中国法律コラム31「会社清算時における労働問題について」広東盛唐法律事務所

2018/08/22
今回のニュースレターでは、会社清算時に生じるであろう従業員との労働問題について、皆さんと情報共有をさせていただきます。

 

一、従業員解散時の法定義務について

会社清算は、中国の法律上は「早期解散」に該当します。労働契約法によりますと、会社が早期解散を決定したとき、会社と全ての従業員との労働契約は自動的に終了となります。この場合、会社は労働者に経済補償金を支払わなければなりません。会社が従業員に支払う経済補償金は、勤続年数により計算されます(いわゆる1N)。つまり、勤続年数1年につき、1ヶ月分の月平均賃金相当額の経済補償金を支払わなければならないということです。なお、6ヶ月未満の勤続年数については半月分が計算されます。なお、従業員の月平均賃金は、労働契約終了前の直近12ヶ月の平均により計算されます。これが市の平均賃金の3倍を上回る場合、市の平均賃金の3倍を基数として計算することができます。この場合、経済補償金は最大でも12ヶ月分を超えないものとすることができます。

 

二、会社清算において生じやすい紛争

法令の定めでは、会社清算時の経済補償基準は1Nでよいのですが、従業員はそれを上回る経済補償を得るために、往々にして、会社のその他の問題を指摘するなどして、より多くの経済補償金を獲得しようとします。従業員が指摘してくるケースの多い問題点には次のものが考えられます。

1、残業代について
残業代は、労働契約に定める“正常勤務時間賃金”又は“基本給”をもとに計算されることが一般的ですが、労働契約又は就業規則において、残業代の計算方法が明定されていない場合、従業員が賃金総額(手当、補助、ボーナスなどを含む)を基数として残業代を計算するよう要求してくることがあります。

2、社会保険料・住宅積立金の納付基数について
社会の平均賃金又は最低賃金基準を基数として納付するよう定められている保険を除いて、その他の社会保険・住宅積立金は従業員の実際の月賃金を基数として計算・納付しなければなりません。社会保険料・住宅積立金を納付する際、これを下回る基準を基数として納付している場合、従業員がその差額を支払うよう要求してくるケースが多いです。また、従業員が行政当局に告発をしたとき、行政当局より差額を追納するよう命じられるリスクもあります。

3、通知金について
法律上、会社が早期解散をする場合は、一か月前の通知は必要とされておりませんが、従業員らは、一か月前もっての通知がないとして、N+1の基準で経済補償金を支払うよう要求するケースが多いです(1ヶ月分賃金の上増し)。

 

三、助言

会社を清算する前に、弁護士などの専門家により会社の現状を調査し、会社清算時に生じうる問題とリスクについて検討することが望ましいといえます。具体的には次の項目などについて調査をします。

1、会社清算前のリスク分析
残業代、社会保険料、住宅積立金の計算・納付状況をチェック、未納額又は過少納付額を確認します。

2、従業員解散時の経済補償スキームの制定
労働契約法の規定及び実情に照らして、従業員解散時の経済補償スキームを制定します。また、会社清算を円滑に実施するため、従業員との労働紛争が生じることを避けるために、会社が受け入れられる範囲において、経済補償金以外の項目の補償案を検討、制定します。

3、労働問題対応チームを組織する
会社を清算するにあたり、サボタージュや出荷妨害、設備移転妨害が生じることが懸念されます。これに対して事前に準備をし、かつ現場対応をするために、労働問題に対応するチームを組織することが望ましいといえます(貴社の責任者・担当者、弁護士など)。このチームにより、会社清算の発表の方法や時期、従業員の要求に対する検討や対応をしていきます。

 

四、あとがき

いかがでしたでしょうか?今後、製造業の工場閉鎖、工場移転などのケースが益々増えていくと思います。弊所はこの方面において豊富な経験を有しております。疑問点等ございましたら、大嶽までお気軽にご連絡ください。

 

 


盛唐法律事務所

広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

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