香港における事業所得税について。TMF Group日本企業事業部(APAC)

2015/04/30

前回4月第3号では香港における給与所得税(Salaries Tax)についてご説明致しました。第二回目の今回は事業所得税(Profits Tax)の概略及びその中でも税効果の高いオフショアクレーム(offshore claim)について簡単にご説明致します。

給与所得税の場合と同じく、香港での事業所得税の計算上、居住者か非居住者かによる課税関係の違いはなく、香港源泉所得の有無に基づき課税関係及び課税範囲が確定します。香港で事業を行う法人、パートナーシップ、個人事業主、トラスティーは、香港源泉の事業所得に対し現行16.5%で事業所得税が課されます。

配当所得、キャピタルゲインは香港での事業所得税の課税対象とはなりません。香港の課税年度は4月1日から3月31日となっていますが、法人の場合、自由に決算期を定めることができ、年次決算書ベースでの税務申告が可能となっています。

事業所得税の算出に際し、内国歳入法(InlandRevenue Ordinance(IRO))では事業所得税は香港源泉所得のみに課税される旨を定めています。
従って、所得の源泉地の判断が重要になります。事業所得は大きく、香港内源泉所得(onshore income)と香港外源泉所得(offshore income)に分けられ、原則、所得の源泉地の判定は以下に基づき行います。

•販売活動による所得
•売買契約が「実質的に」行われた場所。これは法的な契約締結地のみを指すのではなく、売買契約交渉が行われた場所、合意された場所も含む。
•個々の項目ではなく、全体を総合的にみて判断する
•製造活動による所得
•製造の場所
•役務提供所得
•役務が提供された場所

税務申告時に(全て、或いは一部の)所得の源泉地を香港外として申告する、オフショアクレームを行うと、その後、通常手紙ベースでの税務調査がほぼ
必ず入ります。従って事前にサポート資料をしっかりと準備、保管しておくことが大切です。なお、サポート資料は一連のコミュニケーションの流れが分かるような資料を保存することが重要です。また、税務当局は過去7年に遡り税務調査を行う権限を有する為、最低でも過去7年分のサポート資料を保管しておく必要があります。

実際の税務調査では所得源泉が香港外であることを証明する為、「どのように、どこで、誰によって(how,where and by whom)」といった情報を含む、詳細な内容の説明、証明を求められます。以下、ご参考までに税務調査時に税務当局より提出を求められるサポート資料の例をご紹介致します。(役務提供所得の場合は内容が異なります。)

[販売]
•どのように、どこで顧客を特定し、販売活動を行ったのか、及び販売条件や価格がどのように決定されたのかを示すEメール、ファックス、手紙、会議のメモ等の記録
•顧客との間で締結された販売契約書
•顧客からの注文書
•どのように、どこで購入注文が処理され送信されたのかを示す各種書類(例、ファックスやEメールで受け取った顧客からの注文書に対する受領書)

[仕入]
•どのように、どこでサプライヤーを特定し、またどのように仕入れ条件を決定したのかを示す一連の文書での記録
•サプライヤーとの間で締結した購入契約書
•サプライヤーに対する発注書。発注がファックスで行われた場合には、ファックスカバー及びファックスの送信記録。注文がEメールで行われた場合に発注書が添付されたEメール記録。

*上記はあくまで一般的なルールです。個別のケースについては別途各アドバイザーにご相談下さい。

浅田緑〈執筆者プロフィール〉
浅田緑(あさだ・みどり)
TMF Group日本企業事業部(APAC)
アソシエイト・ディレクター、
英国勅許税理士。

世界4大会計事務所のロンドン、香港事務所での駐在員税務分野における10年以上に渡るコンサルティング経験を持つ。2012年10月より、世界80ヵ国
に120の拠点を持つグローバルファーム、TMF Groupの一員として、香港を拠点に広くAPACの日系企業に対し、税務、会計、法務事務、人事・給与計算に関するコンプライアンス及びコンサルティングサービスの提供を行っている。

TMF GROUP電話:(852)3188-8216
Eメール:midori.asada@tmf-group.com
サイト:http://www.tmf-group.com

 

 

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