中国の歴史・法律の軌跡をたどるマニアック探訪「河南人民検察博物館」

2025/10/01

スクリーンショット (2544)中国近代史は、現代中国につながる重要な歴史といえる。この中国近代史の中でも、法制史につながる部分を中国を知りつくした著者が、日本人が踏み込まないようなマニアックな地を訪れ、近代法制史を振り返る旅行記。

河南人民検察博物館

河南省に「信陽」という街があります。この信陽市新県という場所には、河南人民検察博物館という博物館があります。とは言っても、ほとんどの人がこの地名は知らないでしょう。筆者ももともと全く知りませんでした。この信陽市新県という街は、河南省の中でも特に南に位置しており、湖北省武漢から行く方が近くなります。また、信陽市新県は、高鉄(中国新幹線)も通っておらず、ローカル列車で行くしかなく、また駅前にも何にもない中国の農村です。

博物館外観

博物館外観

新県の駅前にいたタクシーにいくら話しても「河南人民検察博物館」という施設があることをタクシー運転手が知らず、博物館に行くのに本当に苦労しました。
なぜ、こんな辺鄙な場所に検察の博物館があるのか。博物館の展示品にいわく、信陽市新県は、革命根拠地時代(中華民国期に中国共産党が実効支配をした地域)に、初めて中国共産党政権による現在につながる検察制度が整備された街なんだそうです。そのような現代中国の検察制度にとって記念すべき街だから、博物館があったんですね。ところで、「検察」とは、刑事裁判において、容疑者を刑事起訴する国家機関のことです。
それでは、肝心の展示品はというと、現代中国の検察制度の始まりから、現代につながる検察制度の歴史がほぼ抜けがなく展示されており、圧巻の一言です。特に、「厳打」に関しても漏れなく展示されているのは驚きですらあります。厳打とは、中国の犯罪撲滅キャンペーンで(犯罪を「厳」しく「打」つ、という意味です)1983年など数回にわたり行われたとされています。それに関する資料も展示されているし、現在となっては貴重な検察制度の歴史的資料を各種見ることができます。中国の検察制度に興味のある方(そんな人はなかなかいないと思いますが)、もしくは中国近代史に興味のある方、特に通常のアプローチとは異なる見方で中国史を見てみたい方(中国近代史を見る場合は、通常は政治史などのアプローチから見るように思います)は是非見てみてほしい施設であると言えます。

目玉の展示。初期の刑事裁判の再現

目玉の展示。初期の刑事裁判の再現

 


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学アジア地域研究所特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら、講演活動などもしている。韓国・壇国大学校、東アジア人文融複合研究所、海外研究諮問委員や市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。『時事速報(中華版)』(時事通信社)にて「高橋孝治の中国法教室」連載中。

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