香港の銀行事情

2017/05/29

Banks in HK

広報担当者によると、HSBCやシティバンクは今年末までに韓国や英国の支店数を大幅に削減すると発表しているが、香港には同様の動きは見られない。デジタル化が進む局面においてもなぜ香港では銀行は支店を保持しているのか。そこにはいくつか理由がある。

HSBCのGreg Hingston氏は、「支払い等基本的な取引はオンラインなどへと移行が進んでいますが、我が社の顧客は引き続きパーソナライズされたサービスを要するウェルス・マネジメントやモーゲージサービスに各支店を利用しています。依然としてデジタルバンキングを使用しない顧客も一定数おり、我々は彼らにサービスを提供するための投資を続けています。香港での支店あたりの顧客口座の集中度と、我々のネットワークの生産性が非常に高い点は、他の市場と比較しても大きく異なるからです。また、香港の顧客は仕事場にどれだけ近いか、といった利便性を重視する傾向があるのも、支店を維持する理由の1つです。」 と語る。

Randstad Hong KongのMaggie Li氏曰く、「オランダのINGは1,000人のスタッフを解雇し、デジタル化への移行を強化しました。しかしそれが進んでいない香港では、支店の大幅な減少は起きていません。こういった流れは、香港に雇用の面でプラスの効果をもたらしています。」非常に高額な住宅価格も理由の1つだ。

EYの金融サービス担当であるKeith Pogson氏は、「香港の住宅ローンは他の地域の住宅ローンよりもはるかに額が大きいので、銀行が支店を閉鎖した場合には必然的に大きな収益を失うことになるのです。」と語った。実際支店閉鎖は収益性の低い分野では起こっており、昨年BEAは東アジアの証券を扱う22店舗全てを閉鎖した。

香港銀行規制当局も実店舗を維持することを望んでおり、今後さらに多くの銀行支店が開設される予定で、3つの紙幣発行銀行と5つのリテールバンクは、遠隔地や公営住宅地の住民に基本的な銀行サービスを提供するために約10箇所の支店を開設し、1年以内に1つのモバイルブランチを展開する予定だという。

そんな中、支店内の様子に変化もある。

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「最近では取引を提供するだけでなく、顧客に追加のサービスを販売することが増えています。これは、銀行が支店スタッフの能力を高めるべく、彼らに多少の変化を促したことを示しています。」

現在、銀行側は提供サービスの順応と、多くがデジタル・ブランチ化の模索を始めており、その他の「適応化」もなんらかの閉鎖と合理化を含んでいる可能性がある。

中国銀行の香港担当者は、「今後とも当行は革新的な銀行サービスの提供経路を活用し、従来の支店サービスを超えて銀行の利便性を顧客に提供するために、支店ネットワークを合理化する可能性を模索し続けます」。と述べた。

香港の消費者達が徐々にテクノロジー化に順応し、銀行が提供するサービスも向上すれば、こういった変化のペースが加速する可能性は高くなるだろう。

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