旬な人 俳優とオーナーの両立 「ウィリアム・チャク(翟威廉)氏」

2023/05/31

俳優として、オーナーとして
相乗効果を生むダブルワークを楽しむ

日本は三重県にある伝統的な酒蔵の門をくぐり、彼は深く息を吸う。「あぁ、この香り」と懐かしむように、米が発酵する際に放つ独特な香りを楽しむのだ。この酒蔵とは平安の時代から、優れた米と清い水を用い職人の手仕事で造られる「寒紅梅」。「僕の日本酒の歴史に、この寒紅梅は欠かせません。寒紅梅と共に歩んできたようなものです」。そう語るのは日本酒の卸・小売業を営む香港人のウィリアム・チャクさん。IMG_4259

必死に勉強した日本留学の3年間
端正な容姿からもお分かりだろうか、ウィリアムさんは現役の俳優でもある。改めて彼の出生から紐解いていこう。
1985年香港で生まれた彼は、高校卒業後の進路先として日本留学を決めた。幼少の頃から、旅行で訪れていた日本を好きだったし、両親が日本でビジネスをしていることもそれを後押しする形となった。「3年間の留学生活では、本当に必死に日本語を学びましたね。今、僕が話す日本語をよく褒めていただくことがありますが、この3年間が実を結んだのだと思います。香港のドラマで日本人を演じる役をいただいたこともあるんですよ」と当時を振り返る。
もともと芸能の世界に興味があり、日本では趣味のダンスの延長で、フジテレビのバラエティ番組に出演する機会にも恵まれたそうだ。そのまま日本に居続けることも考えたが、親想いの青年は香港へ戻ることを決めた。

グランプリの常連として存在感を放つ
2005年に香港へ帰ると、本格的に芸能活動を開始。香港のテレビ局に在籍し、オーディション番組「ミスターアジア」でグランプリを獲得した。その後、バラエティや旅行番組、ドラマで活躍すること4年、彼はカンフードラマのオファーをきっかけに、テコンドーを学びに単身韓国へ飛んだ。「何か違うことに挑戦したくなったんですね、当時の僕は落ち着きがなかったかもしれません(笑)」。中途半端なことが嫌いな性分が故、テコンドーの黒帯を取得し、韓国語も習得したというから、その努力家精神は脱帽に値する。
再び香港へ戻った2010年、TVBのオーディション番組「ミスター香港」にて5部門受賞で圧勝し、「史上最高のミスター香港」と呼ばれ、香港芸能界でその存在感をあらわにした。

演者としてベストを目指すのは当然
取材当時(23年3月末)はちょうど半年に及んだドラマ(作品名:異空感応)撮影が終わったばかりだそうで、彼の表情からは安堵感を感じられた。「今回は警察の役でしたが、撮影中は良い作品を作ることだけに集中します。僕ら演者だけでなく、制作スタッフみんなが早く仕事を終え帰宅できるように、自分のNGは出さないよう気をつけていますね」と俳優としての気構えを語る。さらに、大変だった過去のシーンを聞くと「海に落ちるシーンや闘うアクションシーンなど、身体を張る仕事ですね」と答える。IMG_4274

さて、多忙を極めるウィリアムさんだが、俳優の傍ら番組の企画でバンドを結成しライブ活動を開始。そのスタジオの1階スペースが空いていたこと、自身で何かビジネスを始めようと考えた時に、国際唎酒師として働いていた実兄の協力も得ることができ、3年前に現「Happy Live Nakama」を創業した。店名はバンド名から由来しているそうだ。取り扱い開始後、日本酒を勉強し、自身も国際唎酒師の資格を取得する。
「最近では、軽いボディを好む香港人の口に合う日本酒が増えてきましたね。日本料理店だけでなく、香港火鍋のお店とも契約するなど、日本酒の受け口は広がる一方です」。

流暢な日本語を生かし酒蔵と香港マーケットの仲介を
また、ウィリアムさんは自身が気に入った銘柄があれば、直接日本の酒蔵を訪れ、OEM契約を交わしたり、香港の飲食店との仕入れ仲介も行なう。杜氏たちの技術や商品への理解、そして香港人の感覚をどちらも代弁できる人、そんな逸材として多くの飲食店に信頼され重宝されている。
「日本酒のビジネスを始めて、俳優業を少し抑えるようにしていますが、どちらもおもしろい。俳優はオーダーを受けパフォーマンスをする役です。一方で、自分のビジネスは自分がかじ取りをする立場なので、両者のバランスが僕にはちょうどよく感じます。ポップアップの日本酒イベントを飲食店で行った後に、俳優の仕事が増えることもあり、相乗効果を感じます」と二足の草鞋を履く自身のライフスタイルについて手ごたえを語ってくれた。
同じく香港の俳優である周志文、周志康兄弟や許家傑などとはバスケットやバンド活動など、プライベートでも仲が良いそうで、ウィリアムさんのビジネスを無償で手伝ってくれることもあるんだとか。それはきっと彼の屈託のない笑顔と、分け隔てのない明るい人柄が周囲を惹きつけているのだろう。
ウィリアムさんに今後の夢を聞くと「日本酒ビジネスに携わってくれるチームのみんなを幸せにしたいですね。俳優業ではさらに広いジャンルの役柄に挑戦し、役に深みを出せたらと思います」。スケジュールが許す限り佐敦のお店で接客をしているウィリアムさん。訪れれば日本酒のティスティングをさせてくれたり、ブランドストーリーを聞かせてくれる。周囲の人を惹きつける彼の自然な魅力にぜひ触れてほしい。


ウィリアム・チャク(翟威廉)さん
1985年香港生まれ。高校卒業後、日本へ留学し、日本語を勉強しながら日本のバラエティ番組に出演。その後、拠点を香港に移し、2005年より俳優として活動する。オーディション番組「ミスターアジア」や「ミスター香港」でグランプリを獲得し、名実ともに有名になった。2020年に国際唎酒師を取得し、佐敦にて日本酒専門店「Happy Live Nakama」をオープン。俳優兼日本酒セラーとして忙しい日々を送る。
IGアカウント:chakwilliam

Happy Live Nakama
G/F. 556-558 Canton Rd., Jordan
(852)6688-4913
www.facebook.com/NakamaPage

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