episに聞く【帰国生入試】流れとポイント&帰国生受入校紹介
帰国生入試の流れと気をつけたいポイント
香港はインターナショナルスクールの数も多く、英語をはじめとした教育レベルが高い一方で、日本に帰任が決まると心配なのは算数や国語をはじめとした学習レベルだ。辞令が出てからあわてて編入先や、受験校を選ぶのではなく、前持った準備と帰国後のプランを立てておきたいところ。今回はepisの先生にお話を伺い、教育者の目線から受験対策や帰国後の学習についてアドバイスをいただいた。先生たちが口を揃えておっしゃる一番大事なこととは…
理工系教育の重要性
昨今の日本の教育シーンについて知っておくべき変化やトレンドについて教えてください。
今年、文部科学省から発表された「理工系人材育成計画」の中で、労働力人口の減少にともない付加価値の高い理工系人材の育成のため、約30億円の基金を費やし大学・高専含む97校を対象に理工系学部の増設・新設を予定するとありました。ITの発展や環境問題への取り組みが進む中、世界的にも理工系の知識が必要となっています。当校でも算数や数学に力を入れており、以前、受験コースに在籍していたお子さまが算数と英語の2科目受験で合格したケースなどもありました。
また私学が積極的にすすめているのが「高大連携」です。高等学校教育と大学教育を連携させることで、学びの質を高めるというものです。例えば、高校生が大学へ行き教授の授業を公聴したり、医大の教授が高校へ赴き授業をするなど相互交流が盛んに行われています。
合格が目的ではない自分のやりたいこと重視の教育
近年よく耳にする「総合型選抜」とは何ですか?
これはかつてAO入試とも呼ばれていましたが、2021年より総合型選抜という名称に変わり内容にも変更がありました。入試の際にペーパーテストの点数だけで評価するのではなく、知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びへの意欲や人間性などを多面的に見ていくのが特徴です。近年このような総合型選抜を採用する大学が半数を超えています。また、昔のように「いい大学に入る為に受験をする」考えから、受験が最終ゴールではなく、「生徒自身のやりたいことを重視する」傾向が強まっています。
6年間の教育カリキュラム
帰国後の進路で悩むご家庭も多いです。中高一貫校のメリットについて教えてください。
中学と高校の間に受験を挟まないので6年間の一貫した教育カリキュラムを受けられるということです。中学1~2年のうちに中学修了レベルの内容を終え、中学3年から高校卒業までの4年間を専門分野に特化して学習できるという点ですね。また、施設や設備が整っている学校が多いので、充実した部活動の選択肢や、6年間同じ級友と過ごすことで深い絆を得られるというのもメリットと言えるでしょう。
数年前から一部の公立・私立高校の授業料が支援される「私立高校授業料実質無償化」制度も始まり、私学へ進学するお子さまも増えています。近年の少子化の影響を受けてもなお、受験者数は増加傾向であり、小学生の受験が一般的になっています。
6年間の教育カリキュラム
中学受験を想定した場合、いつ頃から準備すべきですか?
小学校4年生からが望ましいスタートラインです。episで導入している四谷大塚のカリキュラムでは4~5年生のうちに受験範囲を8割方終了するように組まれています。遅いスタートですと、お子さまに負担がかかってしまうので早めのスタートが鍵ですね。
また、とりわけ中学入試の算数はつるかめ算や等差数列などのように、公立小学校では習わないものも含まれるため、事前に準備をする必要があります。
帰国生入試と一般入試のダブルチャンスを利用しよう
「帰国生入試」とはどのようなものでしょうか?
