旬な人 ミセス世界大会出場へ「宇野裕子さん」

2025/07/02
ミセス世界大会出場へ
培ってきた内面からの美しさで挑む

 

宇野 裕子さん

福井県出身。大学卒業後、東京で就職し25歳の時に結婚。以後、香港へ移住し自身の子どもが通うサッカース クールの運営に参画。その他、サッカーの国際試合で同時通訳を務めるなど国際的に活躍する。ミセス世界大 会の選考会では「パシフィック・リム(環太平洋地域)代表」のタイトルを手にし、まもなく開催の世界大会に日 本代表として臨む。

福井県出身。大学卒業後、東京で就職し25歳の時に結婚。以後、香港へ移住し自身の子どもが通うサッカースクールの運営に参画。その他、サッカーの国際試合で同時通訳を務めるなど国際的に活躍する。ミセス世界大会の選考会では「パシフィック・リム(環太平洋地域)代表」のタイトルを手にし、まもなく開催の世界大会に日本代表として臨む。

「Make a difference(※)が好きなんです」、そんな一言が印象的だった。今年50歳になる宇野裕子さんは、今月14日からアメリカで開催されるミセス・インターナショナル世界大会へ日本代表の一人として出場する。母として、女性として、そして国際人として、宇野さんの歩んできた半生を表現する大舞台だ。内面から溢れ出る宇野さんの「強さ・美しさ」はどこに由来するのだろうか。※違いを生む、影響を与えるなどの意

大勢の中の一人から、個のアイデンティティに
「Who are you?」
留学先のカナダ・バンクーバーで、当時18歳だった宇野さんは、人生を変える一言に出会った。「自己紹介をすればいいと思って、大学の専攻や出身地を答えたんです。でもその質問は、“ユウコはどんな人間で、他人とどう違うのか”という趣旨だった。全く答えられなくて、ガツンとやられたように衝撃的でしたね」と振り返る。
人と同調し、場を和ませることが美徳とされる社会で育ってきた宇野さんにとって、それは価値観を根底から揺さぶられる体験だった。ここでは「人は、誰かと同じことを求めているのではなく、“人とは違う自分”を知りたいんだと、気づかされたんです。自分の意見や価値観を言葉にすることで、自分らしさが宿り、それが他者とのつながりや評価にもつながっていく。そこから私は、自分の人生を自分の意志で動かすことの大切さに気づかされました」。この価値観の転換は、語学留学という行動そのものにも反映されていた。
当時、エージェントを利用すれば何十万円とかかる語学留学を、宇野さんは自ら情報を集め、語学学校、ホストファミリー、航空券をすべて自分で手配。学生でも手の届く費用で叶えられる留学方法を構築した。
その経験をもとに、国際学科に在籍していた宇野さんは、自らの1年生時の衝撃と気づきを、後輩たちにも体験してほしいと考えるようになる。翌年の新入生オリエンテーションでは教授に頼み込み、授業後の5分間をもらって登壇。手書きのチラシを配りながら、自身の留学・ホームステイ体験を共有した。とくに「費用感」と「得たもの」を具体的に伝えることで、後輩たちに強くリアルなインパクトを与え、その行動は代々受け継がれる挑戦のきっかけとなっていった。
彼女が話す英語は“ジャパニーズ英語”ではない。ネイティブと遜色ない滑らかで美しい発音。それもそのはず、留学を機に、現地の幼児が受ける発音習得法からやり直し、真似ることで徹底的に直したという。その努力は、現在の同時通訳というキャリアにもつながっている。

デジタル社会の中でサッカーに夢中になれる環境を
卒業後は東京で商社に就職、25歳での結婚を機に香港へ移住した。金融界に勤めたのち、出産をきっかけに子育てに専念することを選んだ。1歳からボールを追いかけ始め、7歳で本格的にサッカーを始めた息子さんが加入したのが、後に宇野さん自身も運営に携わるようになるBrasil Top Skills Soccer School(BTS)だ。「これが本物のサッカースキルか!と、とにかくコーチングが素晴らしかった。現役のブラジル人選手がコーチとして多数在籍するこのチームはレベルが高く、プロ選手をたくさん輩出しています。戦略型のヨーロピアンサッカーに対し、ブラジル式はドリブルなどのスキル、自己判断力、表現力などが求められるもの。サッカーを通して子どもたちに、自分への自信、思いやる心、リスペクト、社交性、挑戦する、一生モノの心を育んでもらいたいです」と話す。

