尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.51

2021/09/01

社内規則制度を制定する際の注意事項(上)

 

Q.使用者が社内規則制度を制定する際の注意事項を教えてください。

A.使用者は労働者の利益に直接関わる社内規則制度などを制定する際、労働契約法第4条で定められた民主的な手続を履行しなければならず、その内容の合法性と合理性を保障すると同時に、確定済みの社内規則制度及び重要事項の決定を公示し、または労働者に告知しなければなりません。

 

①民主的な手続の履行

 労働契約法第4条第2項によれば、使用者は、労働報酬、勤務時間、休憩休暇、労働安全衛生、保険及び福利厚生、従業員研修、労働規律並びに労働定額管理等の労働者の切実な利益に直接関わる規則制度または重大事項を制定、改正または決定する際、従業員代表大会または従業員全体の討論を経て、試案及び意見を出し、労働組合または従業員代表と平等に協議を行い、これを確定しなければなりません。

 つまり、社内規則制度または重大事項の制定、改正または決定案については、討論、意見徴収及び協議の過程を経る必要があります。

 使用者は、規則制度または重大事項を制定、改正または決定する際、労働者または労働組合から出された意見を整理、検討の上、使用者側の意見を提出し、または説明を行うことができます。

 ただし、使用者が労働者または労働組合から出された意見を必ず受け入れなければならないことではないと解されます。

 

②内容の合法性と合理性

 使用者は法により労働規則制度を確立しかつこれを整備し、労働者の労働する権利の享受及び労働義務の履行を保障する必要があります(労働契約法第4条第1項)。

 また、使用者の規則制度が法律、法規の規定に違反し、労働者の権益に損害を与えている場合、労働者は労働契約を解除し、経済補償金の支払いを請求する権利を有しています(労働契約法第38条第1項第4号、第46条)。

 更に、使用者が規則制度において自社の法定責任を免除し、労働者の権利を排除する規定を設けた場合、当該規定は無効と認定される可能性があります(労働契約法第26条第1項第2号)。

 要するに、労働者の立場から見て使用者の規則制度の規定が明らかに不合理であるなどの場合は、人民法院は関連規定について無効と認定し、係る規定を労働者に対する処分決定の根拠とすることを認めないか、または労働者の請求に応じて労働者の利益や負担能力などを勘案の上、使用者による処分決定、主張または請求の内容を調整することができます。

 

③労働者への告知

 使用者は、労働者の切実な利益に直接関わる規則制度及び重要事項の決定を公示し、または労働者に告知しなければなりません(労働契約法第4条第4項)。

 

④実施過程における改正意見の提出権

 労働者の切実な利益に直接関わる規則制度及び重要事項の決定を実施する過程において、労働組合または労働者が不適切であると判断した場合、使用者に申し出て、協議を通じてこれを改正し、改善する権利を有します(労働契約法第4条第3項)。ただし、使用者が労働者または労働組合の意見を必ず受け入れなければならないことではないと解されます。(次号に続く)


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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