中国の独占禁止法。広東盛唐法律事務所

2015/02/03

前回は、中国の独占禁止法について(一)独占合意篇と題して、事業者間で競争を排除、制限する合意などをした場合のリスクについて解説させていただきました。今回は、前号に引き続いて、「市場における支配的地位の濫用」について紹介させていただきます。

一、「市場における支配的地位の濫用」の定義

市場における支配的地位とは、事業者が関連市場において、商品の価格・数量もしくはその他の取引条件をコントロールすることができ、又は他の事業者の関連市場への参入を阻害し、もしくはこれに影響を及ぼすことができる能力を有する市場地位を指します。

また、他の事業者の関連市場への参入を阻害し、もしくはこれに影響を及ぼすことができるとは、他の事業者の関連市場への参入を排除すること、他の事業者の関連市場への参入を遅延させること、又は他の事業者が当該市場に参入することはできるが、算入コストを上昇させ市場において競争を行えなくさせること等を指します。

二、「関連市場」の画定

市場における支配的地位の濫用に該当するか否かを判断するには、まずは前提条件となる事業者が関連市場における支配的地位を有するか否かを確認することとなります。したがいまして、関連市場の画定は常に独占禁止法違反事件において最も重要な要素であるといえ、関連市場の大小によって事業者が最終的に法的責任を負うか否かが決せられるといえます。関連市場とは、「事業者が一定の期間において特定の商品又は役務について競争を行う商品の範囲又は地理的範囲をいう」と定義されています。中国独占禁止法の実務においては、これについて、関連の商品市場と関連の地域市場を確定する必要があります。関連の商品市場とは、「商品の特性、用途及び価格等の要素に基づき、需要者により比較的密接な代替関係があるとみなされる1組又は1種類の商品によって構成される市場を指す」と定義されています。関連の商品市場とは、「需要者が比較的密接な代替関係にある商品を入手できる地理的区域を指す。」と定義されています。

三、市場における支配的地位濫用行為

「市場支配的地位濫用行為の禁止に関する規定」によりますと、市場における支配的地位を有する事業者が、正当な理由なく実施した次の各号に掲げる取引行為は、支配的地位を濫用する行為と認定される蓋然性が極めて高いといえます。

(1)顧客との取引を拒絶すること

(2)取引相手を限定すること

(3)抱き合わせ販売をすること、取引時に不合理な取引条件を付加すること

(4)条件が同等の取引相手に対して差別的取扱をすること

四、助言

市場における支配的地位を濫用したとして、調査及び処罰を受けることを避けるため、市場における支配的地位を有する企業は、次のような対応策を講じるよう助言いたします。

1、独占禁止に関する内部調査を実施する。かつ、独占禁止に関する法理論及び実務に精通する専門化の協力を得て全面的に独占禁止法違反のリスクを分析し、自社が市場における支配的地位を有するか否かを確認する。

2、独占禁止法に係わる部署の担当役員及び従業員に独占禁止法についての研修を受講させることにより、独占禁止法に対するコンプライアンス意識を強化させ、独占禁止法違反リスクを低減する。かつ、市場における支配的地位濫用行為が存するか否かを確認し、存するようであれば、今後の対応について専門家に相談したうえで実施する。

法律顧問 大嶽 徳洋

広東盛唐法律事務所 SHENG TANG LAW FIRM

法律顧問 大嶽 徳洋 Roy Odake

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