母親目線のサッカースクール運営~二度目の転機
運営に携わるようになってからも、宇野さんは常に「母親目線」を大切にしている。運営側でもあくまで一人の親として「お金を払って預ける以上、子どもにはできるだけ多くのことを学び、持ち帰ってほしいのは子を持つ親なら同じ」と語る。
サッカースクールでは、練習後の時間外でブリーフィングやストレッチの時間を設け、子どもたちには「Did you have fun?(楽しかった?)」ではなく、「What did you learn today?(今日は何を学んだ?)」と問いかけているという。楽しさだけでなく、日々の中に学びがあることを意識させるためだ。
また汗まみれのユニフォームも泥だらけの笑顔も「全力でプレーした証」としている。
コーチ陣には、故郷に家族を残しながら香港でプロ選手として生計を立てているブラジル人が多く、彼らのコーチングには情熱が込められている。宇野さんは、そうした彼らと英語で密にコミュニケーションを取りながら、ハード面は信頼して任せ、自身は母親目線でソフト面を担当する。技術だけでなく、心と体の両面で子どもたちが成長できる環境づくりを心がけている。

サポート役から「自分がプレーヤーになる」挑戦
宇野さんが「ミセス・インターナショナル/ミズ・ファビュラス日本大会・世界大会」への出場を決意したのは、父親の勧め、そして大会の 「美しさとは、外見だけでなく、内面の価値観や信念に基づいた社会貢献活動に宿る」という考えに共感したからだという。
これまで宇野さんは、運営として平日は毎日ピッチに立ち、週末は朝から晩まで試合のサポートに奔走してきた。美容にはあまり関心がなかったと語るが、長年にわたり、常に「支える側」として動いてきた日々だった。
「これまではずっと、裏方としてチームや家族を支えるマネージメント側であり続けました。でも、人生の次のステージでは、自ら“プレーヤーになる”ことにも一度挑戦したかったんです。正直、一番苦手な分野だと痛感しています」。
それは50歳という節目を迎えた自分自身への挑戦でもあり、これからの人生をより豊かに生きるための新たなフェーズへの一歩。現在は世界大会に向けて、外見だけでなく、姿勢や話し方、表現力を高めるためのトレーニングも積極的に取り組んでいる。

自分のしたいことを追求していい
最後に彼女に「美しい女性像」を伺うとこんな答えが返ってきた。「他人の評価に左右されず、自分の意思で行動できる人。女性はもっと自分勝手でいいんです」と語る宇野さん。今年50歳を迎え、人生の次なるステージに向けて、自分の“好き”を大切に生き始めている。
まもなく開催される世界大会には全米の州代表や英国などの欧州・ウクライナから代表が40名出場。宇野さんはパシフィックリム代表としてその舞台に立つ。
「この肩書は、私の歩んできた生き方そのもの。自分の意志で道を選び、動いてきた人生を象徴していると思います」。50代での挑戦は、「美しさに年齢の限界はない」という彼女の信念から生まれた。
「筋肉こそが究極のアンチエイジング」と学んで以来、駅の階段も迷わず登るようになった。「お尻を上向きに保つためです」と笑う。
「昔は若かった」と懐かしむのではなく、“これからどう輝くか”を考えることこそ、本当の美しさ。「20代の頃より、皺はあるけれど今の自分の方が好きです」と言い切った。

 

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Brasil Top Skills Soccer School
2005年に設立。香港で唯一、ブラジル人ヘッドコーチとシニアコーチを擁し、質の高いサッカートレーニングを提供するサッカースクール。ブラジル、ヨーロッパ、メキシコ、アメリカ、中国、香港で豊富な経験を積んだコーチ陣が揃う。3~12歳を対象に「ブラジル式」のサッカーを指導している。
www.brasiltopskills.com

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