殿方 育児あそばせ!第14回
海南島に現れた妖怪
海南島にいった時のこと、妻と息子、義母は以前にも旅行で行った事があったのだが、その時の息子は海には入らず、砂浜で遊んだり、プールで遊ぶくらいだったようだ。
しかし今回は意地悪なパパが一緒。浮き輪を装着させ、最初は浅い場所で慣れさせてから、徐々に深い場所まで連れていった。自分の身長の倍以上の深さ(私の胸くらい)なので、恐怖で泣くわ喚くわ、必死にしがみついて離れない。徐々に慣れてはしゃぐくらいにはなったが、顔に水がかかると途端にありえない表情で慌てふためき半泣きになってしがみついていた。
久しぶりの潮水に浸かり上機嫌だった私だが、さすがにいい年のおっさんなので海から上がり休憩。息子は持ってきた砂遊びの道具で穴を掘ったり、型に砂を詰めてぽんぽんと並べたりしている。それを横目で見ながら一服していると妻から「小小と遊んでくださいよ」と怒られたので、重い腰を上げ、息子から道具を奪い取り「下手くそめ、こうやるんだよ」と砂に水をかけて固めやすくし、型に詰め、ぽんぽんと並べていく。最初は道具を取られて不服そうだった息子も、綺麗な形で並ぶ様を見て、目を輝かせて食いついて来た。次はコレ、その次はコレ、と色々な型を渡してくる。そのうち我慢できなくなって、父から型を奪い取り、見よう見まねでやってみるが、まさに詰めが甘く出てきた形はどこかが欠けていたりする。そんなこんなである程度ネタも尽きて、疲れてきたので妻にバトンタッチ。
妻は子供を連れて浜辺の方へ向かっていった。暫くすると妻が呼びにきた。
「ちょっときて」
言われるまま(ほぼ強制的に連行)息子の元へ。息子は一所懸命に穴を掘っていた。妻も一緒に穴を掘っている。何が楽しいのかねぇ、と言いかけた時に妻の真意に気付く。
(埋める気だな…)
それならばと自分も参加、そこまで深くではないが穴ができたので息子を誘導して穴の中へ。
「不要动!(動くなよ)」
と念を押して足を埋めていくが、落ち着きがなく、我慢できずに途中で脱出。そのあとはお約束通りに私も妻も同じように埋められ息子は大喜び。ちょっとだけバカ親子を楽しんだあと、夕日を眺め、写真撮影をした。流石に腹も減ってきたのでホテルへ戻ることに。身体についた砂を落とし、足を洗い、ホテルへ向かった。ホテル敷地内は南国感たっぷり。草木の中を通る道を、濡れた水着を脱がされタオルを巻いた姿で息子は自分の
前を歩いている。その後ろ姿に笑いがこみ上げてきた。
「キジムナーか(笑)」
南国の草木の中、タオルを巻いて歩く彼の姿が、見たこともない妖怪(精霊?)を連想させた。妻はキジムナー自体は知らないけれど、妖怪とかの類だと説明したら受けていた。Youtubeとかに上げたらバズるかな?などと考えながら写真にその姿を納め、部屋に戻りシャワーを浴びて、飯を食いにいった。この日の息子は、昼寝をせず、ずっと遊びっぱなしだったので途中で寝るかもと思っていたら、テンションが振り切れているみたいで全然眠そうにならない。部屋に戻ってからも暫くはしゃぐ息子だったが、突然バッテリーが切れて就寝。眠りについたのを確認してから、飯の後に買っておいたビールを持ってベランダに行き、一服しながら夜の海を眺めた。久しぶりの海と初めての妖怪に癒された日だった。
こんどまだきてーもんだなぁ。そんどぎはちゃんと泳げるよーさなっでろよ小小〜。
平太郎
日本の東北出身で中国語がまったくできないまま中国に来ちゃった無計画男。寒い所と雪かきが嫌で南国広州で定住をほぼ決めている。最近はコピーロボット的な振る舞いの息子に同族嫌悪を覚えながら似たもの親子で一緒に妻に怒られつつも子育てに奮闘中。趣味というかライフワークになりつつあるクラフトビールを片手に夜な夜なビアバーを探し、せこせこリスト作りに励んでいる変人に果たしてまともな人間に育てられるのかと禅問答を繰り返す日々。