中国法律コラム 20「出産期間満了後の女子従業員の休暇申請について」広東盛唐法律事務所

2017/08/24

今回のコラムでも、クライアントから問い合わせの あった興味深い問題について、ご紹介させていただきます。弊所のクライアントの女子従業員は、出産後も授乳のために休暇を延長したいとして休暇を申請してき ました。クライアントは、この女子従業員に対して、かならず休暇を与えなければならないか?休暇を与える場合は有給としなければならないか?という問題でお悩みでした。今回はこの問題について皆さんと共有させていただこうと思います。

一、背景及び問合せ事項
•出産をした女子従業者が、産休期間満了後も授乳のために休暇を延長したいとしています。其の根拠は、「広東省女子従業者労働保護実施弁法」(1989年施行)(以下「実施弁法」という)の第8条と思われます。

二、問合せ事項
1.法律上、出産休暇満了後も、産後の状況により、休暇を与えなければならないのだろうか?
2.休暇を与える場合は、有給としなければならいのだろうか?

三、法律意見
•関連法律法規
1.女子従業者労働保護特別規定(2012年施行)
(以下「特別規定」という)
第9条(授乳期間中の保護)
使用者は、1歳に満たない嬰児に授乳中の女子従業者に時間外労働又は深夜労働をさせてはならない。使用者は、授乳期間中の女子従業者に対して、毎日、労働時間内において1時間の授乳時間を与えなければならない。多胎出産の場合は、授乳中の嬰児が1人増える毎に授乳時間を1日につき1時間ずつ増やすものとする。

2.広東省女子従業者労働保護実施弁法(1989年施行)
(以下「実施弁法」という)
第8条(授乳休暇)
女子従業者は、出産休暇期間が満了した際に、現実的な困難があり、本人が申請して上司が承認した場合は、嬰児が満1歳になるまで、授乳休暇を取得することができる。授乳休暇期間において、その所属する使用者は、本人の賃金基準の75%を下回らない賃金をこれに支給しなければならない。

(二)分析意見
1.当該女子従業者に有給休暇(75%以上)を与えなければならないか?
(1)実施弁法8条によると、女子従業者は、出産休暇期間が満了した際に、現実的な困難がある場合には、嬰児が満1歳になるまで、授乳休暇を申請することができます。ただし、当該休暇を承認するか否かは会社が裁量のうえで決定することができるものです。したがいまして、法的には、必ずしも当該女子従業者の授乳期間において有給休暇を支給しなければならないわけではなく、実情に応じて承認しないこともできます。

(2)なお、女子従業者が出産休暇満了後に、病気を理由に病気休暇を申請した場合に、病院の診断証明があるときには、病気休暇を与えなければなりません。なお、女子従業者は授乳期間において1日につき1時間の授乳時間を享受することができるため、授乳期間中の女子従業者が病気休暇を取得する場合には、1日の賃金における1時間分の賃金は、いつもどおりに支給しなければなりません。残りの7時間については、病気休暇基準の賃金を支給すればよいです。

2.当該女子従業員が無休休暇を申請した場合は、これを必ず与えなければならないか?
(1)当該女子従業者が、有給休暇の申請を諦めて、無給休暇を申請してきたとしても、これを必ず承認しなければならないわけではありません。会社は業務の状況に応じて、これを承認するか否かを決定することができます。
(2)なお、無給休暇申請を承認するとしても、授乳期間において1日につき1時間の授乳時間については、賃金を支給しなければなりません。

四、まとめ
女子従業員が出産休暇満了後に授乳休暇を取得したいと申請した場合、会社は毎日1時間の授乳時間を与えなければなりませんが、それ以上については、実情に応じて、与えるかどうかを決定できます。女子従業従業員が体調がすぐれないと申し出た場合には、医療休暇として対応をすることができます。その場合は、病院の発行するカルテなどにもとづき休暇を与え、医療休暇賃金を支払うことになります。女子従業員が無給休暇を申請した場合には、会社は実情に応じてこれを承認するか否かを決定することができます。

盛唐法律事務所
広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

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