中国の刺し身「魚生(ユーサーン)」順徳料理
「食在広東,厨出鳳城」=「食は広東、料理人は鳳城(順徳の旧称)から」といわれるとおり、順徳料理は広東料理の重要な部分を担っている。順徳料理は川で獲れる淡水魚などが主な食材となり、「清・鮮・爽・嫩・滑」が特色となっている。今回ご紹介するのは、その中でも最も順徳らしい、まさに順徳を代表するような料理「魚生」だ!
順徳の人々は長らくこの「魚生」を食してきた。ある資料によれば、なんと3,500~4,000年前までさかのぼるといわれている。おいしい「魚生」を食するためには魚選びが重要なポイントとなる。魚は種類により「下品・中品・上品」の3つの等級に分けられる。まずは「下品」(低級)。値段もお安く、肉薄で骨が多く、口当たりも少々劣る。レンギョやタラなどがこのクラスにあたる。「中品」(中級)は、肉が厚く、さわやかな甘味が特徴、骨は主に大骨のみ、口当たりも良い。鯉、ソウギョ、などがこれにあたる。「上品」(上級)は、スズキ、フナ、ティラピアといった魚たち。その特徴は肉質は歯ごたえがあり、口当たりが非常によく、味は甘い、それに刺し身にした時の発色にも優れているので、それだけで食欲をそそる。ちなみに、魚生は必ず活魚を用いる。死んだ魚は「魚生」にすることはできない。
日本の刺身の場合、薬味に使われる食材は普通数種類しかない。それに比べ魚生の薬味はとても多い。その数実に十数種類にも及ぶ。例えば、ニンニク、生姜、ネギ、玉ネギ、ピーマン、醤油、油、砂糖、ピーナッツ、ゴマ、唐辛子、レモングラス、陳皮、紫芋、揚げ玉などが用意される。
食べ方は、まず先に、油、塩、醤油、砂糖など好みに合わせて薬味を調合しよう。それに冷やした魚生を一緒にお椀に入れ混ぜ合わせる。そして、薬味と魚生を一口でいただこう。魚生の冷たくて爽やかで滑らかな口当たりが一瞬にして広がる。さらに、しっかり噛むことで、それぞれの薬味が醸し出す香り、辛さ、酸っぱさ、甘さが引き出され、後味も良くなる。魚生を一口食べたら、一杯の「米酒」を飲む。これで魚の生臭さを抑えると同時に殺菌効果もあるようだ。
中国で生ものなんて…と思うかもしれないが、この魚生は伝統ある広東料理の1つであるので機会があればぜひ食してみてほしい一品だ。