殿方 育児あそばせ!第2回
田舎、山ん中、いつかの旧正月
あれはいつだったか、中国の旧正月に広州市から西にある肇慶市の山ん中、妻の実家に行った時のこと。
まだはっきりとした言葉という言葉を発せられない息子の小小(=息子の幼少期の愛称)にチュッ○チャップスもどきのアメを与えると喜んで舐めていた。
近所の子が村の少し広いスペースで追いかけっこやら、ボール遊びしているのを尻目に無心でナメナメ…。
無言でアメを舐める息子「…。」
平太郎「美味しいか? 好吃?」
まだ無言の息子「……。」
平太郎「…そんなに気に入ったのか?」
まだまだ無言の息子「パクっ!(口の中に入れた)…モゴモゴ(舐めている)」
平太郎「!?」
息子「…モゴモゴ…………………………」
平太郎「まさかアメが棒から外れて飲み込んだんじゃないろうな??」
息子「……………モゴモゴ…」
平太郎「ほっ…なんだ味わってんのか…」
そんな珍しくおとなしい息子をカメラに収めようと携帯を取り出し、カメラを向けたところ、ピンク色のタンクトップ姿の某お笑い芸人風に指を立て「とぅーす」と言ったかはさだかじゃないが、おかしな状態になった。
隣で息子のアメを狙っている妻に「なにしてんのコイツ?」と聞くと、「ピースちゃんとできないです」とのこと。
実は今でもピースがちゃんと出来ない、というか理解していないようで写真を撮ろうとすると同じ指になることがまだまだ多い。まさか何か指や手の神経部分に問題があるんじゃ、などと不安になることもあるが、まぁ大したことじゃないのでおいおい教えることにしよう。
アメが無くなり、まったり余韻に浸っている息子の元に外公(わいごん=母の父、おじいちゃん、の意味)がやってきた。
妻がどこからともなく花火を持ち出してきて、おじいちゃんに渡した。
なんだろうと見守る息子「(じーーーーっ)」
平太郎「…(昼に花火?)」
興味津々でおじいちゃんの元へ歩み寄る息子「テクテク…」
花火に火を付けるおじいちゃん「シボっ!しゅ〜〜………、シュワワワワ〜!」
良くわからないがおもしろそうだな、と見る息子。
若干ビビっているのか、腰が引けているようにも見える。
孫の手に持たせて軽く振り回し孫の興味を引こうとするおじいちゃん(ちゃんと手を添えています)。
しかし昼にやってるのでイマイチ花火の良さが伝わりにくいのか、微妙な笑顔でされるがままの息子。
やがて燃え尽きた花火を片手に佇む息子の表情は何故か超が付くほどの真顔だったのを見て、「やっぱり花火は夜がいいな」と思いながら真顔の息子をパチリと写真に収めた。
その二日後の夜、ちゃんと暗くなってから、近所の子供たちと一緒に花火を楽しんだ。
「やっぱり花火は夜だよねぇ」と、息子の顔を見るとなんと二日前の昼と同じ顔。
そこで気がついた、「あ、火に見とれてたんだな」。
誰でも感じた事があると思っているが、焚き火やBBQの後の残り火とか、眺めていると何だか落ち着くあの感じ。小さくてもあるんでしょね、感じる何かが。
そんなちっさいちっさい事だけど、印象に残った旧正月でした。
小小〜、すっだにちーせぐでも、もー癒しばほしーんだが?なんぼなんでも早すぎるべ。もーあんつかおっきぐなってがらにしてけろじゃ。
へば!
平太郎
日本の東北出身で中国語がまったくできないまま中国に来ちゃった無計画男。寒い所と雪かきが嫌で南国広州で定住をほぼ決めている。最近はコピーロボット的な振る舞いの息子に同族嫌悪を覚えながら似たもの親子で一緒に妻に怒られつつも子育てに奮闘中。趣味というかライフワークになりつつあるクラフトビールを片手に夜な夜なビアバーを探し、せこせこリスト作りに励んでいる変人に果たしてまともな人間に育てられるのかと禅問答を繰り返す日々。