尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.18

2020/04/01

中国の土地制度の概要

土地の所有権

 土地の所有権中国では、個人や企業が土地の所有権を取得することができるのでしょうか。

 中国では、社会主義の理念に基づき、土地は公有制が採られています。具体的には、土地は国家、又は農民集団が所有します。

 国家所有の土地は、主として都市の市街区域の土地です。農民集団所有の土地は、基本的に農村の土地と都市の郊外地域の土地です。

P22 Business_shenxiulaw 734土地の使用権

 このように中国では、個人や企業は土地の所有権を取得することができないのです。そのため、土地を使用する企業は、土地使用権を取得することになります。土地使用権には、「払下(出譲)使用権」と「割当(划拨)使用権」の2種類があります。

 割当使用権は、一定の公益目的の場合にのみ取得が認められるものです。そのため、設定費用は無償ですが、譲渡、賃貸、担保設定が基本的にできないとされてきた経緯があります。また、払下使用権に比べ公共収用のリスクが高いです。日本企業の子会社などがビジネスに用いるのは、現在は概ね払下使用権です。

土地の用途制限

 中国の土地については、用途制限制度が採られています。すなわち、用途ごとに農業用地、建設用地、未利用地に分かれています。これは、建設用地の総量を規制し、耕地を保護することを目的としています。そのため、農業用地を建設用地に転用する場合、審査認可手続を経る必要があります。

農民集団所有土地

 農民集団所有の土地は、集団経営性建設用地の使用権を取得した場合を除き、土地使用権の払下、譲渡、または賃貸などの方法を通じて「農業以外の建設(非農業建設)」に使用することはできません。つまり、農民集団から土地を賃借して工場を建てることなどはできないのです。

 実際にこの規制に反し、農民集団から土地を借りて工場を建設した事案も見られます。この場合、後に土地使用権が否定され大きなトラブルになる可能性があります。農民集団所有土地を使用する必要性がある場合には、法定の手続が必要です。具体的には、払下などの方法により集団経営性建設用地の使用権を取得するか、又は収用により国有土地に変更した後、国有土地使用権の払下手続を経ることになります。

土地の収用

 中国の土地収用の種類については、集団所有土地に対する収用と国家所有の都市の土地使用権に対する収用との二種類に分けることができます

 


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Profile Photo尹秀鍾 Yin Xiuzhong
慶應義塾大学法学(商法)博士。東京と北京の大手渉外法律事務所での執務経験を経て、2014年に深センで広東深秀律師事務所を開設。2020年春に広東卓建律師事務所深セン本部にパートナーとして加入。華南地域の外国系企業を中心に幅広い法務サービスを提供。主な業務領域は、外商投資、M&A、労働法務、事業再編と撤退、模倣品対策、紛争解決など。

 

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