目から鱗の中国法律事情 「中国民法典における契約①」
中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。
Vol.80 中国民法典における契約 その1
ビジネスを行う上で、「契約」とは基本的な行為であることは間違いないでしょう。今さらですが、これからしばらく中国民法典における契約を見ていきます。本連載でも2020年7月10日号(747号)から何度か2021年1月1日から中国で新しい「民法典」が施行されたと述べてきました。この中国民法典では、第463条以下に契約について規定しています。
契約の形式
中国民法典第469条第1項では、契約は書面の形式、口頭の形式もしくはその他の形式により締結されると規定しています。そして、書面の形式には、契約書、手紙、電報、テレックス、ファクシミリなど内容を具体的に表現できるものを指すとしています(第469条第2項)。そして、電子データの交換、電子メールなどの方法で、記載内容が表現され、かついつでも閲覧できるデジタルデータ文も書面とみなすと規定されています(第469条第3項)。 日本でも、契約は、原則として両者の合意のみで成立します。しかし、口頭の合意では後でどのような契約内容であったのかトラブルが発生する可能性があるため契約書を作成するのです。中国もそれと同じということです。それであっても、書面の形式による契約が、テレックスやファクシミリも含む、さらにはいつでも閲覧が可能なメール文による契約も書面形式による契約と定めている点は、中国民法典の分かりやすい点と言えるでしょう。
契約の内容
中国民法第470条第1項は、契約の内容は当事者の約定によるものとし、一般的には以下の条項を含むものとすると規定しています。そして、これに続けて、①当事者の姓名もしくは名称および住所、②目的物、③数量、④品質、⑤価格もしくは報酬、⑥履行期限、場所および方式、⑦違約責任、⑧紛争解決の方法、という8つの条項を掲げています。そして続けて、当事者は各契約書のも半分を参照しながら契約を締結することができる、と規定しています(第470条第2項)。
これらの規定は「一般的には」とか「することができる」とか絶対に従わなければならない規定ではありませんが、このように細かく契約の締結方法すら規定しているのが中国民法典と言うことになります。(続く)
〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi