ホンハム(紅磡)特集1・紅磡の歴史と気になる周辺スポット・雰囲気をつかむ動画集
埋め立て地とドック跡地に誕生スタイリッシュな住宅街と下町らしい活気が混在する町
かつてホンハムは半島と海だった
ホンハム(紅磡)は、九龍島の東南部に位置する。南側にはビクトリアハーバー、東側にはカオルーンベイ(九龍湾)が広がる。ビクトリアハーバーを隔てた向こう側に、香港島のノースポイント(北角)とフォートレスヒル(炮台山)を望む。2つの海と、ホンハム駅の西側を通るホンチョンロード、チャッタムロード北通り、ファッコンストリートで囲まれた界隈がホンハムと呼ばれるエリアとなっている。
今、ホンハムと呼ばれているエリアは、1880年代、「大環」と呼ばれる岬のような小さな半島と、ホンハム湾があるところだった。1884年に、香港政府がホンハム湾の埋め立てを開始。その後、造船所(ドック)が設けられ、「ホンハム(紅磡)」と地区名が改められた。また、初期のホンハムでは、造船業のほか、セメント業も盛んだった。やがて、政府の埋め立てにより、ホンハム湾は消失し、現在のホンハムエリアが誕生した。
地名の由来には諸説あり
ホンハム(紅磡)の地名の由来については諸説ある。1909年、埋め立て工事中に、建設作業員が杭を打ち込んだとき、井戸から赤い水が湧き出した。この時、風水師は「龍脈」を傷つけたためで、龍の血が流れているのだと咎めたという。この赤い井戸水が、ホンハムの由来になっているといわれているが信憑性は低いといわれている。400年以上前の地域の史実を記録した本に、このエリアが「赤磡村」と呼ばれていたと記録されているためだ。別な説によると、香港島からこのエリアを望むと、海辺には赤い岩が目立ったため、この湾を「ホンハム(紅磡)」と呼んだといわれている。
ドックや発電所跡地が高級マンションに
埋立地やドック跡地、セメント工場に電力を供給していた発電所跡地は、大規模開発により、ショッピング街や高級マンションに生まれ変わった。
現在、ホンハムエリアの中心となっているワンポア・ガーデン(黃埔花園)は、ドック跡地に建つ。スーパーやレストラン、教育施設などを備えた住宅地として、1985年から1991年に整備された。88棟の居住地区には約4万人が住み、香港の大型開発のひとつに数えられている。また、そのシンボルともなっているのが船の形をしたワンポア号(黃埔号)。ドックの跡地だったことを記念して建てられた施設で、ショッピングとグルメの拠点となっている。
発電所の跡地には、大型高級マンション「ラグナ・ヴェルデ(海逸豪園)」が建設された。工事は5期にわたって行われ、1998年から2000年始めにかけて順次竣工。ヨーロッパ建築様式を取り入れ、公園やプールを備えたマンションは、日本人にも人気が高い。
ホンハムロードを渡ると風景は一変
ワンポア・ガーデンのあるエリアから、ホンハムロードを渡って徳民街へ。その周辺の風景は一変する。色鮮やかなフルーツが並ぶ果物店、鳥やぶつ切りにした豚の胴体をぶら下げたレストラン、ミニ寺院などがありローカル食満載。周辺の道はまるで迷路のよう。海沿いには散策道が設けられており、子どもを遊ばせたり、散歩やジョギングをする人たちで賑わう。
MTRで沙田から中環までを結ぶ【沙中線】も紅磡駅を通る
現在、新界シャーティン(沙田)と香港島を結ぶ香港MTRの路線「沙田至中環線」の建設が進められている。第一期は、ホンハムとタイワイ(大囲)を結ぶ路線、第二期は、ホンハムとアドミラルティ(金鐘)を結ぶ路線で、第一期路線内の大囲 – 啓徳間は2020年2月14日に開業した。第一期の残りと第二期路線も着々に工事が進んでいる。このMTRの開通によって、ホンハムはさらなる発展が期待されている。
気になる周辺スポットをご紹介!
オーガニック店や海鮮レストランも!
紅磡街市
庶民の台所、街市(ガイシ)。地上階は新鮮な魚や野菜、1階は肉を中心に乾物や洋服、日用品まで勢揃い。野菜売り場には有機野菜を売る店もあり、地元産のオーガニック食材のほか沖縄のゴーヤーやオランダのトマトなども並ぶ。目印は農家のおじさんの絵が書かれた「好農夫」マーク。スーパーの有機野菜よりも比較的安く手に入るので嬉しいかぎり。魚屋では内臓処理などもしてくれるが、3枚におろす文化がないので頼むとぶつ切りにされたなんて話も…。さらに2階には熟食と
呼ばれる広いフードコートが。新鮮な食材を使った海鮮料理店などが両端にずらっと並んでおり、活気あるなかで新鮮な料理を安く味わうことができる。夜中まで営業しているので、アルコール好きの方にもおすすめ。
住所:Hung Hom Municipal Services Bldg., 11 Ma Tau Wai Rd., Hung Hom 【MAP 8】
時間:6:00~20:00(市場)/6:00~26:00(フードコート)
お金儲けの神様!
