中国・暮らしの歳時記、春節の風物と過ごし方
日本ではなじみのない春節のしきたり。日本のお正月との大きな違いは暦が異なること。それでも”年越し“という点においては共通する部分もある。世界の中華圏の一大行事、その全体像をおさらいしてみよう。
春節の風物【一】年夜飯
除夕(旧暦の大晦日)には、どこの家でも家族が集まり盛りだくさんの夕食を囲む。これが一年の食べ納めとなる食事で、俗に「年夜飯」といわれる。年夜飯の後はそのまま徹夜して新年を迎える。日本でも大晦日の夜は「守歳」といって夜明かしするが、中国の除夕を夜明かしすることも「守歳」という。また除夕にあたる旧暦12月30日は「大年三十」と呼ばれる。春節の風物の中でも特に大年三十の年夜飯が記憶に残る節目となる。ちなみに、旧暦では12月が30日まである年と29日までの年がある。今年は30日がなかったため、旧暦12月29日(新暦2月7日)が除夕だった。
一年を締めくくる料理にはとりわけ力が入る。できることを最大限行い、とにかくたくさん用意する。むしろ食べきれないことは「頓頓有余、年年有余」と言われ、充足感をもたらし、衣食に事欠かない一年になるので、縁起がよいとされる。
春節の風物【二】放鞭炮
串状に連ねた爆竹は音が長時間持続し、鞭を打つ音に似ていることから「鞭炮」と呼ばれる。その昔「年」という獣がいて、人に悪さをしていたという。人々は「年」を追い払うために火のついた竹を使った。これが”爆竹“の始まりで、しだいに連発式の爆竹「鞭炮」へと発展したという。鞭炮の風習はすでに二千年以上の歴史がある。鞭炮は一年に一回しかないこの日を祝うため、その喜びを表現し、みんなで盛大に祝う上で欠くことのできない風物となっている。近年、多くの都市で鞭炮が禁止されていたが、解禁の動きもある。伝統的な鞭炮の迫力は圧巻だ!
春節の風物【三】貼春聯
「春聯」は「門対」「春貼」「対聯」「対子」など様々な呼び方がある。起源は、桃の木の板に百鬼を食べるという二神の象や吉祥の文字を書いた「桃符」にあるとされ、整然、対句、簡潔、精巧の原則で文字を書いていた時代の名残をとどめている。現在では、貼る場所や、周囲のデザインとの調和、適当な文句が見つからないなどさまざまな理由から貼られないこともあるが、それでもまだまだこの風習は生き残っている。むしろ、古めかしい印象の春聯だからこそ伝統文化としての価値がある。
春節の風物【四】看春晩
1983年ころからテレビが普及し始めた。そこで年越しの晩に視聴者に楽しんでもらおうという目的で生まれたのが「春節晩会」略して「春晩」という番組だ。家族みんなでこの娯楽番組を楽しむのが毎年の恒例行事となっている。最近、春晩をボイコットしようとする動きもあったが、すぐに各方面からの批判を浴びる結果に。春晩のない春節は多くの人にとって考えられないことのようだ。
春節の風物【五】拝年
「大年初一一大早」(旧暦1月1日の早朝)、朝早く起き、新しい服に着替え、家で長幼の順に長者に新年のあいさつをし、外に出て親戚、知人友人、近隣に年始回りをする。これを「拝年」という。春節の朝、人々は互いに「年」という獣に食べられなかったことを祝し、喜び合ったことが起源とされる。伝統的な年越しの風物詩、拝年とそれに含まれる家族への祝福という概念や新年への期待は、西暦年の普及とともに薄れてきている。
春節の風物【六】逛廟会
「廟会」とは、伝統的な縁日のことだ。普通はお寺などの祭りもしくは旧暦で決められた日に、寺の境内もしくはその付近で催される。時代が変わり、昔ながらの廟会は現在の風潮に合わせて変化してきた。にぎやかさは昔のままだが雰囲気に欠ける。「北平的廟会」(散文家 張中行著)では、「市場は”摩登“(モダン)、廟会は”過日子“(暮らし)、暮らしとモダンには大きな違いがある」とある。今の多くの人はそのような違いについて考えることも少ない。
春節の風物【七】紅包
「紅包」とはご祝儀・特別ボーナスのことで、赤い祝儀袋に包まれるためそう呼ばれる。春節期間は、大人から子どもたちに紅包が配られる。これは「圧歳銭」といい、福と幸運をもたらすとされる。日本のお年玉同様、紅包を配る習慣はごく親しい親戚や友達の間に見られる。またある地域では、近所の子どもたちなどにも配る。こうした紅包に包まれるのは普通10元や20元ほど。伝説によれば、圧歳銭を子どもに与えることで妖怪や「年」が子どもに悪さをしようとする時、子どもたちがこのお金を妖怪に渡してして凶を吉に変えることができるのだという。