まず2024年より東京都では私立中高の帰国生入試に関する規定が明確化されました。これまでは各学校の判断に委ねられていた部分をルール化したものです。例えば、帰国生入試の解禁日を11月20日以降とすることや、帰国生の対象を「1年以上の海外滞在期間および帰国後3年以内の者」としました。他地域では依然として学校によって異なりますので事前に確認することをおすすめします。
受験科目は英語のみ1教科、国語・算数の2教科、選択型2教科、国算英の3教科、そして国算と日本語作文など多岐に渡ります。理科・社会を課す学校はほぼありません。希望校に合わせて学習を進めることもひとつの手ですが、難関校の中には帰国生入試を実施せず総合型選抜に力を入れているところもあるため、理科・社会含め総合的に学ぶことも大事です。インターに通い英検準一級資格を持っていたお子さまが、開成中学に一般試験で合格したケースもあります。このように、得意な英語を使わなくても日本の一般試験で戦える実力や教育環境が整っていることが海外子女の強みと言えますね。
中学入試スケジュール
●帰国生入試
東京のみ11月20日から
関西含む他地域では11月初旬から開始
※一部10月から実施しているところや、オンライン受験も可能
●一般入試
関西含む他地域は1月初旬から
東京・神奈川は2月1日から
帰国生はまず<帰国生入試>を受け、その後、東京・神奈川以外のエリアの<一般入試>を予行練習として受験するパターンが多い。その後、東京・神奈川に第一志望校がある家庭は、2月から本番として入試に臨むと、受験生の心の準備にもなるのでおすすめ。入試日程については各学校の要綱をご確認ください。
日本でも増えるSATやIB教育
世界で活躍することを目的とした国際志向の教育が注目されていますが、日本ではいかがでしょうか。
近年日本で多く導入されているのが、アメリカの共通試験SAT対策です。これはアメリカの大学を受験する際に必要な適性検査ですが、日本の大学でも同スコアを提示することが求められていたり、保有していると有利になるケースがあります。広尾学園や三田国際高等学校のインターナショナルコースなどのように、海外大学進学を視野に入れたSAT対策用の学習カリキュラムを展開している学校も多く見受けられます。
次に多いのがIB(国際バカロレア)です。特に最近注目を浴びる教育カリキュラムなので皆さん聞いたことがあると思います。学術だけでなく、表現力やコミュニケーション力、探究心、課題解決力など、世界で活躍する社会人を育成するためのものです。世界では採用校の多いIBですが、日本ではまだ約30校(DP)と少ない数です。高校卒業レベルIBDP(Diploma Programme)スコアを持っていると大学入試の際にエッセイのみの提出で入試が可能、というような優遇を受けることもできます。近年導入校が増えていますが、IB専門の訓練を受けた教員の確保や、定期的に開催義務のある教員のワークショップなど、学校側への負担が大きいのも事実としてあり、またそれに伴う学費の高騰など利用する側も経済的な余裕が必要となります。
世界的にはIB(約2,500大学)よりも入試利用している大学の数が多いAレベル(約10,000大学)もありますが、今回は割愛いたします。
海外大学や日本国内大学に有利な資格
・SAT(アメリカ)
・IB(国際バカロレア)
・Aレベル(イギリス)
・ATAR(オーストラリア)
主な導入校(国内): 慶応義塾大学、東京大学、上智大学、東京大学、京都大学、一橋大学など
※各校により応募時期や要綱が異なります。
お子さまに合った教育を見定める
帰国生として持つメリットをどのように生かせばいいでしょうか?
まず、香港のインター校や日本人学校に通っているお子さまはディスカッションやプレゼンテーションのスキルが高いのが特徴です。前述のIB教育などにフィットしやすいとも言えるでしょう。ただ黒板の字を書き写す古いタイプの教育体制とは真逆のものですね。反対に、人前で発表するよりもひとりで集中してプロジェクトを進めるのが得意なお子さまもいます。模擬試験の偏差値や有名校にこだわることなく、どんな学校が自分の子どもに向いているのかを考えましょう。大学附属校と進学校、男子校・女子校と共学校、私国立と公立中高一貫など、コンセプトをはっきりさせることが学校選びの第一歩です。
また、私学には建学の精神があり、学校独自の雰囲気が必ずあります。ご家庭の教育方針が、学校の教育理念と同じ方向性であるかどうかを見極めることが大切です。一時帰国の際に実際に学校へ足を運んで、校風や在校生・先生の雰囲気などをチェックしておきましょう。
また、どんなに英語力が高くてもそれを証明する資格がないと学校側も判断できません。英検をはじめとした外部資格試験を受験することは必須と言えるでしょう。英検2級が一般的な基準として見られることが多く、ここ香港でも受験可能です。2025年第一回試験から準2級プラスが導入される予定です。
大事なのは入学後の生活
帰国生入試に向け学習準備する上で注意したいポイントとは?