紅磡観音廟
1873年に建設され、今では香港一級建築物に指定されている歴史のあるお寺「觀音廟」。旧暦1月26日の観音開庫の日(観音様が庶民にお金を貸してくれる日)には、前日から並ぶ人も含め、数千人規模の列ができる。皆のお目当てはくじ引き。引いた紙に「六億」など金額が書かれており、そのお金があなたの手元に入りますよということらしい。しかしなかにはありがたい言葉だけが書かれている紙もあり、それはいわゆるハズレなのだそう。借りたものは返すということで、翌年の観音開庫までにお礼参りに行き、いくら返すかを紙に書いて納めなければいけない。普段からも参拝客が跡を絶たず、一攫千金、商売繁盛を願う人のために様々なお守りや開運グッズが売られている。なお、寺内は撮影禁止となっている為注意。
住所:Station Lane, Hung Hom 【MAP 5】
時間:8:00~17:45
時代を感じる建物で現代アートを楽しむ
土瓜湾 牛棚芸術村 Cattle Depot Artist Village
紅磡を少し北に土瓜湾の方に足を伸ばしてみよう。以前カイタック(啓徳)空港があった場所にほど近い馬頭角(マータウコック)には、1908年から1999年まで家畜検疫所として使われていた建物が残る。そこは2001年に香港の芸術家たちにより修復され「牛棚芸術村」へと生まれ変わった。1.7ヘクタールの敷地には西洋建築の要素を取り入れた赤レンガの建物が5棟並んでおり、飼料小屋、事務所、3棟の家畜小屋などがあり大変広いものであった。第一次世界大戦前の建造物として歴史的な価値も高く、2009年からは香港政府によって「第二級歴史建築」に指定されている。当時の名残を残す独特な雰囲気の芸術村には、20ほどのアートグループがあり、芸術家のアトリエ、イベントが行われる小さな会場も用意されている。外観の赤レンガはまさに当時のまま、牛をつないでいた鉄製リング、水飲み場なども残っている。また一歩中に入ると、現代のアートを感じることができ、新しい感覚で芸術を楽しむ事ができるだろう。
住所:63 Ma Tau Kok Rd., Kowloon 【MAP 欄外】
電話:(852) 2987-5997
時間:07:00~22:00
ウェブ:www.lcsd.gov.hk/en/parks/cdap/index.htm
紅磡・レトロな映画館
寶石戲院 Lux Theatre
相当年季の入ったビルのグランドフロアに位置し、1970年代より営業している知る人ぞ知る映画館。およそ映画館らしかぬ外観の為、注意しなければ素通りしてしまうだろう。香港と言えば“香港映画”を思い浮かべる人も少なくないはず、伝統ある庶民の大切な娯楽だ。しかしながら何年にも渡り、この映画館は多くのビジネス危機に直面してきた。市況の悪さからやむを得ず再建、元々の座席数は400席以上減らされ、一時期間は成人映画を上映することに専念するなどを経て、今現在に至る。開店当初に使われていたノスタルジックな機材や受付などの道具が展示されており、時代を感じさせる。スクリーンは一つだけのため、上映できる映画は1日1本、5回上映。内容は2週間毎に変わるようだ。料金も他と比べ格安のため、気軽に寄ることができる。
住所:2J Bulkeley St., Hung Hom 【MAP 3】
電話:2365 7116
Facebook:寶石戲院 LUX Theatre
宋王朝最終年建設の廟
紅磡 福德古廟
宋王朝の最後の年(1297年)に建てられた福德古廟は、街中の雰囲気から見ると非常に奇妙な存在だ。Bulkeley通りに在し、マンションや数々の店に囲まれ現在の香港の顔をしている中で、そこだけ歴史が切り取られ現存しているかのような絵。着いたらすぐに線香に火を付け、お参りすることが可能なほどコンパクト。現存の祠のサイズが小さいにもかかわらず、長い間人々が熱心にお参りするのは、紅磡の守護聖人[福徳老爺]が祀られているからだ。1944年、紅磡の観音廟の傍にあった義学会は、連合国によって偶然に爆撃され多くの児童が命を失い、観音廟も打撃を受けた。が、福德古廟はまったく損傷を受けなかった。その後、親族が亡くなった学生の遺灰を福德祠の隣に設置し、墓地としても利用された。戦後、古神殿跡地が再建された後、黄埔地区が開拓され、開発者から移転を要請されたが、近隣の住民が反対抗議し、福德祠は残された。毎年、農歴3月29日にお祭りが開かれる。また、廟の中には地球の神を表す石が崇拝されている。
住所:Bulkeley St., Hung Hom
