「K11 MUSEA ART KARNIVAL」尖沙咀
日本人著名アーティストの作品が天井を彩る
ドアが開くと生き返るような冷気とアロマの香りが出迎えてくれるオシャレな空間、K11。「創造、文化、改革」をテーマに2019年にオープンしたこの建物は、香港の洗練された一大ランドマークとして、流行に敏感な人々の注目を集め続けている。
圧倒的な存在感を放つ糸の集合体
一歩足を踏み入れると、天井から優しい太陽光が差し込む吹き抜けのメインロビーに出る。そこには、真っ赤な糸で紡がれた巨大なインスタレーションが存在感を放つ。12mの糸が何百本と空間を覆うように垂れ下がり、その繊細で流動的な印象が来場者の注目を一気に惹きつけている。
同作品は日本を代表するアーティスト、塩田千春さんの新作「I hope」だ。大阪生まれ、ベルリンを拠点に活動し、2008年に芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞、15年には第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表作家を務めるなど、世界を舞台に幅広く活躍する実力派のアーティスト。塩田さんの作品のシンボルマークとも言える「赤い糸」は血であり、血縁であり、人との繋がりを意味するもの。この糸の間には、今回世界中から集められた5,000以上もの手書きの手紙が結ばれ、よく見ると英語で「早くコロナが終息しますように」や日本語で「大きくなったら世界中を旅したい」というようなかわいい筆跡で書かれているものもあった。糸の集合体のインスタレーションからは世界の人々の「希望」を力強く感じられる。
塩田さん自身が癌の宣告を受けてから完成させた作品だけに「生と死」や「生きること」を真正面から見つめ、作品に「I hope」と命名したのだそうだ。赤い線の中に見える黒のスチールでできた小船は、どこか儚くそれでも希望の海を航海していく、塩田さん自身の思いとも受け取れる。
国内外で活躍する芸術の巨匠たちの作品も同作品以外にもK11内には世界的アーティストの作品が所狭しと展示されている。G/Fには中国出身で雑誌VOGUEやGQの表紙写真でもお馴染み、フォトグラファーAlexvi Liの作品ショーケースがある。ジャン・レノをはじめ、そのほか世界の著名人の白黒ポートフォリオがズラリと並んだ同作品は「Back to Black」と名付けられ、色彩のないシンプルな白黒のアングルの中にモデルの顔の表情が生き生きと描写されている。また、6/FではSNSなどで人気のある「Dear Harley Bakery」とコラボした「Cake Illusions」を開催。展示されているものはすべてケーキで作られているという目を疑うほど完成度の高い作品ばかり。インスタグラムと連動して同イベントをタグ付けするとK11オリジナルマスクを贈呈というプチギフトもあり。
無料のアートツアーを活用して9月11日までの開催期間中、無料で英語や広東語、普通語にて同イベントのガイドをしてくれるうれしいツアーサービスもある。ただ鑑賞して回るよりもアーティストや作品の奥深い知識を得られるいい機会となるだろう。
さらに、アートで視覚を刺激した後は、K11内のグルメを楽しんで。G/F「Artisan Lounge」では、赤い糸のインスタレーションにちなんで赤をテーマにした色鮮やかなアフタヌーンティーや、そのほか和洋中のグルメが目白押しだ。K11内をゆっくり見学したことがない方も、この機会にぜひオシャレな館内でアート&グルメ体験をしてみてはいかが?
K11MUSEA
(852)3892-3890
10:00~22:00
www.k11musea.com