よく保護者の方に話すことですが、入試が終わり通学が始まると一般のお子さまと肩を並べて授業を受けるわけです。つまり、日本で育った同級生たちと同じ速度で、同じ内容を学んでいく中で、困難に感じる帰国生もまた多いのが事実です。入試科目だけに力を入れるような海外塾が多い一方で、当校は「捨て科目を作らない」ようにお話をしています。このような点も踏まえ、入学後の学びがどのような内容なのかを確認しイメージしておくことをおすすめします。
帰国後、英語力を持続するにはどうすれば?
多くのご家庭が直面する問題ですが、日本に帰国すると、英語力の低下はある程度仕方ないと思います。低下を前提にフォローアップの意味でもプライベートレッスンを受けたり、英検やTOEFLなどの外部試験を定期的に受けることでひとつの目標にもなり、成長の幅を実感できると思いますね。
日本での学校選び、たくさん選択肢があり迷ってしまいます。
そうですね、当校では日本の学校紹介など定期的にセミナーを行っています。実際私どもが学校の先生と話をし、帰国生受け入れに熱心な進学校や、英語教育に力を入れている学校など、文面だけではわからない学校独自の特質も理解していますので、ぜひお問合せください。
香港教室
2F Redana Centre, 25 Yiu Wa Street, Causeway Bay, Hong Kong
ホンハム教室
Shop 852, Fortune Metropolis, 6 Metropolis Drive, Hung Hom
www.epis-edu.com
帰国生入試枠も!国際人を育てる日本の学校
世界に触れる機会の多さが魅力
都立国際高等学校
1988年、国際的なビジネスの拠点である渋谷の近くに創立した同校。同校は普通科の学校ではなく、都立高校初となる国際学科の学校であり、2015年に日本の国公立高校で初めてIBDPの認定を受けたIBコースを持つ。1学年240名の定員のうちIBコースは25名、コースを問わず全員が同じホームルームに所属し、朝や夕方のホームルーム、部活動や学校行事を一緒に行う。なお、IBコースに所属するには、IBコース用の入学者選抜に合格して入学する必要がある。IBコースは日本人専任8名と、ネイティブ講師12名、日本人講師5名で指導を行っている。現在日本国内の国公立IBDP校で唯一、英語でIBDPを実施しており、IBDPの科目選択の幅も広い。
また東京という場所柄、CASにおいてインターンやNGOに参加する機会に恵まれているのも特徴。奈良での農業体験で生物化学について興味を持ち、インペリアル・カレッジ・ロンドンで研究する道を選んだ卒業生や、アフリカの開発途上国でのインターンからタバコ産業を通じた国際貢献に興味を持ち、大学卒業後の就職先とした卒業生など、同校CASでの取り組みが進路決定の鍵になっていることも多い。 東京都目黒区駒場2-19-59
https://kokusai-h.metro.ed.jp
豊富な選択肢が特徴
立命館宇治中学・高等学校
帰国生の受け入れや海外大学への進学に力を入れ、約10年前にIB(国際バカロレア)を導入した同校。「高校IBコース」(2クラス)は1クラス約21名と少人数編成で、数学・理科・社会など、国語以外の教科は全て英語で学ぶのが最大の特徴だ。現在、半数は理系に進学希望で、HL数学の受講が多く、IBでは難易度が高いとされる物理を選択する生徒も増えてきている。またCAS(課外活動)の取り組みの一環として、希望者には夏休みを利用した小笠原島での生態系調査や、台湾で行われる模擬国連への参加なども実施している。「高校IMコース」(2クラス)では、全員がカナダ、オーストラリア、ニュージーランドのいずれかの国に1年間留学し、現地校やホームステイ先を通して英語運用能力を養う。1年間の留学含めて高校を3年間で卒業できるのが魅力。さらに、文理の枠を超え自らのキャリアに応じて学ぶ、科目選択自由度の高さが特徴の「高校IGコース」(8クラス)では、それぞれの興味関心にあう形で履修科目を選択する。ここでは、文系進学希望者が専門的な理科や数学を履修したり、理系希望者が第二外国語や芸術を履修することもできる。 京都府宇治市広野町八軒屋谷33番1