紙紮ってなあに?それは故人への贈り物
ホンハム(紅磡)駅のコンコースから、ギリィースアベニュー南通りへ。10分ほど歩くと、左手に「紙紮(ジージャッ)」と呼ばれる紙の装飾品を扱う店が軒を連ねる一角がある[MAP 9]。店頭には紙で作った洋服や食べ物、車などが並べられており、店内にも所狭しと紙製品が飾られている。
紙紮は、東アジアの伝統的な宗教儀式で使われるお供え物。祖先の冥福を祈って、必要な品物を燃やして、あの世に送るために使われているのだそう。なので、竹ひごと紙で作った家をはじめ、マッサージチェア、パソコン、携帯電話、飲茶、動物など、日常生活にあるものは何でも揃っている。故人の好きなものをオーダーメイドで作ることもできる。
1軒の紙紮店に話を伺った。この店はここに店を構えて15年以上になる。父親が納棺師だったので、一緒にやったほうが便利ということで紙紮店を始めた。紙紮は自分の店で作っておらず、中国から仕入れている。今、香港では中国から輸入している店がほとんだそうだ。また、最近は不景気で、みんなが買うものを抑えていると嘆く。これまでに一番面白かったのは「カジノを作ってほしい」というオーダーだという。カジノをあの世に送ってあげたとき、喜んでいる故人の顔が浮かんできそうだ。
このエリアには、大きな葬儀社が3軒ある。そのため、この周辺には、紙紮屋のほか、葬儀用の花を扱う生花店、棺桶屋も集まっている。ちなみに、葬儀は親戚や友達が一堂に会し、待ち時間は宴会の様相となる。その雰囲気はホテル(酒店)で行われる宴会に似ていることから、葬儀社は別名「大酒店」と呼ばれているそうだ。
ホンハムの雰囲気を動画で紹介!
MTRホンハム駅から街の中心地までは、香港体育館を右手に歩道橋を渡り、フォーチュン・メトロポリス(置富都會)【MAP 1】の中を抜けて行こう。ここには日系レストランや日本人向け学習塾などがいくつもあり、日本人が多く住むエリアであることが伺える。モールの中を左手に進み、最奥のエスカレーターを降りて再度外の歩道橋を渡ると、さあここがホンハムだ。
いざホンハム探検に出発~!
歩道橋を降りてすぐの場所に、香港では元祖と言われる有名ハンバーガーショップ「時新快餐店」があった。こんな場所の、こんな見た目で人気なの!?と疑いたくなるほどローカル色の強いバーガー店。創業は何と1960年で、店構えとは裏腹に、味は一級だ。現在は創業兄弟の兄とその息子とが【SSHKB1963 BURGER】という名前で、弟が【時新漢堡包】というそれぞれ新店を営業している。
ディープな地元民のエリアで最新をチェック
いきなり腹ごしらえから始めたが、ホンハム散策を再開しよう。ホンハムは葬儀場が多いため、街の西側、機利士南路付近には供花を作る花屋など、葬式に関わるありとあらゆる店が並んでいる。花を横目に、今度は東へ。寶其利街、徳民街一帯は、活気溢れる庶民のエリア。1970年代から続く旧式映画館「寶石戲院」[MAP 3]は、座席予約も紙に赤ペンでチェックするだけというアナログスタイル。3D映画も上映しており、一般的な映画館に比べて安く観ることができるのも嬉しい。
日本人も大好きな「陸上の船」から海岸沿いへ・・・
この辺りは美味しそうなB級グルメ店が軒を連ねており、またしても食の誘惑が…。そろそろスイーツでも食べようと立ち寄ったのは、徳民街にあるソフトクリーム店【MAP 4】。周りの雰囲気とは違ったモダンな店内では、今韓国で話題のハチの巣ソフトクリームが売られている。ハチの巣がそのまま入った濃厚なアイスは絶品で、暑い時期にはたまらない。また、周辺には歴史ある観音寺「觀音廟」【MAP 5】や、安い食材が手に入る「街市」など、地元民に愛されるスポットが数多い。
元気が出たところで再び歩き始めよう。さらに北に進んだところにある民楽街や民裕街には、観光客向けの宝石店や土産物店が並んでいる。海に向けて歩くと、日系店が多く入店するワンポア・ガーデン(黃埔花園)があり、その先には、ホンハムの象徴、船の形をした日系スーパー「AEON」【MAP 6】が見えてくる。ゴールはホンハム埠頭。大きなバスロータリーの奥にノースポイント(北角)」行きのフェリー乗り場があり、その周りには釣り人がちらほら。
週末になると昼間からビールを片手にのんびりと釣りを楽しむ地元民もいる。歩き回ったあとは、海岸沿いのバー 【MAP 7】に立ち寄って向こう岸の香港島を眺めながらビールで締めるというのはいかが?
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