読めます。英国諜報部やCIA、日本の外交官、アジア系ハリウッド女優に、香港の裏社会を牛耳る凄腕ハッカーなど、盛りだくさんの登場人物たちが、香港に引き寄せられ、互いの真意を隠しながら、かつて英中で交わされた密約の証拠を追います。深水埗の路地裏にハイテク企業が隠れていたり、上海香港銀行(HSBC?)から「ミッション・インポッシブル」さながらの計画で秘密のファイルを盗んだり、香港在住日本人へのサービス満点(笑)。東洋と西洋の狭間にある香港の複雑さと魅力を、劇画調のスケール感で味わわせてくれる作品です。

 

英国情報部vs.モスクワのスパイ戦争 第二幕の舞台は香港!
ジョン・ル・カレ『スクールボーイ閣下』
 スパイ小説の大御所といえばジョン・ル・カレ。でも文章が重くて読みにくいことでも有名です…。英国情報部のスマイリーと、ソ連諜報部の指揮官カーラとの戦いを描く「スマイリー三部作」は、第2作の舞台が香港!70年代のリアル香港が体感できます(そのせいか意外と読みやすかった)。シリーズ第1作で、潜入スパイによって壊滅的な打撃を受けたスマイリーたちが、今作では反撃に出ます。カーラにまつわる情報を洗い出すうちに、欧州から東南アジアへ続く謎の送金ルートが浮かび上がり、その裏には香港の実業家ドレイク・コウの存在が…。スマイリーの命を受けて香港に派遣された工作員ジェリーは、ドレイクの愛人リジーに近づきます。ドレイクの秘密が明らかになり、作戦が動き出した時、裏社会に絡めとられていくリジーを救いたいジェリーは単独行動を始め、事態は混乱。スマイリーは大局を見失うまいと苦闘しますが…。クライマックスは香港最南端の島「蒲台(ポートイ)島」。ジャンク船が集まる天后節の祭りが幻想的です。スマイリーは宿敵カーラに一矢報いるものの、結末にはほろ苦さが残ります

 

 

「眠れる獅子は、いま、目覚めようとしている。中国の目覚め方によっては、新しい東洋の時代が拓ける。場合によっては、いつかアメリカよりも強い国になる。そのとき、日本は、そしてアジアは_?」『龍の契り』
香港の秋葉原「深水埗」にある「黄金電脳商場」。その路地裏に、謎めいた美青年ハッカーが率いる巨大ハイテク企業があるという。この九龍の下町から、香港島のハイソなエリアにある銀行をハッキングするのだと思うと、香港らしくてワクワクします。

香港の秋葉原「深水埗」にある「黄金電脳商場」。その路地裏に、謎めいた美青年ハッカーが率いる巨大ハイテク企業があるという。この九龍の下町から、香港島のハイソなエリアにある銀行をハッキングするのだと思うと、香港らしくてワクワクします。

 

 

「ハッピー・ヴァレー競馬場の芝は、おそらく世界一貴重な芝だろう。ほとんどないといっていい。日ざしと人の足でこちこちに固められた、ロンドンの市営遊園地のようなもののふちを、細い走路が巻いている。」『スクールボーイ閣下』

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実業家ドレイク・コウが、競馬場の反対側にある墓地を訪れた後、金髪の美女リジーが運転する真っ赤なジャガーに乗り込む場面は印象的に描かれます。右の写真は競馬場入口の向かい側にある墓地入口。リジーの車はこのあたりでドレイクを拾ったのかも。

実業家ドレイク・コウが、競馬場の反対側にある墓地を訪れた後、金髪の美女リジーが運転する真っ赤なジャガーに乗り込む場面は印象的に描かれます。右の写真は競馬場入口の向かい側にある墓地入口。リジーの車はこのあたりでドレイクを拾ったのかも。

 

 

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KOKURIKOKURI(コクリ)のプロフィール

夫の異動のため、この10年で引越しは4回。書斎を持つ夢を捨て、現在の読書は電子書籍が中心。荷造りも面倒なので、ミニマリストになるべく修行中。

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