www.ritsumei.ac.jp/uji
IB生でも文武両道が可能
茗溪学園中学・高等学校
東京教育大学(現 筑波大学)の同窓会「茗溪会」によって1979年に創立された中高一貫校。英国の全寮制パブリックスクールを意識した校舎と大規模な寮のある学園となっており、現在は生徒の20%以上が寮生活を送っている。 開校当初より国際理解教育に重きを置いており、2016年にIB認定校となった。開講しているIB科目は、日本語および英語で実施しており、英語での科目を2科目以上受講すれば、言語の組み合わせは自由。ほとんどの科目を英語または日本語で受講することも可能だという。ただし、高校1年次は日本の高校卒業に必要な授業も多く、ほとんどは日本語での受講となるため、ある程度の日本語力が必要となる。科目選択の幅が広く、進路に応じた選択肢を与えてくれるも同校IBの特徴。また「世界で活躍する人材は文武両道を世界レベルでできてこそ」という考えのもと、IB生であっても部活動を制限していない。 茨城県つくば市稲荷前1-1
www.meikei.ac.jp
早大唯一の共学附属校
早稲田大学 本庄高等学院
早稲田大学としては唯一の共学附属校で、一部、東京大学などを目指して外部受験をする生徒もいるものの、早大進学率はほぼ100%。日本医科大学への推薦進学枠も設けており、受験勉強に煩わされることのない、教育本来の姿を志向している。地域や企業、大学などと連携し、多彩な課外活動を実施しているのも特徴。スタンフォード大学から講師を招き、英語によるデザイン思考のワークショップを行うなど、近年はアントレプレナーシップ教育を推進している。2022年からは、1・2年次は共通科目、3年次は必修選択科目を文理それぞれ指定し、大学での専門へ接続する新カリキュラムを導入している。 埼玉県本庄市栗崎239-3
www.waseda.jp/school/honjo
高2の夏までの編入学試験を実施
同志社国際中学校・高等学校
関西唯一の帰国子女受け入れ専門校として1980年に設立された。同志社の精神と伝統を受け継ぎ、中高一貫教育を提供している。全校生徒の約60%が海外生活経験を持つ帰国生徒、約40%が国内一般生徒という構成。生徒たちは自由な校風の中で共に学び、互いに刺激し合いながらグローバルな感覚を育んでいる。
帰国生徒のために中学1年生から高校2年生の夏まで編入学試験を実施しており、急な帰国にも対応できる入試制度を備えているのも特徴。
京都府京田辺市多々羅都谷60-1
www.intnl.doshisha.ac.jp
寮を備えた夢の実現へ向かえる進学校
土浦日本大学高等学校
日本大学と提携し高大一貫教育による将来を見据えた「総合進学コース」、トップクラスの大学合格を目指す「特別進学コース」、国内外の大学入試に対応し、留学・共有学習などの体験型の学びを実践する「グローバル・スタディコース」を設け、それぞれの進路実現に向けた授業展開をしている。帰国生・国内生の混在クラス編成だが、生徒の学力や志望に応じた補習課外を整備しているほか、国際人としての知識や感性を育むことにも重きを置いている。入学試験は、全世界からオンラインで受験できる海外アドミッションズ・オフィス(A.O)入試と、香港でも学力選抜試験を実施している。 茨城県土浦市小松ケ丘町4-46
www.tng.ac.jp/tsuchiura