香港サッカー 香港プレミアリーグも残すところ数節
今季から始まった香港プレミアリーグも、残すところ数節。プレミアリーグに名を変えての初代王者も、近年は他を圧倒する戦力を有し、FCバルセロナ流のメソッドを導入する傑志(キッチー)が、最も近い場所にいる。
この傑志というチームは1931年に創設されて、長らく香港のトップリーグを戦い、近年はリーグとカップ戦のタイトルを総なめにする程の強豪となったが、バルサ流を導入する以前は、ごく普通の香港ローカルチームのひとつに過ぎなかった。
ユニフォームの供給を受けるナイキの後押しもあり、世界のサッカーをリードしていたスペインとの交流を図った事をきっかけに、指導陣と助っ人外国人選手をスペイン人で固め、また香港代表クラスの有力選手と中国出身のスキルの高い選手を招いた。その結果、アジアの大会でも頂点を目指す事のできるチームに成長した。
もうひとつの強豪である南華(サウスチャイナ)と共に、傑志は香港の強豪チームとしてアジアでは名の通る存在となった。注目度の低い香港の中だけで戦っていても、チームの存在を知らしめるには難しい、という事だろう。
初年度の香港プレミアリーグには9つのチームが参戦している。プレミアリーグ発足に伴い、チームの完全プロ化が義務付けられた結果、いくつかが審査に漏れ、いくつかが参戦を拒否した。
その中で1958年のチーム創設以来、下部リーグへの参戦からのトップリーグ昇格を果たし、途中下部リーグへの降格の憂き目に遭いながらも、好調時はリーグとカップ戦のタイトルを獲得した事もある、叩き上げのローカルチームを紹介したい。
その名は「香港流浪足球會」。流浪ともレンジャーズとも呼ばれている。近年チームにタイトルスポンサーを迎え入れ、今季のリーグ登録名称は、標準流浪(BCレンジャーズ)となっているチームだ。
レンジャーズを名乗るチームは世界中に点在しており、このチームもスコットランドの名門、グラスゴー・レンジャーズを模している。香港在留のスコットランド人がチームを興し、創設当時は、アジアではまだ珍しい近代的な市民チームを運営する事で名を馳せていたらしい。
その後、現在までの30余年に渡り、チーム運営に携わる香港人経営者が引き継ぎ、近年は複数の企業を経営する資本家の協力を得て、香港プレミアリーグの初年度に名を連ねるまでになった。
香港のサッカー事情を多少知っている人は、流浪については一定の認識を持っていると思われる。他のチームと比較すると、雇用契約した指導者や選手に冷たく、結果が伴わなければ簡単に解雇する。特にローカル選手の給料が低く、手はあまり流浪には居たがらない、など。
端から見たり、他のチームからの目線で論じた場合、確かに間違ってはいない認識と言える。しかし筆者は、数年前からこのチームと近しい関係となり、交流を図ってきた事で、内情を理解している。
まず、このチームは典型的な選手育成型の組織を保持しているため、香港の有望な若い選手たちが集い、一定の経験を積んだ段階で他のチームに放出するサイクルが確立されている、と言う事。
また、香港のトップリーグを低予算で継続的に戦い続ける術として、一定の勝ち点を確実に上げる為の独特の指導体制を敷いているため、馴染めない指導者や外国人選手にも、割と早いサイクルが存在している、ということ。
今季の香港プレミアリーグのユニフォーム・サプライヤーは、アディダスが4チーム、ナイキが4チーム。残る1チームだけが中国メーカーを採用している。それが流浪でもある。流浪はこの分野でも独歩の構えだ。
香港プレミアリーグに、流浪(レンジャーズ)というチームが参戦している事を覚えて頂きたい。筆者はこのチームからの要請には、最大限の対応を惜しまないつもりでいる。
≪つづく≫
文/池田宣雄(香港サッカー協会 賛助会員)
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